第47話

文字数 1,234文字

 伊藤勇雄さんという偉人の存在を初めて知れた。大山さんご夫妻のご招待を受け、夕食をご馳走になり、勇雄さんの1968年2月付けの墨で書かれた色紙も見せていただけた。旦那さんは、印刷だろう、とおっしゃっていたが、自分が見るに直筆に想えてならない。奥さんも、直筆ですよね、とおっしゃられていた。彼は日本で数か所の開拓地を成功させ、齢69にして、理想郷を夢見、パラグアイへ移住した凄い人である。
 
 その成し遂げたことを一言で表せば「シヴィライゼーション」であろう。ユートピアとは原義を辿れば「何処にもない場所」のことである。その「No where」を「Now here」にすることが、「理想郷を実現すること」の内実だと云われている。

 彼の人生は「冒険家」「理想実現夢見人」であると感じた。「文明化」を偉大なことである・素晴らしいことであると感ずる一方、他の視点からすれば、自然破壊、災厄を齎した人物、である。「文明化」の災厄の最たるものは「所有」という観念・概念・権利意識・排他主義的傾向であるように想われる。この意味をわかりかねるあなたは、何故、筆者がそんなことを主張するのか・しているのか、熟考してみて欲しい。

 物事はひとつの観点だけではなくして、様々な視点から、色々な景色・景観を見てみることがる肝要である、そう感じる。何故かはわからぬが、そう切に想い込んでいる。

 本当に美味しいご馳走ばかりでとてもご夫妻には感謝している。本日は安息日ということで、無教会派の敬虔なる信者であるご夫妻にお教えいただき、ヘブライ語で讃美歌を歌ったり、祈りを捧げたりした。筆者の聖書を読んでの解釈は、ヤハウェ(エホバ)は当時最強の神であり、他の者は弱かったので悪魔と見做された、というものである。

 別に宗教的信仰も保持してないが、(神の存在を)肯定も否定もせず、神を容認しているし、無神論も容認している。謂わば無節操、だけなのかもしれぬ。「なんでもありなんだ。モハメッドもアリなんだ」──。

 宗教が「地獄」のことを説いているのは、元気すぎる人々が(性)犯罪を行うのを抑止するため、であると聴いたことがある。自分には「地獄」の概念は桎梏でしかなく、邪魔なもの、無用な観念、としか感じられなくて、ただの脅しだとしか想えなかった。だから、そのことを知った時、とても納得出来、「まあ、それならしょうがないか」と感じた。

 無教会派で誰もが知っている有名な人物と云えば、「2つのJ」や「不敬罪」で有名な内村鑑三であろう。大山さんご夫妻は、彼の弟子である手島郁夫氏の薫陶を受けられて、パラグアイに渡られたらしい。六男一女を儲けられ、お子さん方は南米各地や日本などで活躍されておられるとの由。旦那さんは、涙声で、食前のお祈りを捧げられておられた。

 「毎週土曜にシャロームやっておりますので」と旦那さんに好意的に遇せられ、とても感謝し、大山さんが車庫を作られる時には、お手伝いすること、などが愉しみである。
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