第4話 パラダイス島のヤクザ 第3章
文字数 1,121文字
夜の海は格別だ
昼間の賑わいが嘘のように静かな海
恋人と2人で見られたらロマンティックだろうな…と信子は思った
…でも今、信子の横にいるのはヤクザ
パラダイス島のヤクザ……
信子がいるのはY島の最大のビーチで、おしゃれなレストランが建っている。信子とみなみは先ほどまで山口とここでお酒を楽しんでいて、酔いを醒ますため海を眺めていた。
信子は酒はあまり強い方ではないが、何しろ飲んでいる相手がヤクザなので、かなり飲んではいるのだが少しも酔えなかった。
みなみも同じようにかなり飲んでいるのだが、酒に強いのかもしれない。酔っている割には足取りはしっかりしていた。
「お二人さん。次に行きましょうか」
時計は午後11時を過ぎていたが、山口はまだ2人を解放してくれる様子はない。
信子はやんわりと聞いてみた。
「ねえ山口さん、私たち明日も取材があるので、そろそろこの辺で…」
「えーっ、まだ11時ですよ。この島ではみんな朝まで飲むんですよ。せっかくお知り合いになったのにまだいいでしょう。ねえ、みなみさん」
信子は内心
「ヤクザとお知り合いになりたかったわけではないんですが」と思ってみなみの方を見た。
すると、みなみが突然、大変なことをしゃべり始めた。
「ねえ、山口さん。山口さんって、とても素敵な方で、今夜は美味しいお酒をご馳走になり楽しいお話も聞けて、本当にありがとうございました。いろいろお話を聞いたんですが、ひとつ大事なことを聞いていません。聞いていいですか」
「ええ、なんでもどうぞ」
酔いの勢いもあったのだろう。みなみはズバリ聞いた。
「山口さんのお仕事を聞いていません。お仕事は何をされているんですか?」
信子は心臓が止まるほどびっくりした。
山口も一瞬、困ったような表情をしたが、すぐに笑顔に戻り答えた。
「はい、ヤクザをやっています。暴力団ともいいますね。みなみさん、この答えでいいですか?」
みなみはにんまりして
「やっぱりー! そうじゃないかと思っていたんです。すっごーい!」
意外なみなみの反応に、信子も山口もあっけにとられた。
「ねえねえ、山口さんは幹部なの、チンピラなの?」
「ええ、ここの事務所では一番上になりますね」
当時、ヤクザ映画が人気だったとはいえ、まるでアイドルみたいな扱い。
みなみの無邪気な質問に、山口は困惑しながらも丁寧に答えていた。
信子はその様子を見て、ヤクザであることに変わりはないが、少しは山口を信じてもいいのじゃないかと思い始めていた。
「よかったら、私の仕事場にご案内しましょうか」
山口が事務所へと2人を誘った。
信子は「それは流石にまずいのでは」と思ったが、みなみは乗り気だし、いまさら断りようもない。
「えーい、出たとこ勝負だ!」
(つづく)
昼間の賑わいが嘘のように静かな海
恋人と2人で見られたらロマンティックだろうな…と信子は思った
…でも今、信子の横にいるのはヤクザ
パラダイス島のヤクザ……
信子がいるのはY島の最大のビーチで、おしゃれなレストランが建っている。信子とみなみは先ほどまで山口とここでお酒を楽しんでいて、酔いを醒ますため海を眺めていた。
信子は酒はあまり強い方ではないが、何しろ飲んでいる相手がヤクザなので、かなり飲んではいるのだが少しも酔えなかった。
みなみも同じようにかなり飲んでいるのだが、酒に強いのかもしれない。酔っている割には足取りはしっかりしていた。
「お二人さん。次に行きましょうか」
時計は午後11時を過ぎていたが、山口はまだ2人を解放してくれる様子はない。
信子はやんわりと聞いてみた。
「ねえ山口さん、私たち明日も取材があるので、そろそろこの辺で…」
「えーっ、まだ11時ですよ。この島ではみんな朝まで飲むんですよ。せっかくお知り合いになったのにまだいいでしょう。ねえ、みなみさん」
信子は内心
「ヤクザとお知り合いになりたかったわけではないんですが」と思ってみなみの方を見た。
すると、みなみが突然、大変なことをしゃべり始めた。
「ねえ、山口さん。山口さんって、とても素敵な方で、今夜は美味しいお酒をご馳走になり楽しいお話も聞けて、本当にありがとうございました。いろいろお話を聞いたんですが、ひとつ大事なことを聞いていません。聞いていいですか」
「ええ、なんでもどうぞ」
酔いの勢いもあったのだろう。みなみはズバリ聞いた。
「山口さんのお仕事を聞いていません。お仕事は何をされているんですか?」
信子は心臓が止まるほどびっくりした。
山口も一瞬、困ったような表情をしたが、すぐに笑顔に戻り答えた。
「はい、ヤクザをやっています。暴力団ともいいますね。みなみさん、この答えでいいですか?」
みなみはにんまりして
「やっぱりー! そうじゃないかと思っていたんです。すっごーい!」
意外なみなみの反応に、信子も山口もあっけにとられた。
「ねえねえ、山口さんは幹部なの、チンピラなの?」
「ええ、ここの事務所では一番上になりますね」
当時、ヤクザ映画が人気だったとはいえ、まるでアイドルみたいな扱い。
みなみの無邪気な質問に、山口は困惑しながらも丁寧に答えていた。
信子はその様子を見て、ヤクザであることに変わりはないが、少しは山口を信じてもいいのじゃないかと思い始めていた。
「よかったら、私の仕事場にご案内しましょうか」
山口が事務所へと2人を誘った。
信子は「それは流石にまずいのでは」と思ったが、みなみは乗り気だし、いまさら断りようもない。
「えーい、出たとこ勝負だ!」
(つづく)