第4 小梅、浩太がワイロを払うのを止める
文字数 1,404文字
美鈴が小梅を訪ねてきた翌日の夜、ひと気の絶えた、大道具倉庫の中。
浩太とアユがヒソヒソ話をしている。
半分の5万クララが、やっとです。もう少し、待ってもらえませんか。
あんたが『浦島太郎』を演じるのは、あさってだ。もう、待てないね。
なんだったら、あたしが貸してやろうか?
あんた、あたしのタイプだから、利息は、月30パーセントにまけてやるよ。
月30パーセントの利息だなんて、そんな、無茶苦茶な・・・
あんた、『浦島太郎』で、失敗してもいいの?『桃太郎』、『一寸法師』、『聞き耳頭巾』と、重要な昔話を3つも続けて成立させて、勢いに乗ってる所だろう。
『浦島太郎』を成立させたら、大スターの仲間入り。でも、しくじったら、また、しがない脇役生活に逆戻りだよ。『舌きりスズメ』のその他スズメに戻って、接待のご馳走の盗み食いでもするかい?
ボクは、ここで失敗するわけにはいかない! ここで成功してビッグになって、ボクを馬鹿にしてた連中を見返してやるんだ!
アユちゃん、ちょっと見ない間に、ずいぶん、ワルになったね。でも、あんたには、こんな大それたことを思いつく度胸は、ない。
いったい、誰の手先になってるんだい?
お久しぶりです、小梅先輩。こんな所で、何をしてらっしゃるのですか?
今の場面を録画させてもらった。あたしは、職員食堂の娯楽委員なんだよ。あたしが、この録画を職員食堂のスクリーンで流したら、どういう騒ぎになるだろうね?
そんな事をしたら、先輩だって、タダではすみませんよ。
そうだろうねぇ……お互いにダメージを受けるってわけだ。でも、あんたが、この坊やからワイロを取り立てるのを止めれば、あんた達も、あたしも、傷つかない。それを考えたら、10万クララの儲けを失うくらい、安いもんだと思うよ。
チッ、余計な邪魔が入った。浩太、あんたが『浦島太郎』でしくじってスターへの道が閉ざされたら、このおせっかいなオバチャンのせいだから、オバチャンを恨むんだね。
おっと、待った。今度の『浦島太郎』が不成立になって、それが、浩太のせいにされたら、あたしは、この映像を流すからね。
あんたのボスに言っときな。今度の『浦島太郎』は、必ず、成立させろって。そして、二度と、浩太に手を出すなって。
小梅先輩、今日のところは、先輩の顔を立てておきますが、このまま、タダですむとは、思わない方がいいですよ。
あんたたちが、どんな汚い手を使ってくるか、楽しみにしてるよ。
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