第4話 第10章
文字数 1,387文字
翌週、編集部に赴くと意外な展開となる。
「青木先生、これ雑誌の記事にしては勿体無い出来なんですよ、どうでしょう、本にしてしまうのは?」
「そうかな?」
「ええ。編集長も絶賛でして。上に掛け合ってみるそうですよ」
「まあそうなったら光栄だな。」
「でですね、そうなるとーウチの記事が一本空いちゃうんですよねー」
「は… まさか、すぐに別の記事書け、と?」
「流石先生! いや、先生ならすぐにピュピュッと」
貴和子が嬉しそうな表情で
「では先生、当社にて軟禁させて頂きますね! 山の上、で宜しいですか?」
「マジか… これから?」
「ええ。天ぷらでも食べながら記事の相談致しましょう」
本が出版されるなんて、何十年ぶりの事だろうか。期せずして僕は舞い上がってしまう。直子に教えたらどれだけビックリするかな。彼女に伝えたら…
京都の土産を編集部と貴和子に渡し、僕らは歩いて御茶ノ水へ向かう。貴和子は僕からのお土産を大事そうに胸に抱えながら
「写真よりも挿し絵を多くした方が良いかもしれませんね。私、この作品にピッタリの挿し絵描ける人知っていますよ。でも先生がこんな作風でお書きになるなんて! これからはずっとこの路線でどんどん書いていきましょう、そうですね、年に四本はー」
なんて彼女が一方的に喋っているうちに天麩羅屋に到着し、カウンター席に着く。
食後、編集部が取ってくれた部屋で記事の執筆を始める。貴和子はそれを見届けて退社後にまた来ます、と言って出て行く。
記事は今回の京都取材を第三者の視点から書いてみる。言うなればメイキングオブーと言う奴である。
部屋のインターフォンが鳴る。気がつくと夜は八時だ。記事は大方書き終わり、あとは校閲するだけである。
「集中していましたねー、もう出来ましたか!」
「うん、もうこんな時間なんだね」
「勿論… 泊まっていかれますよね…」
「でも、もう殆ど書いちゃったから今日は帰ろうかな?」
貴和子が僕の胸に飛び込んでくる
「帰らないで。直ちゃんには私から連絡するから!」
先週の事があり、僕も少し気まずかったので
「わかったー」
堀向のうどん屋で夕食を済ませた後、ホテル近くのバーで二人で軽く祝杯を挙げる。
「これで『青木マサシ』復活ですね。先生、おめでとう」
「そう、なるのかな。売れるかどうか…」
「売れますよ! と言うか、私が売ります! 絶対売りまくりますから!」
「頼もしいなあ。貴和ちゃんも、なんかあの頃の感じになってきたね。」
僕の処女作を大ヒットさせた頃の彼女は、本当に光り輝いて見えたものだった。
「私が居ないと先生はダメなんですからねー」
それ程酒に強くない貴和子は既に酩酊状態だ。
スマホが振動する。画面にはMが表示される。貴和子がカウンターに突っ伏しているのを確認して画面を開く。
『先週は楽しかったよ。次は何処に連れて行ってくれるのかな?』
思わず顔がニヤけるのを感じる。
『僕も楽しかったよ。そうそう、あの時書いた記事が本になるかも知れない!』
『えーーーすごーい! 本当に作家さんと旅行したんだ私!』
『これもまきちゃんのお陰だよ。出版楽しみにしていてね』
スマホをしまい、貴和子の肩を軽く揺らす。バーを出てホテルへ向かう。フラフラして一人ではちゃんと歩行出来ない程だ。あの人はこうはならないよな、街明かりで明るい夜空を見上げながら僕は彼女に会いたくなっていた。
「青木先生、これ雑誌の記事にしては勿体無い出来なんですよ、どうでしょう、本にしてしまうのは?」
「そうかな?」
「ええ。編集長も絶賛でして。上に掛け合ってみるそうですよ」
「まあそうなったら光栄だな。」
「でですね、そうなるとーウチの記事が一本空いちゃうんですよねー」
「は… まさか、すぐに別の記事書け、と?」
「流石先生! いや、先生ならすぐにピュピュッと」
貴和子が嬉しそうな表情で
「では先生、当社にて軟禁させて頂きますね! 山の上、で宜しいですか?」
「マジか… これから?」
「ええ。天ぷらでも食べながら記事の相談致しましょう」
本が出版されるなんて、何十年ぶりの事だろうか。期せずして僕は舞い上がってしまう。直子に教えたらどれだけビックリするかな。彼女に伝えたら…
京都の土産を編集部と貴和子に渡し、僕らは歩いて御茶ノ水へ向かう。貴和子は僕からのお土産を大事そうに胸に抱えながら
「写真よりも挿し絵を多くした方が良いかもしれませんね。私、この作品にピッタリの挿し絵描ける人知っていますよ。でも先生がこんな作風でお書きになるなんて! これからはずっとこの路線でどんどん書いていきましょう、そうですね、年に四本はー」
なんて彼女が一方的に喋っているうちに天麩羅屋に到着し、カウンター席に着く。
食後、編集部が取ってくれた部屋で記事の執筆を始める。貴和子はそれを見届けて退社後にまた来ます、と言って出て行く。
記事は今回の京都取材を第三者の視点から書いてみる。言うなればメイキングオブーと言う奴である。
部屋のインターフォンが鳴る。気がつくと夜は八時だ。記事は大方書き終わり、あとは校閲するだけである。
「集中していましたねー、もう出来ましたか!」
「うん、もうこんな時間なんだね」
「勿論… 泊まっていかれますよね…」
「でも、もう殆ど書いちゃったから今日は帰ろうかな?」
貴和子が僕の胸に飛び込んでくる
「帰らないで。直ちゃんには私から連絡するから!」
先週の事があり、僕も少し気まずかったので
「わかったー」
堀向のうどん屋で夕食を済ませた後、ホテル近くのバーで二人で軽く祝杯を挙げる。
「これで『青木マサシ』復活ですね。先生、おめでとう」
「そう、なるのかな。売れるかどうか…」
「売れますよ! と言うか、私が売ります! 絶対売りまくりますから!」
「頼もしいなあ。貴和ちゃんも、なんかあの頃の感じになってきたね。」
僕の処女作を大ヒットさせた頃の彼女は、本当に光り輝いて見えたものだった。
「私が居ないと先生はダメなんですからねー」
それ程酒に強くない貴和子は既に酩酊状態だ。
スマホが振動する。画面にはMが表示される。貴和子がカウンターに突っ伏しているのを確認して画面を開く。
『先週は楽しかったよ。次は何処に連れて行ってくれるのかな?』
思わず顔がニヤけるのを感じる。
『僕も楽しかったよ。そうそう、あの時書いた記事が本になるかも知れない!』
『えーーーすごーい! 本当に作家さんと旅行したんだ私!』
『これもまきちゃんのお陰だよ。出版楽しみにしていてね』
スマホをしまい、貴和子の肩を軽く揺らす。バーを出てホテルへ向かう。フラフラして一人ではちゃんと歩行出来ない程だ。あの人はこうはならないよな、街明かりで明るい夜空を見上げながら僕は彼女に会いたくなっていた。