第42話 蓄光 そして誰もいなくなった

文字数 7,914文字

 伏姫十六の秋、里見領に、飢饉に乗じて安西景連が攻め込んだ。
 落城の危機に瀕した父は、水杯の席で「敵将の首を取ってきた者に伏姫を与える」と宣言した。それを里見家の飼い犬であった八房が見事に果たすと、約束の履行を求めた。
 伏姫は父に、君主が約束を違えることはできないといいながら、仁義八行の玉の文字が「如是畜生発菩提心」に変化していることを示して、富山へ――。

 伏姫は富山で、法華経を読経する日々を送り、八房に肉体を許すことはなかった。しかし翌年、山中で出遭った仙童から、八房が玉梓の呪詛を負いつつも読経の功徳でその怨念は解消されたものの、八房の気を受けて八人の子の「種子」を宿したこと、さらにそれらが世に出るときに、父と夫に出会うことを告げられた。
 伏姫は犬の子を産む恥に耐えられずに入水を図ったが、おりしも伏姫奪回のために富山に入った金碗大輔による銃撃の誤射で負傷――。同時に里見義実も富山に導かれた。
 伏姫は父と夫の前で割腹し、胎内に犬の子がないことを証した。
 その傷口から流れ出た白気が姫の数珠を空中へと運び、仁義八行の文字が記された八つの大玉を飛散させた。伏姫はそれを見上げながら、安堵して亡くなった。享年十七。

                         「南総里見八犬伝」

二〇二五年八月六日 水曜日

 思い出した。
 上野にある父の汚いマンションは、まだ令司のもののはずだ。
 二十年間治外法権であり続け、令司に手紙を送ってきた遺産管理団体に管理されていた古いマンションだ。あそこが今も5Gの監視を逃れているとすれば―――-。
 吾妻先生は言っていた。
 分からなくなったら過去を振り替える。ケースの問題解決が「そこ」にあるのだから、と。螺旋的弁証法で、新たな装いで復活させる。何でもそう。弁証法的問題解決だ。父が二十年前、何を体験したのかを追いかければいい。

 令司が上野のマンションに到着したのは明け方だった。
 下から見上げると、問題の三階の部屋は相変わらず赤い。クタクタだったが、ガンドッグが見張ってないか、辺りを観てから正門玄関を入る。
 エレベータに改装のお知らせが貼ってあった。
「……」
 説明文によると、一九七〇年から建っているマンションである。
 いずれ、5GのIOTにまみれたスマートマンションに建て替えられるのだ。
(ここも間もないか)
 305のドアの鍵は開いた。
 よかった……心底ホッとした。まだヤツらはここの存在に気づいていないのかもしれない。花音が……気づかないことを祈るしかない。
 赤いカーテンに外のヘッドライトが動く。そのたびに令司は身を固くする。
 京子と一度来たきり、あれ以来だ。ずっと忘れていた。中は、雑然としたままだった。天井近くまで積み上げられた物たち。
「まずは、片付けか」
 正直、一人でこの量を片付けるのはキツい。しかし、手助けしてくれる人間はいない。東伝会は、もう自分しかいない。いや……続けなくちゃいけない……。他人のためじゃない。俺が俺であるために。
 ――たとえ、たった一人になろうとも!
 ここが、令司のさしあたっての住居となる。住める環境に戻さねばならない。今は病気にもなれない。部屋を清潔に保たねば――――。
 「やれやれ」とあえて声を出し、旧型ブラウン管テレビをBGM代わりに着けて、掃除を始めた。盗聴を防ぐ意味もある。十連歌を流すのはやめておこう。
「おっ」
 少し片付け始めると、足元でチャランと金属音が鳴った。なるほど……前回も同様なことがあった。床に小銭が散らばっている。十円玉から五百円玉まで。集めると五千円ほどになった。
 令司は、都民IDを封鎖されているので現金はありがたい。他にも探せばあるかもしれない。
 掃除をするにしてもモノが多すぎる。
 九リットルのごみ袋を買った。まずは明らかにゴミと分かるものや、空間を占拠している不要なものを、ごみ袋へどんどん放り込み、一階のごみ収集所へ捨てに行かねば始まらない。令司は何十袋とごみ袋をつみあげていった。
 布団はもう使えない。捨てなければ―――-。担いで収集所へ持っていった。幸い近所にホームセンターがあり、一番安い布団を購入して運び込んだ。
 引き出しや本棚の本の中から、合計十万円のお札を発見することができた。ホッとした。
 初日は久々にシャワーを浴び、モノの隙間で寝た。吾妻教授に言われた通り、寝る前に温めたミルクを飲むのを日課とした。おかげでよく眠れた。
 二日以降は部屋一つ分の居住スペースを確保した。買い替えた布団を広げて眠りに就いた。三日目には三部屋の床がすべて見えてきた。
 令司はエレベータを何十往復もし、三日かけてゴミ出しと部屋の整理を続けた。片づけは無料の筋トレにもなる。
 キッチンの収納には、ブランデーや高級ウイスキーなど、未開封の高価な酒瓶がいくつも並んでいた。山崎、響……、ハーディ・ノースドール。その数、数十本。掘っていくとお宝がざくざくと出てきた。
 前に来た時にも気づいていたが、遺品の中でも消耗品は、同じものの重複が多かった。眼鏡、靴、シャツ、文具、開けずにつぶれたティッシュの箱、ペンやノートなどの文具類、未開封のお土産品。さらに未使用のパソコンまで。
 物を買っては棚にしまい込み、取り出さないで新しく買ってしまうらしい。きっと学者肌という奴だ。
 このマンションに、いったい何の遺産がある?
 後片付けを一切しないで死んでいく。どこに大事なものがあるのか。残された者の身からすればしんどい。だからこんな状況に追い込まれているんだ。
 セルフネグレクト。いや、そうとは思えない。
 整理しているうちに、なんとなく分かったことがある。父はただ片づけられなかった人じゃない。買い物の重複に、法則性があった。おそらく死の数カ月前から、ひどく焦っていた。寝る間を惜しまず、研究に没頭していたせいだ。
 父は片づける暇などなかった。同じものを買い込んでしまうほど、「何か」に気を取られていた。そのせいだ。そしておそらく、その研究は成功した。
 不用品で売れそうなものは、リサイクル・ショップに持っていって売った。酒が結構売れた。念のため、特に高価そうな酒を十本だけ残しておいた。いつか、メンバーと再会した時に開封しよう。いつか――。
 売れるものを売ると、四十万ほどの現金ができた。合計五十万だ。大金持ちという訳ではないが、結構な金持ち。数カ月は生きていられる。今の令司には大金だ。ただ、海老川が振り込むといった金額と同じなのが気になるが。
 ここの家賃や光熱費は、依然として謎の遺産管理団体から支払われ続けているらしい。だが、詮索は後にしよう。他の遺産は計り知れないが、調べるにしても今は動かない方が良い。
 とにかく生き残るだけの場所を確保したら、あとはひたすら書くのみ。俺は何者かに、死なない程度に生かされている。まるで本を完成させるためだけに。海老川の顔が一瞬浮かんだが、頭を振って否定した。
 仲間たちが一人ひとり消えていった。地球フォーラムで、秋葉で、東京タワーで、そして令司自身も東京駅で。
 このマンションに入ったとたん、監視の気配が失せた。あの赤いカーテンはPM製で防御しているのかもしれなかった。
 きっと世間からは、令司が消えたように見えているのだろう。だがこれでいい。執筆に集中できる。
 棚に並べた高級酒瓶をチラチラ眺めて、京子の住んでいた渋谷鹿鳴館を思い出す。父も、上級都民のような飲み物を手元に置いていたのだ。但し、恐ろしく金の使い道を知らないが。
 一本のブランデーを取り出して、テーブルの上に置く。
 令司自身、ハタチになって勧められるままに、少しは呑むようになったが、そこまで一人で飲みたいという欲求は沸かない。煙草は副流煙だけでむせ、うんざりしているので一生吸えない。ビールは思った以上に苦くて、飲めない。以来、サワーだけ。人付き合いの道具としてだ。
 しかし、こうして眺めているだけでも、急に自分が大人になった気がして悪くはない。
 蓋を開けると芳醇な果実の香りが……。一口飲んでみる。
「…………」
 アルコール度数の高い、強い酒だ。ブランデーは気に入った。だがこんなものを呑んでいたら仕事ができなくなってしまう。そう、琥珀色の酒のボトルは「飾るため」だけに存在する。
 父が直面し、戦った同じ場所に令司は今、立っていた。吾妻教授が言った通り、二十年前の出来事からヒントを得るのだ。

 令司は、奥の部屋の本棚から「南総里見八犬伝」を一冊取り出した。
 犬の件がかつての令司にはよくわからず、古典伝奇小説の表現だと思っていた。だが、八房は犬というより人狼であると解釈するとよく分かる。下級の武士ということだ。八犬士も人であって人でない存在、人狼だ。滝沢馬琴は、暗喩で物語らなければならなかった。
 ページをめくってると、写真が一枚パラッと落ちた。
 写真の中に若い姿のまま封じ込められた、キョウコの写真―――。
 二十年前、PM研究所で事故が起こったときのものらしいが、そこにはっきりと映っている。キョウコだ! 父はなぜこの写真を持っているのか。何をしていたのか? 何故死んだのか? そしてそこに東京伝説のキョウコが関わっていた。彼女こそ柴咲博士を殺した犯人。二十年間、同じ姿のキョウコに。
 キョウコは妖怪なのか化け物なのか、何者なのか、その正体は分からない。
 どっからどう見ても、東山京子の顔を思い浮かべてしまう。つい最近まで、すぐ傍に居た彼女のことを―――。
 京子があのキョウコであるという説を、令司は一度は否定したはずだが、鹿鳴館の事件で再び疑惑が浮上した。
 部員たちが一人ひとり粛清される際、令司は必ずといっていいほどキョウコを目撃してきた。吾妻教授と「新宿の目」で別れたとき、最後教授はどこかを観ていた。きっと教授もキョウコを見たのだ。
 だが令司は、彼女ともう一度会って、この問題に決着を着けなければならなかった。東京伝説の少女……キョウコ。彼女こそ、生ける東京伝説。
 もし今戦ったらどうなる? シルバー・スフィア、球面剣で殺される。渋谷スパイダーや松濤の鹿鳴館で、荒木影子と戦った京子の戦闘力を考えれば。
 鷹城自身、自分が物語の主人公になるなんて思ってもみなかった。もう、本の執筆だけでは事は終わらない。
 ずっと物語を描いてきて、ただひたすら、面白い作品を世に出すことだけを考えてきた。有名作品のタイトルだけで想像して物語を書いたり、プロットだけでも山のように書いてきた。その中で、次第に形になってきた幾つかの長編作。状況はまるで、現代の「帝都伝承」(荒巻仁・著)だった。
 東京帝国の本の内容は、奇しくも、令司が以前に書いてきた大長編「摩天楼ブルース」のプロットの内容そのものだ。これは宿命なのか。まさか、俺は知っていたのか。
 当初フィクションを書いているつもりが、いつの間か真相に迫ってしまったという宇宙系陰謀論の代表「第三の謀略」。その本の世界に入り込んだような気分に浸る。
 令司の書いていた小説は、社会派スペクタクルロマンと呼ぶ。いずれ起こる、東京の戦さを書いた大河ドラマだ。この概要を、令司は「東京帝国」の本の最終章に「予言」として書き込むことにした。

 ツンツクツンツク♪ ツンツクツンツク……ツンツクツンツク♪
 EDMのリズムで、原稿の余白を刻んでいく。
 昼も夜も書き続け、気絶するように眠った。
 枕元にはメモ帳とペンを置き、いつでもメモを取れるようにした。
 ノロノロと起きて、執筆を再開すると、何も食べずに十二時間も経過していることに気が付いた。
 過集中で体を壊してはいけない。
 外をあまり動き回らないために、深夜に弁当やおにぎりをまとめ買いしてある。お気に入りのカップ麺「サプリメン」や、コンビニ・ウルトラセブンで買った弁当を食べてすぐ作業に没頭する。
 外へ出るときはキャップとマスクが欠かせなかった。5Gカメラを監視するガンドッグや、十連歌や、彌千香や海老川たちに見つかってしまうからだ。それでも、ドローンが「こちら警察です。マスクを外してください」と言ってくるので、とっさにPM鍵でハッキングした。秋葉も都内のカメラを監視しているはずだ。ここにいることは絶対誰にもばれてはならない。花音の、リモート・ビューイングが恐ろしいが……。
 そのまま眠りに就き、想像を絶する空腹で再び目が覚める。規則正しく食べているつもりが、かなり執筆でカロリーを消費しているようだ。
 眠気覚ましに、吾妻教授にもらったソーダストリームを使用した。キャップはタンブラーになり、一度冷蔵庫で冷やすと永久に冷えている。海老川が言った通り、PMタンブラーだろう。
 クーッ、効くぜ……。
 銀色のボトルの蓋を眺めて、その重さに気づいた。振っていると、カランと部品が机上に落ちた。
 USBメモリだ。黒光りのガンメタリックカラー。
 海老川に飲ませた際には気づかなかった。そうか……この缶はPM製で、「隠す」能力に長けている。教授は、令司が必要なときにUSBメモリを手に入れられるようにプログラムしてくれていたのだろう。
 ノートパソコンで開くと、荒木影子の原稿と東大図書館&国会図書館の極秘資料のファイルが、ごっそりと入っていた。案の定だ。
 胸が、温かさに包まれていく。この資料を使えば、もう完成したようなものじゃないか、先生!
 もちろん、これを今ネットにバラまいたとしても、たちまち5Gパノプティコンの検閲に引っかかって抹殺されるだけだろう。
 発表するあては、もはやなかった。夏コミは事実上参加できず、先生のコネも失った。動画もBANされた。八方ふさがりだ。だがそんなことは今はどうでもいい。考えるのは完成させた後だ。
 書かねばいけないという何かが令司を突き動かしていた。訳の分からない衝動と言ってもよかった。
 ワーグナーはパトロンの王家の国家予算を食いつぶし、赤字にしてしまったし、生活のことを考えないで絵や音楽を作って早死にした人とか、あらゆる経済的、社会的に無駄なことや犠牲の上に、芸術は成り立っている。
 思うに、大芸術家はもう「代表作」というものが二、三あれば、十分すぎる。細々と量産していたら時間ばかり過ぎていく。
 書くことはたくさんありすぎた。それをどう整理つけるかで、めいっぱい脳細胞をフル稼働させた。誰も代わりにやってはくれないからだ。
 執筆のクライマックスのBGMは、「ロッキー」の無限ループ!
 ノートパソコンに、光宗丁子からの連絡が届いた。

『あなた方へのプレゼント、大三角レーザーからの、曜変天目の空は気に入りましたか? スミドラシルのハッキングに成功した祝砲です。あれが、二十年前に起こった出来事ですよ』

「そうだったのか……」
 彼らはやはり生きていた。
 ブルーレーザーを尋ねたときの、海老川雅弓の反応はどこかおかしかった。海老川はとぼけていた訳じゃない。知らなかったのだ。
 マスカレード・レイヴ・曜変天目ナイトの嵐も、東京スミドラシルがハッキングされて山の手を襲撃した。東山京子が秋葉武麗奴に頼んでスミドラシルで爆弾低気圧を召喚したのである。
 海老川は、スミドラシルのメンテナンスが無事終わったと言っていた。ハッキングをようやく解除したのだろう。
 TVドラマの音声が、急に耳に入ってきた。

『君が考える必要はない。ただ我々のいう事に、黙って従えばよいのだ』
『し、しかし――それじゃ……』
『考えるなといっている。もしも今後、この組織でやっていこうというのなら』

 チャンネルを変えた。
 テレビのニュース・キャスターが、真夏の衆参同時選挙について報道していた。何か急に決まったような気がするが……気のせいと思いたいが思えない。
 東京の、日本の権力構造が大きく変わる選挙だ。壮大なスケールで人狼ゲームめいたイベントが行われる中、東京華族の伝統の「大本営発表」は、何を語ろうとしているのだろうか。
 続いて、終戦記念日に新宿が閉鎖されるというニュースが流れた。
「――間もなく完成する新しい新宿の摩天楼、東京城ホテル。その庭園の工事中に、大戦中の大空襲で落とされた大量の不発弾が発見されました。自衛隊の調査によると、ガス爆弾の可能性があるとのことです。そこを中心に、半径一キロメートル四方の住人や勤務者に退避命令が出されています。自衛隊は総勢千名で副都心に非常線を張る予定です。撤去が完了するまでの間、中に民間人が入ることは許可されません――」
 それに相乗して騒乱しようとする十連歌メンバーの発言と、デモ隊の動向を伝えた。こんな風に、報道で十連歌の名が登場したのは何年振りだろう? ついに社会全体が、十連歌を脅威と捉え、国を挙げての人狼狩りに乗り出した証拠だ。一等陸佐である長門という自衛官が出てきて、今回は自衛隊が徹底的に包囲して、警備と撤去に当たるという。
 続いて長門陸佐は、世界中の軍隊の中で、自衛隊だけが不発弾から信管を抜く作業ができると、淡々と語った。その目が光っている。まるで竜が人の姿を取ったような貌だった。
「住民の皆さんは……」
 自衛隊の役割は、撤去期間中の十連歌デモ対策なのだと思えた。ガンドッグの代わりに「帝都」を守るのが彼らだ。
 画面が静止した。いや、そうではない。
 テレビのキャスターがじっとカメラを見たまま、黙っている。
 令司は異様な感じがして電源を落とした。実際には十秒程度だったかもしれないが、令司には一分以上こっちを無言で見つめているように感じられた。
 京子は言っていた。ネットに掲載された情報は、鷹城令司にカスタマイズされていた、と。今マスメディアが、同じことをしているのだとしたら――――。

二〇二五年八月十日 日曜日 チョウザメ月(スタージェンムーン)

『東京帝国のマトリクス 見えざる階級社会』

「できた――」
 令司は研究会でこれまで収拾した資料と、吾妻教授から預かった資料、それに父がこの部屋に残した資料を整理し、原稿をほぼ完成させた。
 東京伝説をそれぞれ追いかけると、いつしか一本の糸に束ねられ、同じ東京帝国という謎に集約されていく。
 荒木影子の論文テーマは、当初令司の収集した東京伝説とは異なっていた。だが、両者はおなじ結論にたどり着いた。
 まさしく荒木部長がいなかったら、令司はこの認識に立つことができなかった。変貌を遂げて、京子に殺されて、あんなことになってしまったが、部長のおかげだ。
 大日本帝国消滅後、東京帝国が見えない形で出現したことを立証する本。全ての東京伝説は、東京帝国へとつながる。すべての謎がここに集約されるのだ。
 その革命の道筋も、見事に出来上がっている。
 三輪教と東大工学部は、PMを通してフリーエネルギーを開発中だった。柴咲の遺志で、ベーシックインカムを実現する。
 柴咲のマンションの金庫の中身は、PMのフリーエネルギー研究の物理数式の書類で、令司は彌千香に渡した。
 3.11、東日本大震災の時の原発事故を機運として、従来のエネルギーから再生可能エネルギーへの政策転換が行われた。環境を汚染させず、汚染された土壌を浄化するフリーエネルギーの開発と、人工知能が組み合わされれば、人類社会はベーシック・インカムへと大きくシフトチェンジする。階級社会、見えざる奴隷制度からオサラバだ。
 いや、正確にはあともう少しで完成である。
 メールが届いている。
 東山京子からだった。
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