第8話 ルー・ガルー 渋谷人狼ラプソディ

文字数 15,093文字



十連歌

 和歌ロックアーティスト。
 数々のチャリティー・プロジェクトを成功させた第一人者。
 世界的なパンデミックの猛威を受け、十連歌の呼び掛けによってメジャー、インディーズを問わずにアーティスト、バンドが集まり、地球規模のチャリティー・プロジェクトが結成された。大きな成功をおさめるも、ハロウィン暴動を機に、十連歌は全メディアから姿を消した。

二〇二五年六月十六日 月曜日

「初回はどっから行く?」
 マックス先輩は、頭の後ろに両手を組んで、とぼけた調子で令司に訊いた。
「近場からにするか?」
 令司が黙っていると新田が答えた。
「東大下暗し?」
「この間から流行ってるなそれ。ま、足元にこそ、東京伝説が転がっているものだよナ」
「っというと―――?」
 そう里実が訊いて、部室に沈黙が流れた。誰も、いきなり東大の都市伝説に切り込もう、などと続ける者はいなかった。
「では、天馬君の言ってた渋谷の人狼伝説から始めよう。歩いて十分だ」
 マックス先輩は自分で結論を出した。
「そうですね」
 天馬雅(みやび)が微笑む。
 副部長の提案に、一同ほっと胸をなでおろした。
「いってらっしゃい」
 他の部員がそれぞれ自分たちの東京伝説の準備を続ける中、令司は、天馬と二人で駒場キャンパスを後にした。

 駒場キャンパスから渋谷駅前まではわずか八百四十二メートル、徒歩十一分の距離だ。
 松濤を通過する途中、渋谷鹿鳴館へと通じる角で京子のことを思った。長い坂道を下ると、高層ビルの立ち並ぶJR渋谷駅前に出た。
 令司は渋谷でUFOが目撃されたというファントムボール伝説にも興味があったが、今日は人狼伝説に絞るつもりだった。
 雅はこの後予定があるというので、一時間程度の取材だ。
 渋谷119の看板に、デカデカと雑誌「奏宴」(そうえん)モデルでロング・ウルフカットのKAGEKO、向かいの液晶モニターのCMにはタレント・RIKAKOが、長身の肢体を縦横無尽に駆使して踊っている。昼夜関係なくお祭り状態の雑踏の中、天馬雅はいきなりスカウトに引っかかった。慣れているらしく雅は受け流した。
「君……スゴいね」
「――って、なんで僕を撮るんですか?」
「取材の記録」
 令司はそう答えた。
 令司は駅前に近づく少し前から、スマホで雅の撮影を開始した。街だけではなく、雅を映した方が絵になると思ったからだ。
「いつからそんな都市伝説が?」
「曰くつきの去年のハロウィンからですよ」
 一年前、ハロウィンの聖地・渋谷で何が起こったのか?
 ハロウィン行列が有名になって以後、渋谷は大混雑で世界中から人が集まった。二〇十八年には、一時的に無政府状態が発生し、まったく無関係の四人の若者がノリでトラックを横転させたのだが、網の目のように張り巡らされた監視カメラのリレー捜査で、結局全員逮捕されている。
 その後のハロウィンでも小規模な事件はたびたび発生し、中には仮面に隠れて本当の犯罪を犯す者達も現れた。
 ゴミ問題や迷惑行為で、二〇一九年からハロウィン前後の期間、センター街などの路上で飲酒が禁止となった。一時は渋谷区のハロウィンパレード全面禁止騒動にまで発展しかけた。それを救ったのが、街の自警団たちだった。ところがそれで終わらなかった。
 仮装デモ行為が発生し、警官隊と自警団が必死に取り締まるも、それが暴動へと発展した。一部の町カメラを標的に破壊した。すべてのカメラが破壊された訳ではなかったが、5GのAIカメラでも犯人を特定できなかった。二〇一八のときと違って、デモ隊は全員コスプレで顔を隠していたからだ。
 暴動を扇動したのが、人狼コスをしていた連中だという。それを探りたいと雅は言った。
問題は自警団もコスをしていて、誰が犯人で自警団なのか分からなかったことだ。首謀者だけが人狼コスをしていたら、簡単に目立ってしまう訳だが、人狼コスを現行犯逮捕したら自警団だった、という事態も生じた。
「つまり、コスをしていた人の中に、本物の人狼が混ざっていた。そういう伝説ではないかと思うんです」
「そんな、報道あったかな?」
 カメラが壊されたなどと。
「事件は、矮小化されて報道されたんです」
「さっき里実さんに聞いたんだけど、去年ハロウィンでコスプレしたんだって?」
「――はい。ボクは嫌だったんですが、新田君が人狼のコスをして、ボクは赤ずきんの格好をさせられました。里実さん自身は、魔女っ子でした」
 天馬はあきらめたようで答えた。
 まさかの女装か。いかにも、コスプレが似合いそうな外見だ。肌質も髪質も女性的なので、容易に想像できてしまう。しかも、新田は人狼コスだという。
「その時どうした?」
「それで困ったことが起こったんです」
 雅のきれいな横顔が憂いに満ちている。
「新田君は、犯人である人狼コスを追ったんです。一時は追いつめて、僕は警察を呼んだんです」
「そうだったのか――彼、格闘技か何かやってるの?」
 雅と真逆で、あの男はガタイが良すぎる。
「はい。確か空手と柔道と剣道で合計十段って本人は言ってます」
「へェ……」
「新田君は警察から、別の意味で疑われてしまったんです」
「人狼コスじゃな」
「えぇ――。自警団は勝手に街を警備して回るわけですが、警官と違って、実力行使に法的な正当性がありません。新田君はあっという間に五人を伸してしまったんです」
 雅は、東大キャンパスに居るときと違って、普通の声量で話している。
「ははぁ」
「新田君は、自警団に協力して暴動を治めようとしたんですけど、それがかえってあだになりました。犯人は逃げてしまい、人狼マスクの新田君が逮捕されてしまったんです」
「えっ」
「新田君以外にも、人狼マスクをつけたレイヤーが次々逮捕されました。でも結局彼らは無関係だったんです。僕は警察に無実を訴えて、なんとか新田君を証拠不十分で釈放してもらいました。でも、本物の人狼はデモの群衆に紛れて消えました」
「ヤバかったんだな」
「時間はかかりましたが、AIカメラの解析で新田君の正当防衛が認められて、最終的には無罪が証明されたんですけど、一時は僕達も、人狼のような扱いを受けました。特に新田君はしばらく、警察につけられているとか言ってました」
 令司は京子をかくまった夜のことを思い出してゾッとした。世は二十一世紀の5G時代、街の犯罪は足を使った捜査から、カメラの解析へと移行している。この世はすでに監視社会だ。
 無法地帯が出現した二〇二四年のハロウィン。東京伝説のキョウコのコスをしている人も多かったらしい。キョウコと人狼には何か因縁があるかもしれない。
「今年のハロウィンから、渋谷商店街では過度の覆面禁止令が出るという噂です」
「今年こそ、中止になるかもしれないな」
「人が、ハロウィンで狂乱してしまう理由はなぜだと思いますか?」
「それは――ま日常からかけ離れた、お祭りだから?」
「そうなんですが、三十一日の月齢ってほぼ満月だったんです。十月は狩猟月、ハンティングムーンです。満月は、人間の精神に影響を与えるといわれているんです。犯罪率も、満月だけぐっと高まるんです」
「あ、そうか、満月といえば狼男か!」
「はい。そこに、コスプレの集団心理が加わります。マスカレード状態です。ハロウィンに人狼が出現する条件が整いすぎています。この渋谷には人狼が潜んでいる――これまで起こった事件は、人の中に眠る狼の性質が目覚めた結果ではないか、というのがボクの考えです」
 仮面(ペルソナ)で普段の人格は隠れ、コスプレーヤーたちは本姓をむき出しにする、一種の興奮状態の中に置かれている。そこへアルコールも入る。町全体が集団ヒステリー状態に陥り、占拠する。しかも場所は、ただでさえ二十四時間興奮状態の渋谷だ。いわば若者達は人狼に取り憑かれた結果として、凶行を起こした。
 こんな女性的な外見ながら、やっぱり東大生らしい理知的な会話。終始やさしさに包まれているが、中身は論理脳だ。
「確か新田君が、変な事言ってましたよ」
「何を?」
「新田君はジムに通ってるんですけど、満月が近づくと、筋力が増すんですって。見てると元気なときと、そうでないときがありますね。カルロス・カスタネダの本に、ヤキ・インディアンのドンファンの言葉として、人が獣の力を借りて変身する魔術の話が出くるそうですよ」
「そこまでいくと、都市伝説がずいぶんとオカルト寄りな感じだな。じゃあ、新田にも来てもらえばよかったかな?」
「えぇ―――次回は新田君にでも聞いてみてください」
 令司は、筋骨隆々の新田真実が狼男に変身する様を想像した。遠吠えする光景を頭に浮かべる。―――ばかばかしい。だが、いい絵になる。今度カメラの前でやってもらおう。
 渋谷の人狼伝説って……結局、新田じゃないか!
 天馬がスカウトに引っかかり、そのたび二人は移動しなくてはならなかった。彼らは雅のことを女の子だと思っているのだろう。こうして歩いていると、傍からは彼氏・彼女に見えているのだろうか? 声は一般女性よりは低いが、低い声の女性に聞こえなくもない。

ルー・ガルー

「ここが――、人狼ゲームができるお店です」
 スペイン坂にある「ルー・ガルー」という人狼ゲーム店は、地下の店でこじんまりとした入り口を構えている。VR人狼もできるらしい。
「そうか、人狼といえば人狼ゲームだな」
「このお店、去年のハロウィンの時に人狼コスの自警団の詰め所でした」
「じゃあ、何か知ってる可能性があるか」
 看板を見ると、「カップルデー」と書いてある。
「すみません、チョット下調べが足りなかったです……」
 雅は肩を落とす。
「どうする? あきらめる? 里実さんに来てもらう?」
 とか言いながらも、令司は雅の養子をじっと観察した。気づかれないよう注意しながら。
 雅は里実に電話した。しばらくして、
「なんでボクが……」
 と言って呆然とした表情で電話を切った。
「里実さん、―――『いい考えが浮かんだ。雅が女装すればいい』だって」
「えぇ?」
「言ってなかったんですけど、ボクは、去年の駒場祭の女装コンテストでグランプリを受賞したんです。これも、嫌だったんですが」
 本人は終始当惑気味だったが、周りはやんややんやの冷やかしの渦だったらしい。
「それしかない。もう時間がない」
 取材時間は、あと三〇分しかなかった。
「でも、服を買う時間だってないじゃないですか!」
「すぐそこに古着屋があるぞ」
「バ、バレますよ、絶対――!」
「いや、きっとバレない。最初に見たときから思ってたんだ。保証する」
 雅は青髭が全くなく、スリムな骨格は本物の女性みたいだ。肌もピカピカツヤツヤ。化粧も不要なくらいだが、コンビニで口紅だけ買った。
 黒いトップスにピンクのフリフリのスカート。赤いベレー帽は、赤ずきん風? ぱっぱっとパンク系女子に変身した。適当にチョイスしたにしては――すごい。
「声も一オクターブ上げてくれ」
「えっ↑」
 困った顔もかわいい。
「そうそう、そんな感じで」
 雅は苦笑した。

 店内に他に客はおらず、ゲームをしなくても取材ができそうだ。
 二人は事情を話してハロウィン騒動のことを切り出した。すると若い店長は、テロ首謀者の目星がついていると言った。
「ここだけの話、十連歌ですよ」
「えぇ?」
「もともとはネット用語だったんです。炎上を起こした当事者を人狼と呼んだんです。人狼ゲームから来てるんでしょうけど」
「どーいうことです?」
「ネット用語から派生して、去年のハロウィンでは異様に人狼コスが盛り上がったんです。十連歌があおったとされています」
「十連歌は、暴動の首謀者として事務所に干されて、メディアから消えた」
 雅が令司に振った。
「あれは干したメディア側が炎上したんです。十連歌は、リーダーの六聖也さんが激怒して、事務所の奴隷契約の体質が江戸時代のやくざと同じだと告発に動きました。で、メディア全体から締め出しを喰らいました。ネット民はメディアのバッシングを行いました。民意を得た十連歌は、一気に社会改革デモを行うようになりました」
「けどその場合の、人狼って――」
「民衆のヒーローの立場です」
「もともと、チャリティー・バンドでしたよね」
「そうです」
 かつてバンドエイドを企画し、チャリティで集まった金をあちこちに送金していた十連歌。現在は全メディアを敵に回し、以来反体制に回った。
「二年前、学祭に出てきたのが、初めての十連歌との出会いだった。あの頃はまだ平和だった。十連歌は学生に大人気だった」
 令司は高校生だったが、東大の五月祭に見学に行った。
「そーですよね……」
 十連歌は直接、ハロウィン暴動と自分たちが関係あるとは公表していない。
「彼らがハロウィン事件をたきつけた人狼っていう確証が、何かあるんですか?」
「ハロウィンは百鬼夜行です。警官や自警団だけでなく、中には文字通りの覆面刑事までコスプレで紛れていました。その中に連歌師が紛れている情報は、うちの店に集まった自警団もキャッチしてました。暴動を境に出てきたのが東京地検特捜機動隊――新番組です。彼らは暴動に参加した者を徹底に調べています」
「……」
「テロの取り締まりはこの一年で強化しています。東京の反乱分子を取り締まる、安政の大獄です」
 幕末、大老・井伊直弼の粛清により、数多くの志士が処刑された。だが、なぜ五百旗頭特捜検事は令司宅に現れたのだろう?
 言論封殺を受けて、表から姿を消した十連歌は、捲土重来を目指してU-Tubeチャンネルを立ち上げ、メディア全体に反旗を翻した。
 再生回数が爆発し、一切メディアに登場しないアングラの帝王と化した。十連歌出没ライブでデモ隊を育てる。するとメディアはライブだけでなく、デモの模様まで無視し始めた。その後、十連歌はネットでデジタル・レジスタンスとして活躍し、巨大勢力に成長。そのU-Tubeチャンネルも、不可解な理由でBANされている。
「炎上、魔女狩りの本質っていうのは、コトダマそのものです。十連歌は連歌の言霊を操って、人狼の言霊に獲りつかれてしまった、とも考えられますね」
「人狼ゲームって、なんで流行ってるんですか?」
 令司は訊いた。
「人間の深層心理が隠されているゲームだからだと思います。もともとは、マフィア・ゲームが原型でした。そこから、人狼ゲームが派生したと言われています」
「マフィアが人狼になったと?」
「えぇ、マフィアも人狼も、人間社会に紛れ込んだ異物です。実は人狼ゲームが流行り出した時期と、渋谷が日本でハロウィン・コスプレの聖地になり始めた時期は、一致するんですよ」
 ハロウィンで妖怪に扮した仮装行列が年々問題化しているのも、人間社会の異物に対する反応なのかもしれない。
「――そうなんですか?」
 雅が質問し、店長が返答する。それを令司が撮影している。
「中世キリスト教の世界には、魔女狩りがありました。墓荒らし、教会に逆らった者や魔術師は大罪とされて、社会から排除されていった。受刑者達は『狼』と呼ばれていました」
「はぁ――、つまり魔女狩りの原型って、人狼狩りなんですか?」
「そういうことです。カトリック教会から三回目の勧告に従わない者は『狼』と認定されました。罰として七年から九年の間、月明かりの夜に、狼のような耳をつけて毛皮をまとい、狼のように叫びつつ野原で彷徨わなければならなかったのです」
「うわ……まったく、リアル人狼ゲームじゃないか!」
「ルーツはそこです。むしろ、人狼ゲームは、魔女狩りゲームでもあった訳です。こんなものが未だに二十一世紀でも流行るのは、人間の業でしょうね―。私はいつもそう思います。ネット炎上でも、狼とか魔女とか、人は得体の知れないものに何かレッテルを張ると安心する。あいつは『狼』だって」
 店長は「魔女狩りゲーム」のカードを見せた。令司はゾッとした。
「確かに。時代を超えて、あいつは左翼だとか右翼だとかなんだとか、今でもネット上でみられる現象ですね」
 レッドパージやヘイト、迷信が無くなっても人は差別のタネに困らない。
「店名のルー・ガルー(loup-garou)は、フランス語ですよね?」
 雅は訊いた。
「はい。ルー(loup)は狼、ガルー(garou)は、古い単語はgarulf(ガルフ) で、これは古フランク語のwarwolf(ワーウルフ)に由来し、これ自体で『人狼』という意味があります」
「狼になった奴らは、結局どうなったんですか?」
「話を中世暗黒時代のカトリックに戻しまして、森の中へと追いやられた彼らは、たびたび人里に現れて略奪などを働いたそうです。後の世には、夜になると狼の毛皮をまとい、家々を訪れては恐喝を働く輩まで現れました」
「自ら鬼畜道に堕ちたって訳か」
「そうです。フランスだけで、年間三万件近い人狼関係の事件が報告されています。ドイツやイギリスでも、同様の事件の発生が記録されています」
「そんなに――?」
「共同体から追放されたってことは、アウトロー宣告を受けたということです。
人狼に変わると、市民は彼らに対する殺人をも許可されました。犯罪者扱いですから。それで、人狼は普段は人間に変身している訳です」
 教会からレッテルを張られ、自分の意志で狼になるしかなかった、人狼たちの悲しい運命。
「奇妙なほど、渋谷の事件も人狼と無関係ではないような気がしてきた」
 この渋谷の人込みの中に、今も人の皮をかぶった“狼”が潜んでいるのかもしれない。
「ボクたち――いいえ私たちも暴徒と、何ら変わらないコスプレに身を包んでいたせいで、警察から彼らと全く同じ“狼”の扱いを受けてしまったんです」
「そうだったんですか……私が観た限りでも、無関係の人が捕まったケースが多かったですね」
 店長はじっと雅を見た。女の格好をしているが、男の子。「完成度の高い女子」コスだが、気づかれたかもしれない。
「警察にとっては、ハロウィンのコスプレ自体が人狼だという認識なのかもしれません――。江戸時代の日本では、罪人が三度罪を犯すと、額に『犬』という刺青を入れられたらしいですし――」
「刑事が人狼コスをしてたのはどういう訳で?」
「お上も同戦略を取ることがある――大戦末期のドイツには、人狼部隊(ベオウルフ)というのがあって、住民から軍服に突然様変わりして攻撃したらしいです」
「住民が人で、軍人が狼とってことか。不意打ちし放題――卑怯な戦法だな」
 民間人か軍人か区別がつかなければ、いたずらに民間人の殺害にもつながるから、それは通常禁止されている。
「『里見八犬伝』でも、呪いによって里見家が子々孫々、畜生道に堕ちて、侍が犬に身をやつしたことになってるし、日本でもヨーロッパと同様な扱いかもしれない」
 令司は真知子先生の授業内容を思い出した。
「それで犬士か! 人であって人でない、犬に堕とされた侍――。でも、犬士の場合は、呪われたとはいえ本人たちの罪じゃないし、里見家に忠誠を誓った忠義の武士の物語ですけどね」
 雅は興奮している。
「水滸伝も南総里見八犬伝も同じか。つまり日本では民衆を率いたヒーローの扱い、レジスタンスという色合いが強い」
 そこでは、犯罪者ではなく気高き戦士としての「人狼」像があった。
「えぇ。……もともと日本では、オオカミは『大神』を意味します。神として畏敬され、多くの神社の祭神になっています」
「確かに」
「バルト・スラヴ系民族でも、人狼は『若者の戦士集団が狼に儀礼的に変身する』という風習が民間伝承化されています。だから、すべてが悪者扱いではないと思います。いわば聖と悪、両方の側面がある訳です」
「人狼たちは――彼らはこの町に、今もいるんでしょうか?」
「はい。あの時デモに参加し、暴徒化した連中は、渋谷界隈に存在し続けてます。彼らは一見目立たないですけど、平時から、一般人に紛れて潜んでいるんじゃないかと思いますよ」
 結局、店長から十連歌がデモの首謀者である証拠は語られなかった。

 外へ出た二人は、スペイン坂からセンター街へと流れ込んだ。
 夕暮れ時の渋谷駅前は眩い光で溢れかえり、いつもの雑踏で溢れかえっている。
「渋谷でUMA探ししているのは、俺たちくらいのものだろうけどナ」
 令司は渋谷の人狼伝説に、現実感みのある事件を重ねて感じながら、どこかで幻想的な物語を聴いている風でもあった。それでいて、令司は半ば気づいていた。自分たちが追い求めている人狼の正体とは、ある種の人間たちなのだ、――ということを。
 ガングロ・ギャル、チーマー、アイドルの卵、違法キャッチ、スカウト。渋谷駅界隈にはいろいろな異形な者たちがうごめいている。それらはリアル人狼ゲームの役職で、その中に、本物の人狼も潜んでいるのだ。あるいはそれらをひっくるめて、か。その正体は犯罪者か、自警団か、それとも十連歌か――。いずれにせよ、令司は近いうちに彼らが正体を現すような気がしていた。後で新田にも聞いておこう。
「貴重な話が聞けた。動画に撮っておいてよかったよ」
「そうですか……」
 雅は微笑んだ。
 令司は感じていた。この天馬雅という人間、何か秘密を抱えているのではないか。ハロウィン事件だけでは済まない、底知れぬ謎が。
「せっかくだから、最後にセンター街で何か食べて帰ろうか!」
「いえ……チョットお金が」
「おごるよソレくらい」
「――いいんですか」
 化粧ばっちりで、笑顔がかわいい。
 さっき古着代を出したのも令司だ。
「UMAいもんでも食べようぜ」
 東京伝説を追う取材のモグモグタイムだが、渋谷で甘いものを「男」と食べるなんて妙な気分だ。とはいえ、女装のままなので黙っていれば女性にしか見えない。
 タピオカ屋で並んでいると、雅はJK達に勝手にスマホを向けられて、戸惑いながら急いで商品を購入した。
「ありがとうございます、令司君」
「俺も似たようなもんだ。ファミレスならサイゼリヤかガストがいい。ロイヤルホストはちょっとお高い。『ビタイチ』のワンコインカレーが好きで、食べてる。月末が近づくとスーパーの半額セールは欠かせない」
 ビタイチは、どのカレーも五百円税込みで食べられる。
「僕は普段からです。チャーハン、モヤシ炒め、納豆ご飯と豆腐。自炊はその繰り返しですね。特に、もやしは貧乏学生にとっての救世主ですよ」
雅の食生活では、永久に太ることはない。

未来の神話

 二人は、渋谷駅の奥村太郎の壁画「未来の神話」の前まで来た。
「それじゃボクは用事がありますので、これで……」
 そう言いかけて、雅は立ち止まった。
「なんか、変です……」
「ちょっと待てよ」
 山手線と井の頭線の連絡通路に、誰もいない。普段ここは、渋谷でもっとも人の往来が激しい場所の一つだ。
「なっ、無い―――!?」
 令司は壁を見上げた。そこに、太郎の壁画はなかった。だだっぴろい、真っ白な壁面が続いている。
「こんなことって」
「ボク、人を探してしてきます!」
 雅は、令司が答える前に走り去った。令司は一人になり、ただの壁と化した白い空白を眺めている。まさか、無人化の伝説? そんなバカな。
 こうしてはいられない。誰かが盗んだのかもしれない。いや、しかしどうやって? 令司も駅の改札へと向かった。そこにも人はおらず、雅の姿も消えていた。
 再び壁画のあった白い壁の広間まで戻って、唖然とした。
 そこには壁画があった。動かした様子もない。
 何が起こったのか全く分からない。どう見ても、さっきは無かったのだ。しかし依然として人の往来はなかった。
 令司は壁画を凝視した。
 パブリックアート「未来の神話」は、日本の「ゲルニカ」と呼ばれている。広島・長崎に原爆が投下された二〇世紀。その体験を乗り越えて人類は再生する。太郎は言う。
「原爆が爆発し、世界は混乱するが、人間はその災いと運命を乗り越え、未来を着開いていく――といった気持ちを表現した」
 こんなド派手なものを、見落すはずなどない。
 見ていると、ものすごいド迫力で、横長の大画面から奥村太郎の情熱が迫ってくる。「芸術は爆発だ」と言った太郎。
 その情熱が……。
 絵がぐにゃーっと動き出し、令司は大きく一歩下がった。
「なんだ? これは――」
 赤い部分が左右から迫ってきた。真っ赤な魚の口が裂けで炎を吐いた。白いガスがうねって空間に流れ出ていった。何度かも核爆発が起こり、赤い渦の回転が令司の眼球を支配し、激しい明滅が令司の視界を奪った。
 渦には宇宙の真理の込められているといった、京子の言葉を思い出した。
 真ん中の骸骨が燃えて悶絶し、やがてぴたりと動きを止めた。
 燃えた骸骨が、令司に語り掛ける。

「今日、U-Tubeのチャンネルを削除されたが、そんなコトで勢いは決して止まらない。我々はぁ――」

 「それ」はやがて肉を持ち、じっと観ていると額縁をゆっくりと降り、高いヒール付きのブーツを履いて、とうとう地面に降り立った。
 十連歌リーダー、六聖也仁(ろくせいやひとし)。
 絵の中から出てきたのは、五十代のオールバックの往年のロッカーである。葛飾北斎の「神奈川沖波裏」に描かれた波型のギターを抱えている。
「すべてのSNSから追放されることが分かった! とうとうネットまで情報統制の嵐だ! 他人の書いた十連歌関連の記事も続々削除されている! 俺たちにはもう、デモしか残されていない! 事件のもみ消しを、新番組が工作した。これがハロウィンの真実だ、ハロウィンは警察と自警団と腐った上級国民の壮大な人狼ゲームだったんだ!」
 令司は唖然として見守る。
 こ、これは六聖也の仕業なのか!? だとしたら、どんなマジックだ?
「しかーし、ハロウィンを契機に復活した十連歌は、奴らが夜不安で眠れなくなるような恐ろしい変貌を遂げた! けどメディアは報道しないし、俺たちは動画をアップできない! U-TubeやSNSはエンパワーメントの牙城なんだ。そこを奪われると……だがここからすべてが始まる。東京に革命を巻き起こす。その最初のステージだ!! 俺たちは絵を一切を傷つけることはしない。でも警察はそうは思わない!」
 六聖也は令司に向かって右手を差し伸べる。
「目の前にいるたった一人の観客に、記録を託そう―そのスマホで! 歴史の証人になるんだ。これから起こる出来事を、世の中に広く伝えろ!」
「ま、待ってください、これ、コンサート……か何かですか?」
「去年のハロウィンは前哨戦だ。俺は君にバトンを渡す。俺が奥村太郎の、この絵と共鳴したように、君も太郎と俺のコラボから何か感じ取ったはずだ! そうだよな、なら君はそれを表現しろ! 芸術は爆発だ……ってのが、彼の言葉だ!!」
 嗄れ声で締めくくり、北斎の波ギターをバーンとかき鳴らした。

 太郎を敬い 太郎壁画の爆発浴びて頭に灰降り積もる
 二郎を敬い ジロー系ラーメンの具材の山崩して平らげる

「サァ青年、何か聴こえてくるだろう?」
 六聖也は大仰に姿勢を傾け、耳を澄ましている。

 オオオオ――――ンン……。
 アォオオオオ――――――ン……。

「……ウ……聞こえる。遠吠えが」
 狼の遠吠えのような「声」が、大音響で渋谷のビルの渓谷に響き渡っている。その声に、令司は聴きおぼえがあった。
「……ハチ公前だ」
 令司は窓の外を見下ろした。
「もう行くがいい。後は自分の眼で確かめるんだ」
「何が待ってるんです?」
「あそこに行けば分かる。君がいつ気づくか分からないが、それはすでにずっとそこにあったんだ。君自身が気づかないだけでな!」
 六聖也は壁にへばりついていたドローン映写機を、右手をバッと上げて回収し、立ち去った。ウェラブル端末で操作していたらしい。
 令司は大混乱する頭を鎮め、いや静まらないまま、これはアートテロなんだ、いやそれどころじゃないと、令司はスマホカメラを掲げたまま、急いでハチ公前へ向かった。
 太郎との時空を超えたコラボレーション、プロジェクション・マッピングか……。確かに絵に傷つけてはいない。最初に絵が消えた瞬間から、それは始まっていたらしい。
 人狼とは十連歌のことなんだという話だった。六聖也は自ら、ハロウィン暴動の首謀者を名乗ったのだ。



 スクランブル交差点まで戻ると、いつも以上に押すな押すなの人込みが、初詣の明治神宮並みの大混雑の様相を呈している。
「れ、令司君!」
 人込みの中に、雅の姿があった。
「絵は、どうなったんですか?」
「後で話す。たった今、とんでもない事が起こった。今日って、ハロウィンだったっけか?」
「違いますけど――」
 バンドの爆音が、ハチ公前から鳴り響いていた。
 和太鼓と電子音に混じって、「AYA-PON見参!」という若い女性の声が聞こえてきた。あれが人の流れが急激に変化した原因だ。

 渋谷ハチ公前から、都民につぐッ!!
 奴らは町中のカメラをチェックしている!
 犯罪者だけじゃない。東京地検特捜部機動隊、
 新番組はカメラを都民管理に利用する!
 プライバシーは存在しない!
 都は、下町区にも広げようと画策している!
 権力が、監視社会を!
 実現する前に!

 我々は「1984年」が予言した、
 5G監視社会へのレジスタンスを決行する!
 「198予」(イクワヨ)!
 ブルーレボリューションだ!
 我々は絶対に屈しない!
 渋谷よ、青く染まれ!
 ワーレーに続けー!

「十連歌(じゅうれんが)だッ!」
 人並みの爆心地となったのは、十人のメンバー(連歌師)で構成される人気和歌ロックバンドである。
 全員、髪のどこかに青いメッシュやカラーを入れていた。和装にパンク衣装を取り混ぜ、和楽器とエレキギター、サックス、電子音楽、ジャズ、ロック、EDMと何でもあり、すべてがごった煮になったグループだ。過激な政治詩ロックで知られている彼らが、今日も連歌会(れんがえ)と呼ばれるゲリラ・ライブを決行していた。
 人狼マスクこそしていないが、普段から覆面をするわけにもいかない。逆に目立ってしまうだろう。

 東京の街カメラがどんどん、
 高性能AIカメラに変えられていっている。
 あたしたちの警告に世間が耳を傾けなくなりゃ、
 いずれAIが人間を監視するだけじゃなく、
 仕事を奪い、東京中に失業者があふれ出す!
 すべては仕組まれている!
 富めるものと大多数の失業者や貧困にあえぐ者たちの
 階級社会の到来だ!!

 十連歌は、数秒で顔認証で個人を特定するAIカメラの監視社会を批判していた。5G時代のSNSでは、AIの誹謗中傷対策で、誰もお上批判ができなくなった。
「AYA-PONさんだ、久しぶりに実物を見たけど、かっこいいですね!」
 雅が令司にスマホを向けるように言った先に、ハチ公の上にまたがって歌う女性が立っていた。半分破けたような赤い着物を着た彼女が、狼の遠吠えを発声していたのだ。AYA-PONはシュプレヒコールを上げていた。
 渋谷駅前は、ファンや野次馬でごった返し、車道は必然的に渋滞が発生していた。スクランブル交差点が人で埋まったままなのだ。
「撮れました!?」
「ばっちり撮れたよ」
「相変わらず、す、凄い人気ですね」
 天馬は普段より興奮気味に言った。ファンであることが明らかだ。
「取材中に、十連歌までカメラに収めることができるなんて―」
 令司も興奮していた。もしかするとこれは、十連歌の都市伝説をも追えるかもしれないからだ。
 一見して、正式な許可を取っていないゲリラライブのようだった。しかし、集まっている若者はたまたま居合わせた人々。デモ隊ではなかった。
「解散しなさい!! 解散!! 駅前での無許可のパフォーマンスを禁ずる――――ッッ」
 パトカーのサイレンと警光灯が集まってきた。
 なるほど無許可だったらしい。
 間近の交番の警官が、加勢のパトカーから降りてきた警官たちとともに、交通整理を始めながら特殊警棒を引っ提げて近づいてきた。強引に群衆の中に入り込み、警官隊とファンがもみ合いをしていて、非常に危険な状況だ。
「なぜ警棒を振り回してるんだ?」
「警察にとっては、十連歌は目の上のたんこぶです。ハロウィン暴動を起こした犯人を、なんとか十連歌と結び付けようとしているのかも」
「十連歌のファンなんて、たくさん居るだろうに――」
「はい。大人気ですから。でも強引に結びつけようと思えば、いくらでもできるはずです」
「君もまた巻き込まれるぞ。逃げよう」
 JR駅前を見渡すと、多くの人が撮影しているからリーダーの言うように自分が撮影する必要はないような気がするが。
 アンプが警官によって切られ、間もなくゲリラライブは終了した。観衆は潮が引くように立ち去っていく。
 違法デモ扇動の責任でAYA-PONは逮捕されたものの、六聖也は離れていたので逮捕されなかったようだ。
 ―――すごい映像が撮れた。
 烏の大群がわっと降りてきた。路上に、東山京子が立っていた。
 一瞬時が停まった。
 バタバタっと烏がこちらに向かって飛び立つ。令司は目をつぶり、再び目を開けると京子の姿はどこにも見えない。
 令司は天馬雅とはぐれた。

「――天馬君は?」
 令司は駒場キャンパスの部室に戻ってくるなり、部員たちに訊いた。新田がいない。
「さぁ、一緒じゃなかったの?」
「途中で見失いました」
「バイトって言ってなかった?」
 マックス先輩はなぜか、部室を出たときと同じ姿勢だった。
 天馬は苦学生だった。家系カレー店のバイトや、他の仕事を掛け持ちしているらしい。
「奴は、テレビのエキストラのバイトもしてるんだ」
「エキストラ?」
「街頭インタビューのエキストラ。かわいいから分かりやすいのがネックよね」
 ニュース映像に映る「一般人役」で何度も出演し、そのせいで不可解なほど同一人物が映り込む。あんな美青年が映ったら目立つだろうに。
 奨学金で学費をまかないながら、生活費を稼いでいた。令司もカツカツだが、車が持てる分、部員中では比較的裕福な方なのかもしれない。
「――連絡はありませんでしたか?」
「大丈夫じゃないの? あたしんトコにも連絡……ないケド」
 天馬のコス仲間?の里実はネイルケアをしていて、顔を上げようともしない。
 まさか天馬の最後の映像、なんてこともないだろうが。
「で、どうだったんだ?」
 マックス先輩の口角がかすかに上がっている。
 令司は、たった今渋谷で起こった出来事を興奮して話した。
「ドローンを使ったプロジェクション・マッピングねぇ。夕暮れ時とはいえ、かろうじて屋内だから投影できたんだろうな」
「許可なくても大丈夫なんですか?」
「東京都の場合、公益性があれば許可は不要だ。公序良俗に反しない限りはな。しかしパターンの繰り返しや激しい明滅、渦の回転などの視覚を混乱させる映像は不可なんだ。あ、今、あったよね……まるきり×じゃん」
「人が消えたのは、どうした訳で?」
「JR駅前に人を集めて、太郎のエリアを減らして、おそらく偽企画だか何かで人の流れを変えたんだろう。駅にだけ届け出ていたのかもな。で、君にプロジェクション・マッピングを披露したと」
 マックス先輩こと四元律は法学部三年だ。
「今や警察捜査の九十パーセントは、カメラとネットの解析に頼っている。足で稼ぐ捜査の時代は終わり、前世紀のものとなってスキルも落ちている。監視社会では悪いことはできない。十八歳以上は成人扱いで実名報道、俺たち大学生も一人前扱いだ」
 テレビをつけるが、渋谷の十連歌のゲリラライブは報道されていない。ネットニュースにもなっていない。やっぱりマスメディアは一斉にガン無視か。
 令司はU-Tubeチャンネル開設を提案した。
「ただ成果が二ヵ月後の夏コミだけだと、活動実績としては少し乏しい気がします」
 耳目を集め、東伝会の情報をスムーズに収集し、成果の中間報告のためでもあった。
「特に今日の出来事は、どこも報道していません。早いほうがいいです」
「まぁイイんじゃない。確か先生も言ってたし」
 藪が気軽に言った。
「ま、そうだな。リオタールは『ポストモダンの条件』で、大きな物語の失墜によって、社会の制御機能は行政官の手を離れて、自動人形の手にゆだねられる、と言った訳だ。かつての国家・国民、党、職業、制度などからスマホのSNSへと、小さな物語が拡散する事になる時代が来る――見事にその通りだ。――では、里実ちゃん、チャンネル管理人やってくれるかい?」
 マックス先輩によると、里実は、ITに強いらしい。
「ハ~イ、私、管理人やります」
 里実は完成した爪を見せて、手を挙げた。
「彼女はコスプレチャンネルをやってるんだ」
「お願いします」
「よっしゃ、これで決まったな」

 令司は帰宅してから、動画を編集し、RINEグループでメンバーに報告して、里実萌都へ動画を送った。気がつくと時間は深夜十二時を回っていた。
 里実萌都は「東京伝説研究会」の動画チャンネルを開設し、先にアカウントを作っていたツリッターで告知した。
 渋谷人狼伝説は、クライマックスの十連歌も収録して、四〇分の大作動画になった。アップロードされると同時に、再生回数はうなぎのぼりの滝登り。主に、天馬雅のおかげだ。
 ネットの広大な海の中で、アップされているのは令司の動画だけだった。報道管制、情報統制は真実だった。これは不可解だ。にしてもなぜ令司の動画だけが――? たまたま遭遇した六聖也がそれを知っていたとは思えない。
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