文化景観としての見沼の形成に関する研究

文字数 1,119文字

國學院大学 文学部史学科 卒業論文

文化景観としての見沼の形成に関する研究

 近年、人間が自然に手を加えて形成した景観が「文化景観」として評価されるようになっている。地球上における自然と人為の空間的研究を任務とする地理学にとって、「景観」は古くて新しいテーマである。

 見沼は、首都圏において広大な自然が人間と関わりながら現代まで残されてきた貴重な文化景観である。しかし後述するように、見沼の文化景観については、学術レベルあるいは一般レベルにおいて、充分に検討し周知されていない部分が少なくないように思われる。また見沼は現地住民のみならず、首都圏の市民、また解釈によっては日本国民の誇りと言っても過言ではなく、その保全は同様の文脈において重要である。
 そこで本研究では、地理学に軸足を置きつつ、自然科学などの援護も得て、見沼の歴史的価値を明らかにする。具体的には、見沼を構成する個々の景観要素のレベルにおける考察を行う。そしてそれによって、見沼における景観保全の意義を導きたい。
 見沼には数多くの景観要素があるが、敢えて選別するならば、低地上の「八丁堤」「見沼代用水」「見沼通船堀」と、台地上の「斜面林」「神社」という五つの景観要素が軸になっていると思われる。これらが歴史の中でどのような役割を演じてきたかを考える。次に見沼の低地・台地を一体的に保全する方策について、「見沼三原則」「見沼田圃の保全・活用・創造の基本方針」などを参照しながら検討する。
 見沼田圃の歴史は現代に至るまで一貫してと深い関わりを持っており、「水と人の文化景観」が全体を通してのキーワードとなるであろう。
 これまでの見沼に関する文献は、当然と言えば当然だが、一般書と専門書のどちらかに偏りがちであった。見沼に興味を持つ人々の多くが一般書に手に取るであろうが、しかしその本当の魅力は専門的な研究を参照しなければ分からない。ゆえに広く歴史地理的空間としての見沼を対象としながら、各種研究成果を踏まえた、つまり一般性と専門性を兼ね備えた地誌が必要とされていると考える。
 本研究の目的を要約すると以下のようになる。

◆ 見沼とその景観要素の歴史的価値を検証する。


◆ 見沼における文化景観の保全・再生を検証する。


◆ 上記2点に基づく「見沼地誌」制作の可能性を摸索する。

 文中では数多くの先行研究を参照しているが、そのままの引用では(ページ)数が多くなってしまうため、筆者による要約が施されている。先行研究の要約と筆者自身の考察の間には極力改行を入れ、区別し易いよう工夫したつもりではある。
國學院大学 文学部 史学科 歴史地理学専攻(自然と情報の科学)

敷地(しきち) (あきら)

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

 地球研究会は、國學院高等学校地学部を母体とし、その部長を務めた卒業生らによって、2007(平成十九)年に「地球研究機構・國學院大学地球研究会」として創立された。

國學院大学においては、博物館見学や展示会、年2回(前期・後期)の会報誌制作など積極的な活動に尽力すると共に、従来の学生自治会を改革するべく、志を同じくする東方研究会政治研究会と連合して「自由学生会議」を結成していた。


 主たる参加者が國學院大学を卒業・離籍した後も、法政大学星槎大学など様々な舞台を踏破しながら、探究を継続している。

ここ「NOVEL DAYS」では、同人サークル「スライダーの会」が、地球研究会の投稿アカウントを兼任している。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色