第6話 廃校に幽霊が出た 第5章」

文字数 1,248文字

廃校の「幽霊」を捕まえようという張り込みは2夜目になった。

午前0時過ぎ
「何か来ました!」

3人に緊張が走った。

廃校となった分校跡に入ってきたのは軽トラックだった。

軽トラックは原則として2人乗りだが3人乗っており1人は荷台に乗っている。警察の許可を得ないで荷台に乗るのは問題だが、もっと驚いたのは、運転手が缶ビール片手に運転していたこと。明らかに飲酒運転である。

見覚えのある顔もあったので、地域の青年団、といっても若者がいないので40歳を過ぎたおじさん達のようだ。

「こんばんは」

浜田が声をかけると3人は驚いた様子もなく
「こんばんは、ご苦労様です」
と返事した。

「地元の方ですよね。どうしたんですか? 男3人でこんな時間に」

すると3人は
「皆んなで家で酒飲んでいたんだけどね、あなた達が幽霊話で取材に来ているって話になってね・・・ちょっと見に行ってみないかという話になったと言う訳よ」
「取材の邪魔になったようで、すみません。でも、地元のことなんで、やっぱり気になってな」
「もし良ければ、我々も張り込みに参加させてもらえんじゃろか」

「我々にそれを禁止する権限はありませんので、いいですよ」
浜田はそう言って青年団の3人も一緒に「幽霊」が出るのを待つことになった。

「どうですか1杯」
缶ビールを勧められたが
「仕事中ですので」
と言って丁重にお断りした。


「誰かいますね。気配がします」
心が小声で知らせた。

午前2時、教室でランタンのかすかな灯りがポッとついた。
みんなでそっと近づいて窓の外から教室の中を覗き見ると、白い影が2つ見えた。どうやら、お年寄り2人が教室の小さな椅子に座って、持ってきたであろう水筒にお茶を入れながらおしゃべりを楽しんでいるようだった。

青年団のメンバーが中に入ろうとしたが、信子がそれを制止してしばらく様子を伺うことにした。

2人はお茶を飲み見終わると一緒に教室を出て、裏の出入り口から外に出た。出る時に男性が出入り口の鍵を閉めた。どうやら何らかの方法でかぎを手に入れていたのだろう。

暗い山道を帰る2人に気づかれないように、離れて後を追った。

「あの後ろを歩いているのは谷口さんとこのばあさんじゃないかい。認知症があって、最近は徘徊もひどくて家族も困っていると言っていたよ」
青年団の1人が言った。
「じゃあ、ばあさんの手を引いて前を歩くのは?」
もう1人がきいた。
「帽子を深々とかぶっていて顔がよく分からないけど、こちらの方向なら上田さんちがあるから、そこのじいさんかもしれないな」

男性の方は誰だかはっきりしなかったが、青年団の話では、2人は小学校の同級生で仲が良かったと言うので、その男性である可能性は高いと思われた。

谷口さんの家でおばあさんを送り届けた男性は、そのあと姿を消した。


「夜が明けたら本人に直接会って話を聞いてみます。それまでは、はっきりしたことは分かりませんので、今夜のことは内密にお願いします」
浜田は青年団のメンバーに口止して別れた。


「もうこれで幽霊探しは終わりだ!」

    (つづく)



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