シノ・フレアの歴史クラス
文字数 4,639文字
この子たちは、今から12年前の丁度今日、人工胎内システムから取り出された。
しかし、フレアは、子どもたちを番号で呼んだことはない。ここ、クローン人間養育所の母親役、マザーたちが子どもたち一人ひとりにつけた愛称で呼んでいる。
でも、今日お話しするのは、ちょっと難しい話です。先生はできるだけ分かりやすく伝えるつもりだけど、途中で分からなくなったら、いつでも、手を挙げて質問してね。
それから、難しい話なので、すぐに分からなくても、全然恥ずかしくないですよ。
あっ、でも、知らなくても、全然恥ずかしくないですよ。養育所では、まだ一度も教えていないことです。
今から120年前に、びっくりするような出来事がありました。どんな出来事か、知っている人はいますか?
(心の中で)一番手がチカちゃんでなくて良かった。勉強熱心で物知りのチカちゃんが真っ先に答えると、他の子たちが白けてしまうことがある。「出来る子」に伸び伸び活躍させる授業があってもいいけど、この授業は違う。クラスのみんなに関心を持って、ある程度以上は分かってもらいたい。
(何か言いたがるチカを目で抑えて)日本の人たちは、むかしは、山や川や草木や動物たちと、とても仲良く暮らしていました。そういう暮らしの中で、いろいろ不思議なことが起こりました。それを見たり、それに巻き込まれたりした日本の人たちは、後から生まれてきた日本の人たちに、見たこと、巻き込まれたことを話して聞かせました。
チカちゃん、地球の山・川・草木・動物がどんな意地悪を思いついたか、みんなに説明してあげて。
ヒドすぎる!
地球に文句言ってやる!
チカが立ち上がった。
でも、普通の人間は変身ができない。だから、変身する力を持ったクローン人間にお願いするのです。
でも、別の宇宙の生き物なら、飛ぶことができます。だから、地球人のクローンではなくて、ラムネ星人のクローンが日本の「むかし、むかし、あるところに」飛ぶことになったのです。
沈黙を破ったのは、ケンタだった。
ボクたちも、精いっぱいやります!