第2話 7人の白骨遺体 第7章

文字数 1,289文字

2家族の無理心中事件でただ一人母親が置いていったため死を免れた赤城美知(あかぎみち)は今年20歳で成人を迎えた。

母親の妹である叔母・吉田仁美(よしだひとみ)のもとで実の子どもと同じように大事に育てられ、現在、看護師を目指して看護学校で学んでいる
妻の不倫相手の子どもを殺害した父親の事件の影響で学校に行きたがらないこともあったが、最近は静かに暮らしていた。

心の母親の了解が得られたので、信子と美知は早速その日の夜、心の家を訪れることになった。美知が母親に代わって自分を育ててくれた叔母の仁美に相談したところ、仁美は美知のことが心配だとして一緒についてきてくれた。

美知は心を見て若いことに驚いていた。
「赤城美知と言います。心さん、よろしくお願いします。でも、心さんがこんなに若い方とは思っていませんでした。亡くなった人の最後の時が分かる不思議な方とお聞きしていたので、なんか髭を生やしたおじいさんのようなイメージだったものですから・・・」
美知のこの一言で場は一瞬和んだが、心が話す内容を想像すると全員の緊張が高まってきた。

心は最近の変化について話した。
「まずに言っておきたいんですが、最初に7人についての映像を見たときに比べると、最近、僕に見える映像などは驚くほど少なくなりました。これは亡くなった7人の怨念というか苦しさや哀しみ、不安などの情念が何らかの力であの寂しい山中に閉じ込められていたものが、遺体を発見されて掘り起こされたのをきっかけに噴出した。そして、特別な能力を持った僕に伝えることが出来たことで、亡くなった7人は「安心して」永遠の眠りについたのではないかと、僕は考えることにしています」
心はそう前置きして自分が遺体発見現場で見た光景を淡々と話した。

美知は涙をこらえながら心の話を聞いていた。
叔母の仁美はそばに寄り添って美知の手を握っていた・

美知は自分の妹と弟である子どもたちの状況について特に詳しく聞きたがった。
「子どもたちはずっと泣いていたようですか?」
「いえ、はっきりとは言えませんが、泣いていたのは最初のところの、どこに来たか分からない不安で泣いていたのと、最後ですね。あの現場に到着してからすべてが終わるまで、かなり短い時間だったようで、子どもたちが泣いていた時間は短かったと思います」
「それからこれも分かれば教えて欲しいんですが、私の妹と弟を手にかけたのは、やはり母親ですか。それとも馬場さんですか」
「はい、2人ともお母さんです」
「可哀そうに・・・」
美知の叔母で、亡くなった赤城静香の妹の仁美がポツリと言った。
「そういえば関係者の写真を持ってきてもらったんですよね」
信子がそう言うと仁美は
「はい、これが静香の結婚式の写真です。親戚関係や友人関係はほとんど写っています。それから、これは静香の家で見つけた写真で、静香が働いていた会社の慰安旅行の集合写真です。この中に静香と心中した男性が写っているはずです。えーっと、あっ、この人です」
仁美が写真の男性を指さすと、写真を覗き込んでいた美知が叫んだ。
「えーっ!この人!」

          (つづく)                     
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