第7話 海から来た悪魔 第4章
文字数 1,394文字
「心くん、海が見えるの?」
「はい、信子さん。海が見えます。夜ですね。船に乗っています・・・それも小さな船です・・・他にも何人か乗っています」
警察署の倉庫に置かれている1年前の「大型ダンプ殺人事件」の犠牲者の車の前で、心は車の中に乗っていて死亡した男女の声や映像を感じ取ろうとしていた。
しかし、心が最初に感じたのは、事件とまったく関係のないような海のイメージだった。心の横には信子とみなみがいて、心が話す内容をメモしている。
「ねえ、何か人の声は聞こえない?」
信子が聞いた。
「・・・船の上の男性の映像が見えます。男性が誰かに話しかけました・・・答えているのは・・・女性のようです・・・」
男性に答えている女性が1年前にS市で発生した事件で死亡した女性である可能性が高いと信子は思った。そして、その女性が話している内容が分かれば、身元を捜す手掛かりになる。
心も話の内容を聞き取ろうと必死になっていたが、しばらくして諦めたのか信子とみなみに言った。
「話の内容はわからないです・・・どうやら、日本語じゃないようですね」
「えーっ! 外国人!?」
外国語なので、何を話しているかはまったく分からないということだった。
「心くん、他に何か女性の身元が分かるいうなものは見えない?」
信子が尋ねると、
「あっ、映像が変わりました。今度は室内です・・・広くて立 派な執務室のようなところです。目の前のソファーに男性が座っていて女性と話しています・・・話の内容は聞き取れませんが、この男性が話しているのI,は日本語のようですね」
「その男性は、山下泰三さんなの?」
「違います。雰囲気からすると、もっと偉い人といった感じです。・・・えーっと、映像が終わっちゃいました。これで終わりかな」
それを聞いた信子は
「これだけじゃ、女性の顔も分からないし、 山下さんとの関係も分からない…。心くん、大変だろうけど、もう1回頑張れないかな?」
「分かりました。もう少し頑張ってみます」
そしてみなみも心を励ました。
「あとひと息だよ、心くん!頑張れ〜頑張れ〜」
これまで心は信子と2人で行動することが多かったが、今回は、みなみも加わり、女性2人から励まされて、まんざらでもないといった感じだ。
それが効果あったという訳ではないだろうが、しばらくすると、心の表情がパッと明るくなった。
「あっ!また始まりそうです!・・・ん?・・・あれっ?」
心がびっくりしたような声を上げた。
「今度は何が見えたの?」
「女性です・・・でも謎の女性ではなく、先ほどお話を聞いた山下泰三さんの 奥さんの律子さんです。男性が話しかけています。多分この声の持ち主が亡くなったご主人の泰三さんでしょうね・・・ああ・・・泰三さんの奥さんへの想いが・・・。これは早速奥さんにお伝えした方がいいと思います」
「そうね」
信子も同じ気持ちだった。
心はこの後もいくつかの重要な声や映像を感じ取ることができた。
警察署での調査が終わった3人はその足で再び山下律子の家を訪れた。
玄関から出てきた律子は3人の顔を見るなり驚いた表情をした。
「またあなたたちなの?何か忘れ物?」
「いえ、どうしても奥様にお伝えしたいことがあって再び来ました。お伝えしたいのは、亡くなったご主人から奥様へのメッセージです」
律子は怪訝な顔をして心を見た。
「主人からのメッセージですって?」
(つづく)
「はい、信子さん。海が見えます。夜ですね。船に乗っています・・・それも小さな船です・・・他にも何人か乗っています」
警察署の倉庫に置かれている1年前の「大型ダンプ殺人事件」の犠牲者の車の前で、心は車の中に乗っていて死亡した男女の声や映像を感じ取ろうとしていた。
しかし、心が最初に感じたのは、事件とまったく関係のないような海のイメージだった。心の横には信子とみなみがいて、心が話す内容をメモしている。
「ねえ、何か人の声は聞こえない?」
信子が聞いた。
「・・・船の上の男性の映像が見えます。男性が誰かに話しかけました・・・答えているのは・・・女性のようです・・・」
男性に答えている女性が1年前にS市で発生した事件で死亡した女性である可能性が高いと信子は思った。そして、その女性が話している内容が分かれば、身元を捜す手掛かりになる。
心も話の内容を聞き取ろうと必死になっていたが、しばらくして諦めたのか信子とみなみに言った。
「話の内容はわからないです・・・どうやら、日本語じゃないようですね」
「えーっ! 外国人!?」
外国語なので、何を話しているかはまったく分からないということだった。
「心くん、他に何か女性の身元が分かるいうなものは見えない?」
信子が尋ねると、
「あっ、映像が変わりました。今度は室内です・・・広くて立 派な執務室のようなところです。目の前のソファーに男性が座っていて女性と話しています・・・話の内容は聞き取れませんが、この男性が話しているのI,は日本語のようですね」
「その男性は、山下泰三さんなの?」
「違います。雰囲気からすると、もっと偉い人といった感じです。・・・えーっと、映像が終わっちゃいました。これで終わりかな」
それを聞いた信子は
「これだけじゃ、女性の顔も分からないし、 山下さんとの関係も分からない…。心くん、大変だろうけど、もう1回頑張れないかな?」
「分かりました。もう少し頑張ってみます」
そしてみなみも心を励ました。
「あとひと息だよ、心くん!頑張れ〜頑張れ〜」
これまで心は信子と2人で行動することが多かったが、今回は、みなみも加わり、女性2人から励まされて、まんざらでもないといった感じだ。
それが効果あったという訳ではないだろうが、しばらくすると、心の表情がパッと明るくなった。
「あっ!また始まりそうです!・・・ん?・・・あれっ?」
心がびっくりしたような声を上げた。
「今度は何が見えたの?」
「女性です・・・でも謎の女性ではなく、先ほどお話を聞いた山下泰三さんの 奥さんの律子さんです。男性が話しかけています。多分この声の持ち主が亡くなったご主人の泰三さんでしょうね・・・ああ・・・泰三さんの奥さんへの想いが・・・。これは早速奥さんにお伝えした方がいいと思います」
「そうね」
信子も同じ気持ちだった。
心はこの後もいくつかの重要な声や映像を感じ取ることができた。
警察署での調査が終わった3人はその足で再び山下律子の家を訪れた。
玄関から出てきた律子は3人の顔を見るなり驚いた表情をした。
「またあなたたちなの?何か忘れ物?」
「いえ、どうしても奥様にお伝えしたいことがあって再び来ました。お伝えしたいのは、亡くなったご主人から奥様へのメッセージです」
律子は怪訝な顔をして心を見た。
「主人からのメッセージですって?」
(つづく)