第16話 茜の告白
文字数 1,560文字
宿泊室に入った小梅が時間を持て余していると、ドアにノックの音がした。
小梅がドアをあけると、茜が立っていた。
あの子が変わってしまった理由に、心当たりみたいなものがあるんです。
あの子、7歳の時に、自分の「先祖クローン親」がわかったって言ったんです。それから、あの子は、急に、暗くなって、独りで思いつめることが多くなって・・・・・・そのうち、友だちとケンカするようになって・・・・・・
茜さんは、沙紀に、その先祖は誰なのか訊いたのですか?
次の年、私は「くすのきの里」を卒業して「機構」に入ったので、沙紀さんとは会う機会がなくりました。
それが、私が「機構」に入って11年目、ちょうど、「乙姫」役をつかんだ時に、沙紀さんから声をかけられたんです。
私は、機構に入ってから、主役、脇役、動物役、全部について、同じくらい訓練されました。つまり、欠員補充用のオールラウンダーだったのね。
それで、思ったの。どうせ、オールラウンダーなら、主役の座を奪って、定着してやるって。
沙紀さんは、18歳で「機構」に入ったとたんに、「乙姫」、「かぐや姫」を射止めて主役組で歩き始めました。
その沙紀さんが、11年目でやっと主役の座を勝ち取った私に、仲間にならないかと声をかけてきたのです。
もしかしたら、それから10年間、休む間もなく仕事を割り当てられたのではないですか?
今、休職しているのも、そのせいではありませんか?
「断るのは茜先輩の自由だけど、この誘いのことを、誰かに話したら、ただではすまない。これは、私の個人ビジネスではないのだから」
「茜先輩が主役をやりたいのなら、これからもやれるけど、楽にやっていけるとは、
思わないように」
確かに、この10年間、私には、主役、脇役、動物役、全部が回ってきて、働きづめに働いてきました。根をあげたら、沙紀さんとその後ろにいる悪党どもに負けてしまうような気がして、頑張ってきたんだけど、とうとう・・・・・・