第2話 7人の白骨遺体 第2章

文字数 1,534文字

翌日の警察の発表では、7人の身元はまだ不明のままだった。

白骨遺体は死後5年から10年経過しているものと思われた。
7人のうち大人は男性1人女性2人で、年齢は30代半ばから50代。
あと4人は子どもで、女児が3人、男児が1人で、
年齢は女児の1人が小学校低学年、あと3人は2歳から4歳ぐらいとされた。
明らかに身元を示す所持品は無かったが、小学校低学年の女児の下着に
名前らしきものが書いてあるので鑑定中とのことだった。
遺体はきれいに一列に並べて埋められていた。
警察では行方不明者、とくに家族で一度に複数が行方不明になったケースを中心に調べているが、毎年全国で8万人から10万人が行方不明となっていて、調べるのに時間がかかるとのことだった。

警察の発表が終って、信子が支局に上がり原稿を書いていると、
心から「新たな映像を見た。今度は人数が多いようなので助けてほしい」という電話があったのである。
 
「7人の白骨遺体」だと直感した信子は
「心さん、君が見たのはS市C町の山中で昨日見つかった7人の白骨遺体かもしれないね。丁度きのうは私が取材に行ったんだけど。君が映像を見たのはきのうの朝、何時ごろだったの」
「8時前ぐらいでした」
「それなら時間的にも丁度合うね。白骨遺体を見つけたのは天然の山芋を採りに来た近くの男性なんだけど、きのう朝7時ごろから山に入り、山芋を採っていたところ、人間の骨のようなものが土中から突き出しているのを見つけたそうです。
動物の骨かなと思って掘り出してみると、人間のものらしく、他にも何体か遺体がありそうだってので、警察に通報したということでした。ですから、白骨遺体が見つかった時間と君が大勢の人の映像を見たという時間は大体合っている」
「そうですか。その可能性は十分にありますね]

「でも、心さんが住んでいるK県のK市と白骨遺体が見つかったS県のS市では400キロも離れていますよね。そんなに離れていても感じられるんですか」
「信子さん、僕の不思議な現象は距離に関係ないんですよ。遠くても近くても感じることはできるんです。ただ、現場に行くと、より強く感じることが出来ますけどね。ですから、現場に行くことは大事なんです。信子さん、一緒に行きましょうか」
「でも、わざわざ400キロも離れたS市まで来てもらうのは大変ですよね」
信子がそういうと、心は嬉しそうに打ち明けた。
「実は信子さんにはお伝えしていなかったんですが、僕は今、S市に住んでいるんです」
「えっ! K市じゃないの」
「はい、僕のこの不思議な現象が始まってから高校を辞めたのはお話ししましたけれど、母はこのまま僕が引きこもりになってしまうといけないということで、もっと自由の利く単位制の高校を探していたんです。そして、今後のことをいろいろ考えると、母の故郷であるS県に引っ越しした方がいいということで、実は信子さんに会う前に、引っ越しすることは決まっていたんです。引っ越しはおととい済みました。今は信子さんと同じS市内に住んでいます」

信子は心からの電話を受けた後、支局長や浜田と協議して、今後の取材体制を決めてもらった。信子が心の取材を中心に行い、警察関係の取材は浜田が中心になって行うように決めた。浜田は不満そうだったが、心の不思議な能力に関する取材を進めたい支局長の一声で決まった。

取材体制が決まったので、信子は早速、心に電話して現地取材を依頼した。

現地取材は翌日行うことになった。
参加するのは信子と心、それに心の母親の(みさき)の3人だが、
もう一人、重要な助っ人が必要だ、
D交通タクシーの高田慎一郎運転手。
彼がいないと現地まで案内できる自信が信子にはなかった・・・。

                     (つづく)
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