第67話 記憶のはしきれ
文字数 1,637文字
すっかり汗ばむ季節になった。
エアコンを入れる日が徐々に増え、はなびは冷蔵庫で冷やした緑茶を飲みながら自宅で業務に勤しむ。
相変わらず、業務の見落としを拾い続ける日々が続く。
スマホの電源を切り、再び業務に取り掛かる。
心春は業務中でも構わずにLINEを送って来ることが増えた。
暇である筈が無いので、恐らく仕事そのものに嫌気が差しているかと思われる。
はなびは深い溜息を吐いた。
送られてきた書類データと照合させながら、入力作業を続けていく。
やがて、晶が帰宅した。
いつものルーティーンを辿り、やがて二人はソファに隣同士で座り合う。
スマホをいじったり、抱き合ったりを繰り返していた。
はなびのスマホの着信ランプが光る。
返信に困っていると、晶が怒ったようにスマホを取り上げる。
眉を顰めながら一気に返信を打つと、そのままスマホの画面を閉じた。
晶の話を整合し、はなびは暫く考え込んだ。
何かが引っ掛かる。
何かが。
頭を抱える晶をそっと見つめながら、はなびは彼の肩にそっと頭をもたれかけた。