プレートテクトニクス(大陸移動説・海洋底拡大説)と地震津波

文字数 4,263文字

プレートテクトニクスと地震津波

星槎大学 共生科学部(共生科学専攻)卒業

共生科学士 敷地(しきち) (あきら)

 地形学地球物理学の研究に基づき、大陸移動説から海洋底拡大説を経て解明されているプレートテクトニクスと、それによって引き起こされる地震津波などの自然災害について説明します。本稿の執筆に際しては、法政大学地理学科や星槎大学共生科学専攻で学んだ自然地理学(地形学)の智見を参照しております。

1. 海洋底拡大説

 大陸の形状や古生物化石などから、かつて大陸が繋がっていたという陸橋説は以前から存在したが、フランスの地理学者ペレグリーは、超大陸の存在を想定した先駆者である(1858)。20世紀に入ると、ドイツの気象学者ウェゲナーが、気候学者ケッペンの協力を得て、古生代石炭紀における気候地質の分布を研究し、『大陸と海洋の起源』(1912講演・1915出版)において、古生代から中生代の地形・地質などが大陸を越えて共通する事を根拠に、大陸移動説を提唱した。しかし、これは従来の地球収縮説と対立し、特に大陸移動の原因を地球物理学的に説明できなかったため、当時の学界ではほとんど支持されなかった。

 大陸移動説が再評価される契機は、1960年代以降の海洋底拡大説である。海洋底拡大説は、古地磁気学や微化石によって証明する事ができる。例えば、大西洋の海洋地殻から産出する微化石の年代は、大西洋中央海嶺の海嶺軸からの距離に比例し、海嶺から離れるほど古くなっている。

 また、海洋地殻の玄武岩から、当時の地球磁場(古地磁気)を反映した残留磁化を取得すると、地磁気の逆転(数十万~数百万年)を記録した海底地磁気縞の模様を示し、その方向は中央海嶺に平行している。しかも、海洋底の年代は、中央海嶺から離れるほど古くなり、例えば東太平洋海嶺(海膨)から東西に拡がる海洋底の年代は、日本海溝の周辺で世界最古になっている。加えて、各大陸で観測された磁極移動曲線は、大陸が移動したと仮定する事で一致する。これらの事実は、海洋底が中央海嶺を中心に、両側へと拡大していると解釈する事で説明でき、その過程で、地磁気の変動を岩石に記録して来たと考えられる。このように、海洋地殻の古地磁気年代を分析する事で、海洋底拡大説を地球物理学的に証明できる。

 海洋底拡大説の証明によって、大陸移動説は地球科学的検証に耐え得る形で復活し、古生代ペルム紀には一つであったパンゲア超大陸が、北部のローラシア大陸と南部のゴンドワナ大陸に分裂し、中生代を経て現在の6大陸などに分かれたと考えられている。また、大陸移動・海洋底拡大のメカニズムに関しては、マントル対流説プレートテクトニクスプルームテクトニクスによる説明が試みられ、近年は上田誠也氏らによって、海洋プレートが沈み込む際の「スラブ曳力(えいりょく)」が、原動力として重視されている(宮下・横山2006)。

 地球表面の岩石圏を構成する、厚さ約100kmのリソスフェアは、10枚以上のプレートに分かれて移動している。新生代の現在において、複数のプレートが接触している境界は新期造山帯(変動帯)と呼ばれ、環太平洋造山帯アルプス・ヒマラヤ造山帯が挙げられる。変動帯では、衝突したプレートの岩石が褶曲し、盛り上がって山地・山脈に隆起したり、逆に沈降して平野が形成されたりしている。また、岩板が破壊されると地震が発生し、岩板の溶融は火山の原因であり、それらは人類に対して自然災害を引き起こす。

火山 海洋プレートが大陸プレートに衝突すると、比重が相対的に重い(密度が高い)海洋プレートが沈み込む(海溝)。その際に水(含水鉱物)と混合し、岩板の融点が下がって溶け易くなる。やがてアセノスフェアに温められた岩板は溶融し、液体のマグマに状態変化する。マグマは固体岩石より比重が軽いので上昇し、中に含まれる水分(火山ガス)が激しく発泡し、その圧力で地上に穴(噴火口)を開ける。これが、火山の噴火である。但し、火山活動が盛んな変動帯には、温泉や地熱発電という恩恵もある。

地震 プレート同士が接触・衝突していると、その圧力に耐えられず、マグマ化する前に岩石が壊れてしまう事も少なくない。破壊された面を断層と呼び、その衝撃波によって周囲を揺らす振動が地震である。地震は甚大な災害を引き起こすが、他方で地震波は、地球内部構造(地殻・マントル・外核・内核)の解明に貢献している。

2. マグニチュードと震度

 マグニチュード(M)は地震の規模、即ち断層運動のエネルギー(E)を表す指標値であり、対数で算出される。その基本的な式は、

log10E=4.8+1.5M

で表される。ここで、Mが1増加すれば右辺は1.5増加し、Eは約30~32倍になる。同様に2増加すれば、約1000倍になる。M5のEは、広島に投下された原子爆弾にほぼ相当する(宮下・横山)。

 Mの算出法は複数存在し、従来は標準地震計の最大振幅に基づくリヒターマグニチュード(Ml)が使われて来た。これは、米国の地震学者リヒターが考案したものであり、その式は、

Ml=log10A

で表される。Aは、ウッド・アンダーソン型地震計で観測される最大振幅であり、これを震央距離100kmの値に換算した常用対数である。これに対して最近では、地震の正体が断層運動である事を踏まえ、その規模をより精密に求めようとするモーメントマグニチュード(Mw)が使われている。
その式は、

Mw=(logMo-9.1)/1.5Mo

になる。ここで地震モーメント(Mo)は、「断層の面積(長さ×幅)」「変位(ずれ)の平均量」「岩石の剛性率」の3要素を乗法した積である。これらのほかに、「表面波マグニチュード」の計算方法も開発されている(宮下・横山)。

 震度階級は、観測地点における地震動の大きさを、段階として表す指標である。世界共通の単位としては統一されておらず、複数の震度階級が存在し、どれが採用されているかは地域によって異なる。現在、日本列島で我々が「震度」と呼んでいるのは、気象庁震度階級である。日本は地震学発祥の国であり、英国から来日していたジョン ミルンらは、1880(明治十三)年の横浜地震を機に、世界初の地震学会を設立し、続いて物理学者ユーイングは水平振り子の地震計を発明し、更に房吉(ふさきち)大森式地震計によって初動の観測に成功した(宮下・横山)。こうした中で、1884(明治十七)年に気象庁震度階級が成立したが、当時は体感や物体の揺れ・倒壊などを基準にしていた。

 1995(平成七)年の兵庫県南部地震を機に、加速度を計測する震度計の整備が進められ、翌1996(平成八)年には、計測震度計に基づく客観的な階級が採用されると共に、震度5及び6をそれぞれ強弱に分割し、0から7の10段階になった。2008(平成二十)年には、解説表が改訂された。マグニチュードが、観測者の位置にかかわらず、地震ごとに一定の値を示すのに対し、震度は観測地点に応じて変動し、国・地域によって階級の基準も異なっている。

3. 津波と風波

 海洋などで見られる水上の波動は、風のエネルギーによって発生する風波(風浪)である。波は進行方向に向かって動いているように見えるが、正体は円軌道を描いた回転運動であるため、理想的な条件下においては、水上に浮かんでいる物体が、風波によって「流される」事は無い。この点で、海水自体が長距離を移動し、塩分や熱を運搬する海流とは異なっている。風波は海岸に対して浸蝕作用(海蝕・波蝕)を及ぼし、海蝕崖などの地形を長期的に形成する。

 同じ水面の波動でありながら、風波とは大きく異なる様相を示すのが津波である。津波は、海底を震源とする地震に伴って発生する事が多いが、これは、断層運動によって海底が隆起・沈下(沈降)し、それによって海水を変位させて波源を形成するからであり、逆断層の上盤が隆起する場合が代表的である。津波の特徴として、波長が非常に長く、風波の100~1000倍に達するという点が挙げられる。そのため、海岸から更に内陸まで流入し、地上の物体に極めて大きな力学的作用を及ぼす。よって、ヒトが居住していた場合、地震災害の一つを構成する事になる。また、津波は波長だけでなく周期も長く、風波の10~100倍である(高潮・潮汐よりは短い)。1波長が過ぎるまでに長時間を要するため、その間に被害を拡大させる。

 津波の速度は、水深と連関する。波を構成する水は、底付近では往復直線運動をするため、摩擦力による抵抗を受けて速度が遅くなる。そのため、津波の速度は浅くなるほど遅くなる。ここに、後方からの速い波が追い着くため、海岸に近付き浅くなるほど、波高が高くなる。特に、湾奥に向かって狭く浅くなる三陸海岸などのリアス式海岸では、急激に波高が上昇し、極めて甚大な被害を生じさせる事は、2011(平成二十三)年の東北地方太平洋沖地震が鮮明に示した。

 津波は、地震以外の要因で発生する事もある。例えば、1792(寛政四)年の島原大変肥後迷惑は、雲仙岳眉山(長崎県)が噴火に伴う火山性地震で山体崩壊を引き起こし、その岩屑流が有明海に流れ込んで津波を発生させ、対岸の肥後(熊本県)に到達して被害を及ぼす火山災害になった。このほか、海底火山の噴火や、極地における氷床崩壊から津波が発生する事もある。

参考文献

◆ 水野一晴『自然のしくみがわかる地理学入門』(ベレ出版2015/04/25)


◆ 大木聖子『地球の声に耳をすませて 地震の正体を知り、命を守る』(くもん出版2011/12/19)


◆ 高橋日出男・小泉武栄『地理学基礎シリーズ2 自然地理学概論』(朝倉書店2008/01/20)


◆ 宮下 敦・横山一己『ゼミナール地球科学入門 よくわかるプレート テクトニクス』(日本評論社2006/09/25)


◆ 島崎邦彦・木村龍治『地学Ⅰ 地球と宇宙』(東京書籍2006/02/10)


◆ 杉谷 隆・平井幸弘・松本 淳『風景のなかの自然地理 改訂版』(古今書院2005/12/01)


◆ 和田純夫『宇宙創成から人類誕生までの自然史』(ベレ出版2004/03/25)


◆ 三井嘉都夫『地理学概論 自然地理学概論1』(法政大学通信教育部1996/04/25)


◆ 岡山俊雄『自然地理学 地形』(法政大学通信教育部1976/10/30)

2021/06/22

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登場人物紹介

 地球研究会は、國學院高等学校地学部を母体とし、その部長を務めた卒業生らによって、2007(平成十九)年に「地球研究機構・國學院大学地球研究会」として創立された。

國學院大学においては、博物館見学や展示会、年2回(前期・後期)の会報誌制作など積極的な活動に尽力すると共に、従来の学生自治会を改革するべく、志を同じくする東方研究会政治研究会と連合して「自由学生会議」を結成していた。


 主たる参加者が國學院大学を卒業・離籍した後も、法政大学星槎大学など様々な舞台を踏破しながら、探究を継続している。

ここ「NOVEL DAYS」では、同人サークル「スライダーの会」が、地球研究会の投稿アカウントを兼任している。

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