番外編・114日目

文字数 892文字

 昨日佐伯さんから相談を受けた。

 神社や寺の御守りが家の押し入れから出てきたそうだが、どう処分していいか困っているという。

「神社に行って返すのもちょっと怖くてね」
「だったら私が返して来ましょうか?」

 という事で私が代わりに佐伯さんから御守りを受け取った。紙袋いっぱいある。ちょっと引いたが、自分も似たようなものなので何とも言えない。

「という事で佐伯さんから御守り預かったんだけど、こういうのってどうやって処分すればいいの?」

 会社の帰りに悠希さんのカフェに行き聞いてにた。自分は御守りの類は普通にゴミ箱に入れて捨てたが、それで良かったかはわからなくなった。

「うん、御守りは普通に捨てて大丈夫だよ」
「そうなんだ」
「むしろ家にとって置くのが良くないよ。捨てても祟りとか無いから」

 悠希さんは紙袋を受け取り、中の御守りを確信していく。中には安産御守りとして、性的なものを象ったものもあった。私も悠希さんも思わず顔を顰める。

「日本の神社は意外と性的なんだよなぁ。そう思うと別にありがたい感じとかパワースポット感薄れるね」

 ため息をつきながら、悠希さんは御守りの数々をゴミ箱に捨てていった。

「もしかして日本の神社にいる神様っぽい何かも悪霊なの?」

 ちょっと疑問に思っていた事を聞いてみた。

「そうだよ。しめ縄は蛇の後尾を象ったものだし、鐘もバアルでしょ。除夜の鐘の音がうるさいっていうクレームが問題っていうニュースを見た事あるけどさ、普通はあんまり良い音には聞こえないはずだよ。別に鐘の音で罪を清める事なんてできないし」

 そんな事を聞かされるとスピリチュアル好きだった時の幻想がガラガラと崩れていく。

「神社の御守りもカルトの霊感商法と区別できる人いる?野瀬ちゃんはどう思う?」
「確かに。御守りで願い叶った事ないしね。神社の御守りはみんな持ってるから、カルトよりは胡散臭く見えないだけだね」
「神社の御守り付けてる車の方が、交通事故に遭う確率高いらしいよ。これも偶像崇拝の呪いだろうね」

 私はため息をつきながらコーヒーを啜る。

 こうして御守りを捨てたわけだが、私も佐伯さんも何も悪い事は起きなかった。


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登場人物紹介

野瀬青花

崖っぷちアラサー女子。

ひょんなことからスピリチュアルに騙されてしまう。

悠希

カフェ店長でクリスチャン

佐伯さん

青花と同僚。女子力高めでスピリチュアル好きな主婦。

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