第20話 どき、どき。

文字数 1,442文字

良く晴れた日曜日。

先日の晶とのやり取りから、はなびの心は一変した。


何もなかった灰色の日々が、まるで華やかなマーブルピンクのように様変わりし、心が弾む。

嘘みたい。

彼氏が出来るなんて。

未だ処女を卒業したわけではないが、いずれはそういったことも行えるようになるだろう。


失敗したことは気にかかるが、今は考えないことにした。

LINEを開き、晶のアカウウントを確認する。


メッセージは来ていなかった。

お礼LINE送っておこう。
「こんにちは。

昨日はありがとうございました。

これから宜しくお願いします。」


そこまで打って、はたと手を止める。


もう少し、押してもいいかもしれない。

こんにちは。

昨日はありがとうございました。

ふつつか者ですが、これからも宜しくお願いします。

これでよし。

お風呂に入って歯を磨いて寝よう。

はなびは部屋を軽く片付け、軽く食事を摂った。

シャワーを浴び、歯磨きを済ませるとそのまま布団の中に潜り込んでいった。









夕方頃、はなびは目を覚ます。


今は何時頃だろう?と考えてスマホを手に取る。


LINEの返信が着ているのに気付き、慌てて画面を開いた。

こんにちは。

こちらこそ、よろしく。

今日はもう会わない?

し、しまった!

返信が来たのが昼頃だ。

今は……?

16時!

うわ、寝過ごしたわ。

ごめんなさい。

少し寝すぎてしまって、今起きました。

今日はこれから会うなんてことは……。

はなびは頭を抱え、蹲った。

しばらくすると、スマホの着信音が鳴った。

こんにちは。

寝ていたんだね。

今日も会えるよ。

でも明日からまた出張だから、早めに切り上げないといけない。

そうだったんですね。

もっと早めに返事が出来ればよかったんですが。

晶さんの家は、きせらぎ町ですか?

三駅しか離れていなかったんですね。

そう。

意外に近かったね。

はなびさんの家は、どこにあるの?

こがねばな町です。

駅から非常に近いのが利点ですが、非常に狭いです。

どうする?

一緒に夕飯を食べるかい?

えっ!

どうしよう。

明日から出張って言っているし。

まあいいか。

はい。

どこで落ち合います?

近場が良いですよね。

こがねばなのいい店を知っているから、すぐに行くよ。

駅で待ってて。

はい。

よろしくおねがいします。

はなびは慌ててベッドから這い出ると、すぐに出かける準備に取り掛かった。

歯を磨き、顔を洗って髪を梳かし、アメリカピンで軽く止めると、服を選ぶ。


通勤用カバンに貴重品などを全て移してしまったことに気付いたが、そのまま持っていくことにした。


今日もご馳走になっちゃうな。

嬉しいけど、この辺に良いお店ってあったかな?

少し慌ただしく家を出ると、小走りに最寄り駅へと向かった。



改札駅で待っていると、改札出口から晶の姿が見えた。

あっ!

こ、こんにちは!

わざわざありがとうございます!

こんにちは。

待たせたかな?

いえ。

さっき着いたところです。

晶さん、早かったですね。

フッ軽を信条にしているんだ。
フッ?

ああ、フットワークですね。

確かに軽いです。

もうずっとだよ。

学生の時から。

腰が重いと仕事にならなかったからね。

バイトをされていたんですか?
そう。

中学の時から。

中学生のバイトは通常は駄目だけど、大阪は案外緩いんだよね。

こっそり雇って貰って、ずっとバイト漬けだったよ。

すごい。
行こうか。

ここから徒歩10分もかからないところに店があるよ。

はなびは頷き、カバンを肩に掛け直して歩き出そうとする。


と、その時。

晶ははなびの手を取った。


少し照れながら、はなびはそっと手を握り返す。



そのまま、二人は並んで駅構内を進んでいった。

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登場人物紹介

雪月はなび

冴えないOL

5月生まれの25歳

紫水晶

営業部のイケチャラ男。

2月生まれの25歳。

四線義勇太

はなびの勤める会社の事務の上司。

夏木ゆきこ

はなびの同僚。

7回の転職経験がある。

佐滝右近

はなびが勤める会社の社長の倅。

小満度心春

企画部からの異動者

錦戸達也

晶の友達。

ホストをしている。

紫水晶のLINEアカウント

雪月はなびのLINEアカウント。

小満度心春のLINEアカウント

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