第21話 ザアカイなる男。

文字数 2,481文字

ルカ19:1-10に〈ザアカイ〉なる男の話が出てくる。
個人的にとても愛着のある人物なので取り上げてみよう…。


 イエスの一行はエリコ領に入った。
 町の通りを進み行かれる…。

 丁度、その場に〈ザアカイ〉という名の男が居合わせた。
 取税人の頭で、金持であった。
 彼は、イエスとはどんな人間なのか見たくてしょうがなくなった。

 しかし彼は背丈が低く、群衆に阻まれて、通りの様子がぜんぜん分からない。
 それで一計を案じて、前方へと駆けて行った。
 そして一本の桑の木に登り、その上に待機して待った。

 イエスらがやがてこちらへとやって来るのは確かである。

 イエスはこの地点に至り来しとき、見上げて、
『ザアカイ、急ぎおりてこよ、今晩われは汝の家を宿にしよう』と言ひたまひし。
 ザアカイ急ぎおり来て、喜びてイエスを迎ふ。

 この出来事を遠巻きに見ていた人々は、
『かれは罪人の家に入り、客となるらんとな!?』
 と驚き呟きに言ふたり…。

〈略〉

『今日、救いが、この者の家にきた。この人もアブラハムの子なのだから。
  それ、人の子の來れるは、失せたるを尋ね、探しだし、そして救はんが爲なり。』


[意訳:byMe]


これ、有名がエピソードなんです。
よく神父さんが説教で取り上げられている。
ここからは個人的な思い入れを交えての説明を

させて頂きます。

まず〈ザアカイ〉、「 この人物は面白い!」。

歳は表記されていませんが、四十代後半から五十代の壮年の男。
取税人の頭の一人で、さぞ老獪かつ強面の人間であったことでしょう。
酸いも甘いも達者に存分に、嚙み分けてきた人。

特別な要素となるのが「この人間が”チビ”であったこと!」。
かく言う話者もチビ 162 なのだ。だからピンとくることもある。
この境遇における「辛」も「悔」も「損」も「哀」も大いに理解できる…。

多分この方…幼少のみぎりは「猿」とあだ名され、
落ち着きのない、やけに元気な子供であったはず。
好奇心の塊で、野山を遊び場としていた…。

そんで、噂に伝え聞く、あのイエスの来場である。
遠く古より救世主の出現に関しては預言がある。
ズバリ、

と、世に囁かれている存在である!。

「めっちゃ好奇心が掻き立てられましたわ〜」
「居ても立っても居られんようになりましてん」    
「仕事のことなんかもう今はもうええー」

彼、ザァカイは実行力のある男であった。
Get the job done がポリシーの男であったに違いない。
目的の達成のためには、手段を選ばない。

機転を利かせて、先回りをすることを即座に決断する。
そして前方へと駆け出して行った。

そして見定めたるは、登るに易く、留まるに最適な木である。
丁度通りに向かって大枝が伸びている。
この上ならば、完全に正面から全てを見物することができるではないか!。

ハイ…この辺で十分かと思います。
いい大人がですよ〜、通り沿いの木に登って見物するんですよ〜。
なんか可笑しくない?。

中々にできない。
足ブランブランさせながら待ってるw。
ここにザァカイの人物像を深掘りすることができる。

彼は”ヤンチャ”な”おっさん”なのだ。
良く言えば「天真爛漫」(*)。

*飾らず自然のままの姿があふれ出ているさま。
 生まれつきの素直な心そのままで、明るく純真で無邪気なさま。
「天真」は純粋な性格、「爛漫」は自然のままに輝き現れる様子。

そして、かつ、老獪で非情なる徴税人でもある。
この二重性が「救われない境遇」なのだ。

状況的に、彼は裏切り者になる。
侵略者(ローマ)側に寝返った人間である。
更には、同胞の富の収奪する執行官になっている。

仲間からすれば、感情的に蔑むべき/憎むべき/罪人となるのが当然。
体制側に組することから、悪どい蓄財も行なってきてる。
彼からははっきりと「騙しとった」との言葉も出ている…。

ザァカイは世に染まり、取り込まれてしまっていた。
彼にとって人生の展開は不幸な形となっていた。
だが、これは彼だけの責任ではない!。

未だ彼の本質(魂)は未だ健全な状態を保ってはいる。

だから、イエスは彼を”検知”できた。
彼の「あの行動」があったればこそ。
救いの到来として、イエスは彼の家に泊まることを選ばれる。

再掲:
『今日、救いが、この者の家にきた。この人もアブラハムの子なのだから。
  それ、人の子の來れるは、失せたるを尋ね、探しだし、そして救はんが爲なり。』

取り巻きに、そこにある本質は誰も分かりゃしない…。

世間には感知できないドラマなのさ…。

救いは、一人一人、個別に、起こり得ることなのさ…。

完全にプライベートなできごと…。


ザァカイは喜びの余り、えらいことをこの後口走る!。
これについては原典に当たってください。

できんのだろうかね?…w。

どの説教者も余り強調してくれないポイントなので書きました。

おしまい。


追記:

彼の優秀なるはその情報力からみることができる。
ある種の噂に、なぜにか敏感に、過剰と思えるほどまでに反応していた。
その時代にはネットもないわけだから、ヒトの噂を通してでしか情報は拾えない。
噂におけるイエスの話しに、彼はえらく反応してしまっていた。
それが、救世主神話に関わるものであるかもしれなかったからだ。
それに対してムクムクと、自身のこころの内にて立ち上がってくる、
ある種の思いが、感情が、そこにはあった。ここが肝だったんだろう…。
彼は罪人としてのステイタスになる。
それでも、本来的には、善人のままでありえてた…。
それはただ、世に染まって、それからの要請において、封じられてしまっていただけのこと。

彼のその本質は、未だ健全なままであった。あり得てた。
なので、その、”あっからさま”に、単純なるのまま、
ある意味それはバカをも意味するのだが、
イエスに宣ったその通りに、即時、速攻で、こと(散財)を行っていたと思われる…。

ザアカイの名誉の為に、これ、入れました。




*チビはね〜根性だけはあるねん。養われるねん。w
*イエスからは丸見えだったのでしょう。
*世間(社会)と死に打ち勝つイエスの到来がどうしても必要だった。これが救い…。


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