第12話 ランアンドラン①
文字数 1,473文字
セントラル・パークに降り立ったミカは走ることに特化した恰好をしていた。足元は前回のパンプスとは違い、スニーカー。衣服は動きやすいスポーツウェアを纏っていた。
ミカは緊張しながらスタート位置を目指す。ライオンが待つ位置へと。
すると、前にバスケットボールで遊ぶ少年たちが見えてくる。彼らに構っている場合ではないと、少し距離を空けてその横を通り過ぎる。しかし、前回は気づかなかった風景にミカは足を止めた。
バスケットボールで遊ぶ三人の少年。その少年たちとわずかに距離を置いてそれを眺めている黒い髪の男の子がいた。なぜだか、彼の存在がミカの目を引いた。
「もし、これがゲームなら、あのボールは」
バスケットボールを脇に抱えて走るのはハンデとも思えたが、ボールというアイテムを持つことで、この先有利に働く場面があるかもしれない。ミカは少年たちに近づいた。
すると、少年の一人がミカにボールをパスして、ミカはそれを受け止めた。
「グッドラック!」
ボールを渡してきた少年が親指をミカに向けると笑顔で去って行った。黒い髪の男の子も遅れてそのあとを追いかけるように走り去った。
ミカは少年たちを見送ると、ボールを持って入園口へと足を進める。そして、その手前で止まると準備運動を始めた。足を伸ばし、大きく腿を上げ、二、三度その場でジャンプした。夢の中で準備運動など意味がないことはわかってはいたが、やらずにはいられなかった。
脇にボールを抱え、精神を集中させるように目を閉じて深呼吸をする。目を開き、肺に空気を取り込むように素早く息を吸い込むと、ミカは弾けるように駆けだした。
全速力で入園口を通過する。それと同時に沿道から一斉に歓声が上がった。構わずミカは走り続け、沿道の人々が作る右に折れたコースを最短距離で曲がった。
すると、ライオンが走り去るミカを見つけて追いかけ始める。ミカが一瞬振り返りライオンを確認すると二◯フィートほど距離が離れている。
「よし!」ミカは喜びに飛び上がりたい気持ちを抑えて走り続けた。そんなことをしていたらせっかく開けた距離が詰まってしまう。あとはどれだけこの距離を保つか。うまくいけばこのままライオンを置き去りにすることもできるかもしれない。
ミカは沿道の観客が空けた猿の待つ路地へ飛び込んだ。
僅かに上方を見上げると、ビルの窓からすでに猿たちがミカに襲いかかろうとスタンバイしている。ミカはそれを見てギアをシフトアップするように足に力を込めた。
奇声を上げながら猿がミカ目掛けて降ってくる。しかし、猿の着地点にミカの姿はなく、虚しく地面に着地すると、拍子抜けしたようにキョロキョロとあたりを見回している。次、その次と猿たちはミカを捉えられずにあえなく地面に着地した。
路地を抜けると二頭のシマウマが寄り添って立っている。
「まだ来てない」
前回、背に乗ろうとしたシマウマは、センサーのような存在なのではとミカは仮定していた。シマウマ、ガゼルなどの草食動物はライオンなど肉食動物が近くに来ると逃げだし、ミカに危険の接近を知らせる役割を担っている。シマウマが逃げださずにそこにいるということは、近くにライオンはいないということだ。
ミカは走り続け、ヒョウの待つ道を目指す、どうしてもその道を通る必要があった。
前方の道にゆらゆらとその場を歩くヒョウが見えてくる。ミカは緊張に唾を飲み込んだ。ヒョウの待つ道の手前でミカは減速して止まる。その道に一歩足を踏み入れると、ヒョウは自分のテリトリーに入られたことに気づき、その視野にミカを捉えた。
ミカは緊張しながらスタート位置を目指す。ライオンが待つ位置へと。
すると、前にバスケットボールで遊ぶ少年たちが見えてくる。彼らに構っている場合ではないと、少し距離を空けてその横を通り過ぎる。しかし、前回は気づかなかった風景にミカは足を止めた。
バスケットボールで遊ぶ三人の少年。その少年たちとわずかに距離を置いてそれを眺めている黒い髪の男の子がいた。なぜだか、彼の存在がミカの目を引いた。
「もし、これがゲームなら、あのボールは」
バスケットボールを脇に抱えて走るのはハンデとも思えたが、ボールというアイテムを持つことで、この先有利に働く場面があるかもしれない。ミカは少年たちに近づいた。
すると、少年の一人がミカにボールをパスして、ミカはそれを受け止めた。
「グッドラック!」
ボールを渡してきた少年が親指をミカに向けると笑顔で去って行った。黒い髪の男の子も遅れてそのあとを追いかけるように走り去った。
ミカは少年たちを見送ると、ボールを持って入園口へと足を進める。そして、その手前で止まると準備運動を始めた。足を伸ばし、大きく腿を上げ、二、三度その場でジャンプした。夢の中で準備運動など意味がないことはわかってはいたが、やらずにはいられなかった。
脇にボールを抱え、精神を集中させるように目を閉じて深呼吸をする。目を開き、肺に空気を取り込むように素早く息を吸い込むと、ミカは弾けるように駆けだした。
全速力で入園口を通過する。それと同時に沿道から一斉に歓声が上がった。構わずミカは走り続け、沿道の人々が作る右に折れたコースを最短距離で曲がった。
すると、ライオンが走り去るミカを見つけて追いかけ始める。ミカが一瞬振り返りライオンを確認すると二◯フィートほど距離が離れている。
「よし!」ミカは喜びに飛び上がりたい気持ちを抑えて走り続けた。そんなことをしていたらせっかく開けた距離が詰まってしまう。あとはどれだけこの距離を保つか。うまくいけばこのままライオンを置き去りにすることもできるかもしれない。
ミカは沿道の観客が空けた猿の待つ路地へ飛び込んだ。
僅かに上方を見上げると、ビルの窓からすでに猿たちがミカに襲いかかろうとスタンバイしている。ミカはそれを見てギアをシフトアップするように足に力を込めた。
奇声を上げながら猿がミカ目掛けて降ってくる。しかし、猿の着地点にミカの姿はなく、虚しく地面に着地すると、拍子抜けしたようにキョロキョロとあたりを見回している。次、その次と猿たちはミカを捉えられずにあえなく地面に着地した。
路地を抜けると二頭のシマウマが寄り添って立っている。
「まだ来てない」
前回、背に乗ろうとしたシマウマは、センサーのような存在なのではとミカは仮定していた。シマウマ、ガゼルなどの草食動物はライオンなど肉食動物が近くに来ると逃げだし、ミカに危険の接近を知らせる役割を担っている。シマウマが逃げださずにそこにいるということは、近くにライオンはいないということだ。
ミカは走り続け、ヒョウの待つ道を目指す、どうしてもその道を通る必要があった。
前方の道にゆらゆらとその場を歩くヒョウが見えてくる。ミカは緊張に唾を飲み込んだ。ヒョウの待つ道の手前でミカは減速して止まる。その道に一歩足を踏み入れると、ヒョウは自分のテリトリーに入られたことに気づき、その視野にミカを捉えた。