第15話 君の幸運①
文字数 1,116文字
ピピピピピピピピ、ピー!
アラーム音と共にミカは目を覚ますと、大きく息を吸い込んだ。瞬時にそこが処置室と確認するとすぐに上半身を起こし、身体に着いた電極を乱暴に引き離す。JJとドクをはじめとするスタッフたちが慌ててミカの傍に集まっていた。
「あんたたち、一体どういうつもり!」
ミカは処置台から立ち上がり、怒りを露わにして叫んだ。
「興奮しては駄目だ」
それをなだめるようにドクがミカの前に立つ。
「もうすぐ、次に行けたのに!」
それでも収まらないミカの顔を皆、一様に驚いて眺めている。
ミカの口元を生温かい滴が伝う。手に取って見ると血が指先を赤く染めていた。ミカは自分が鼻血を流していたことに気づくと、すうっと血の気が引いて、うしろに倒れそうになるのをJJが抱きとめた。
「大丈夫か?」
JJがミカに訊く。ミカは自分の身体の自由がうまく効かないことに困惑していた。
「あれを見てみろ」
JJがモニターの方を見て言った。
「嘘……」
潜入時間を示すデジタル時計が二九分五八秒で止まっている。つまり、夢の中で一時間半近くも経過していたことになる。ミカの中では三十分も滞在していないつもりだったのに。スタッフが椅子を用意し、ミカはJJの手を借りてそれに腰かけた。
「随分と長く潜っていたね。一体、中で何があったんだい?」
ドクはなるべくミカを興奮させないように落ち着いた声色で問いかけた。
「あの子と一緒にいくつかのエリアをクリアして……」
「あの子と言うのは、例のティーンエイジャーのことだね」
ドクが訊くと、ミカは頷いた。それを見てドクがJJに視線を送る。JJは何かを促すようにドクに向かって頷いた。
「ミカ、今日はもう休むんだ」
ドクはミカを諭すように優しく語りかける。
「嫌よ! もう少しであいつのところまで辿りつけそうなのに!」
興奮するミカをドクが優しく微笑みながらなだめる。
「次に潜るまで時間を空けなきゃならないし、こんな様子ではとても潜らせるわけにはいかないよ」
ドクは子供でもあやすようにミカに笑いかける。ミカはその様子が酷く気味悪く感じた。
「どうせ潜れないんだ、署にいてもとても休まらない。家に帰って、少し休むんだ。体調を整えて、もう一回挑んだらいい」
今度はJJがミカの肩に優しく手を置き言った。
「そんな呑気なこと……!」
ミカが言いかけたところでJJがそれを遮る。
「対策なら俺たちが練っておく、エリーに送らせるから、家で休むんだ」
何かがおかしい。有無を言わさない二人の態度にミカは不信感を抱き始めていた。しかし、これではいくらごねたところで潜入はさせてもらえないだろう。一旦、この場から離れて体勢を整えなければ、ミカはそう思った。
アラーム音と共にミカは目を覚ますと、大きく息を吸い込んだ。瞬時にそこが処置室と確認するとすぐに上半身を起こし、身体に着いた電極を乱暴に引き離す。JJとドクをはじめとするスタッフたちが慌ててミカの傍に集まっていた。
「あんたたち、一体どういうつもり!」
ミカは処置台から立ち上がり、怒りを露わにして叫んだ。
「興奮しては駄目だ」
それをなだめるようにドクがミカの前に立つ。
「もうすぐ、次に行けたのに!」
それでも収まらないミカの顔を皆、一様に驚いて眺めている。
ミカの口元を生温かい滴が伝う。手に取って見ると血が指先を赤く染めていた。ミカは自分が鼻血を流していたことに気づくと、すうっと血の気が引いて、うしろに倒れそうになるのをJJが抱きとめた。
「大丈夫か?」
JJがミカに訊く。ミカは自分の身体の自由がうまく効かないことに困惑していた。
「あれを見てみろ」
JJがモニターの方を見て言った。
「嘘……」
潜入時間を示すデジタル時計が二九分五八秒で止まっている。つまり、夢の中で一時間半近くも経過していたことになる。ミカの中では三十分も滞在していないつもりだったのに。スタッフが椅子を用意し、ミカはJJの手を借りてそれに腰かけた。
「随分と長く潜っていたね。一体、中で何があったんだい?」
ドクはなるべくミカを興奮させないように落ち着いた声色で問いかけた。
「あの子と一緒にいくつかのエリアをクリアして……」
「あの子と言うのは、例のティーンエイジャーのことだね」
ドクが訊くと、ミカは頷いた。それを見てドクがJJに視線を送る。JJは何かを促すようにドクに向かって頷いた。
「ミカ、今日はもう休むんだ」
ドクはミカを諭すように優しく語りかける。
「嫌よ! もう少しであいつのところまで辿りつけそうなのに!」
興奮するミカをドクが優しく微笑みながらなだめる。
「次に潜るまで時間を空けなきゃならないし、こんな様子ではとても潜らせるわけにはいかないよ」
ドクは子供でもあやすようにミカに笑いかける。ミカはその様子が酷く気味悪く感じた。
「どうせ潜れないんだ、署にいてもとても休まらない。家に帰って、少し休むんだ。体調を整えて、もう一回挑んだらいい」
今度はJJがミカの肩に優しく手を置き言った。
「そんな呑気なこと……!」
ミカが言いかけたところでJJがそれを遮る。
「対策なら俺たちが練っておく、エリーに送らせるから、家で休むんだ」
何かがおかしい。有無を言わさない二人の態度にミカは不信感を抱き始めていた。しかし、これではいくらごねたところで潜入はさせてもらえないだろう。一旦、この場から離れて体勢を整えなければ、ミカはそう思った。