第6話 廃校に幽霊が出た 第7章

文字数 1,262文字

谷口ミエさんが亡くなった。

クモ膜下出血による急死だった。

信子と心はその日のうちに再び柿之木分校跡に向った。

「僕が聞いた谷口さんの声を少しでも早く上田さんに伝えたい」っっl

2人が着いた時にはもうあたりは暗くなっていて、自宅でお通夜の法要が始まっていた。

上田は友人席にポツンと
座っていた。
初恋の人の突然の死に憔悴しきっていた。

法要が終わって外に出てきた上田に信子と心が再び訪れた目的を伝えた。

心が死者の声を聞くことができると話したが、
上田は
「そんなバカな」
と相手にしなかった。
信子が
「信じられない話ですものね。私も最初はそうでした。でも、どうか心くんの話を聞いてください。谷口さんの言葉だと信じられるかもしれません」
そ言って説得し、渋る上田を車の中に案内し、心が話し始めた。

「上田さん、これから私が話す内容は谷口さんの伝えたかったことを私が聞いたものだと思ってください。谷口さんはこのように言っていました。

『あなたの気持ちは子供のころからわかっていました。私も小さいころあなたのお嫁さんになりたいと思っていました・・・ウエシンさん』」

「その呼び名は・・・!」

それを聞いて、上田の目から大粒の涙がこぼれた。
「大丈夫ですか上田さん? 続けていいですか?」
信子が気遣った。
上田は涙を拭いながら
「は、はい大丈夫です。続けてください。・・・実は『ウエシン』というのはミエさんだけが使っていた私のニックネームで、ほかに誰も知りません。そうですね、これはミエさんの言葉だ!」

心が続けた。
「柿之木分校であなたと一緒に小学校時代に戻って楽しんだことも、病気のため途切れ途切れではありましたが、分かっていましたよ。楽しい思い出をありがとう」

「ああ・・・こちらこそありがとう。ミエちゃん」

初恋の人の気持ちが分かり、悲しみに暮れていた上田はとても幸福そうな表情を見せていた。
 
「もう遅いので泊って行ったら」
と言うお誘いを丁重に断り2人は帰途についた。
深夜で山道のため、運転に慣れている信子がハンドルを握った。

分校跡に差し掛かったところで、校舎の方を見ると、教室の窓がこれまで見たことがないほど明るくなっていた。
「心くん。地元の人たちが会合を開いているのかしら?ちょっと覗いてみようか?」
すると心が上ずった声で答えた。
「の、信子さん!あれは・・・ダ、ダメです!」
「えっ!? 心くん。なんで?」
「あれは普通じゃないです! 物凄く強い霊気のようなものを感じます」
「でも・・・」
「信子さん!これだけは僕に従ってください!でないと、あぶないです!早く車を出して!」
信子は心の気迫に押されて車を発進させ、その場を離れた。

心は振り返って車の後方を注視していたが、しばらくすると、ホッとした表情で前を向いた。

「心くん、何があったの?」
信子が聞くと、心は
「何だったかは分かりませんが、とても危険なものを感じて、本能的に逃げなくちゃと思ったんです」

「そう・・・心くん、助けてくれて、ありがとう」
 
その後は何も起きず、2人は無事に支局に帰ることができた。

     (つづく)
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