第42話 誤爆

文字数 1,507文字

今夜はベッドを使うことにして、はなびはスマホを片手にセミダブルのベッドに潜り込んだ。


既に自分は、晶中毒だと思う。

こんなに自分は懐っこい性格だっけ、と心の中で呟いた。


と、その時。

LINEメッセージが届いた。

こんばんは。

お疲れ様です♡

雪月さんと私語も交わしたいです。

あら。

晶さんじゃなかった。

こんばんは。

そうですね。

日中は忙しいですもんね。

雪月さんは、彼氏いますか?

私は7年付き合っている彼氏がいます。

7年!

凄いですね。

私は最近出来たばかりです。

大学の時から付き合っているんですよ。

そろそろ結婚について考えています。

心春のメッセージを眺めながら、はなびはぼんやりと晶の事を考えた。


やはり、彼は行動が早すぎると思う。


確かに関係性をはっきりさせることで気は楽にはなるが。

小満度さんが辞めたら困るなあ。
こはるって呼んでください。

雪月さんは……線香花火?

分かりました。

こはるさんですね。

私は下の名前がはなびなので、アカウント名を線香花火にしたんです。

よりによって、なんで線香花火なのw

はなびさんって呼びますね。

私は見た通り地味なので、線香花火くらいが丁度良いんです。

彼氏だって中々出来なくて。

地味ってw

どうやって彼氏作ったんですか?

合コンです。

同僚の夏木さんに誘われて。

ああw

私、あの人苦手です。

影で便器って呼ばれてますよw

便器!?

どうして?

初めて聞きました。

男にだらしないからみたいです。

営業と企画と広報の派手なところを片っ端から落としたらしいですよ。

はなびは軽い目眩を覚えた。


思っていた以上にゆきこが性に奔放であったこと。


更に、業務に集中する事ばかり考えて、社内の噂話の一切を知らない状態であったことなど。


酷い疲労感を覚え、力なくスマホをフリックする。

本当に知らなかったです。

驚きすぎて疲れました。

今日はもう寝ますね。

おやすみなさい。 

また明日、よろしくお願いします。

適度にLINEを切り上げて、はなびは毛布を被った。

どうしてこんな時に、晶はそばにいないのだろう。


彼がそばにいたところで何が変わる訳でもないが、何故か今は一緒にいてほしい気持ちが強かった。

自分の依存心について考えつつ、はなびは静かに目を閉じた。







翌日から、心春から毎日LINEメッセージが届くようになった。


はなびは晶と心春の両方とやり取りを続け、頭脳をフル回転させる機会が激増した。

気の利いた伝え方を考えるのって、難しいなあ。
今回は生理が来ました。

ちょっと怖かったです。

晶と際どい内容のメッセージを送り合い、上記のメッセージを送った瞬間。



はなびは、己の失態に気づいた。

晶と心春、交互にLINEを交わしていた為、送信する相手を間違えてしまったのだ。


スマホを両手に掲げ、小さく悲鳴を上げた。

しまった!

こはるさんに、こんなLINEを!

間違えた!

ああ!

後悔に打ちのめされていると、心春からすぐにメッセージが来た。
ちょw

はなびさん。

彼氏と間違えたんですか?w

やばいですね。

ごめんなさい!

忘れてください!

いえ、ちょっと無理ですよ。

生理の心配ってことは、ナマでやったんですか?

あの。

外です!

ごめんなさい。

見なかった事にしてください。

思ったよりだらしのない人と付き合っているんですね。

いいなあ。

私、一度もナマでやったことないです。

あの、そういう話題は辞めましょう。

自分の間違いとはいえ、恥ずかしいです。

恥ずかしいってw

いえ、ちょっと語りません?

私も話したい事が山程。

はなびは遠い目をしてスマホをベッドの上に置いた。


それからは地獄だった。

心春は恥ずかしげもなく、自分の性事情を包み隠さず話してくるのだ。

はなびは何となく相槌を打ちつつ、彼女と自分の恋愛生活と密かに比較を始めた。

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登場人物紹介

雪月はなび

冴えないOL

5月生まれの25歳

紫水晶

営業部のイケチャラ男。

2月生まれの25歳。

四線義勇太

はなびの勤める会社の事務の上司。

夏木ゆきこ

はなびの同僚。

7回の転職経験がある。

佐滝右近

はなびが勤める会社の社長の倅。

小満度心春

企画部からの異動者

錦戸達也

晶の友達。

ホストをしている。

紫水晶のLINEアカウント

雪月はなびのLINEアカウント。

小満度心春のLINEアカウント

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