第6話 第1章

文字数 599文字

 四年後。

「それぐらい飛びついて取れや! 根性見せんか、根性!」

 全く近頃の高校生は情けない。百本ノックくらいで泣きべそ見せるとは。根性が足りない。気合が足りない。足りないなら僕が付け足してやるしかあるまい。

「あと五本! 取れるまで練習終わらねえぞっ いくぞお!」

 最後は暑さでぶっ倒れてしまった。ったく、いい大人が熱中症とはな。
「おいっ 水でもぶっかけておけ! 次、ハルト! いくぞっ」

 一時間後。熱中症で日陰で休んでいる四人を除いた十五人に坂ダッシュ百本を命じる。マジかよ、と吐き捨てた(呟いた)テツのケツを思いっきり蹴っ飛ばすと、テツは悲鳴を上げて坂へと走り出す、他のメンバーも慌てて走り出す。

「あー、根性なさすぎて、やってらんねー」
 ベンチに座るとマネージャーの理央が冷たいポカリを持ってきてくれる。
「にしてもコーチ、マジ鬼だし。令和のこの時代で体罰ありありって、どーなんだか。」

 口は悪いが、真面目で几帳面、一週間で野球のルールを完全制覇、僕よりも詳しくなる程の努力家。マジでこの娘が選手だったら、と何度考えたであろう。しかも、校内一の美人さん。
 今年の一年生は皆彼女に恋焦がれて入部したらしい。そんな馬鹿どもの根性をこの夏休み中に
叩き直してやる、そんな使命感に駆られ僕は今日もノックの鬼と化す

「でも、コイツらの親のたっての願いなんだから、仕方ないっすか… コイツらの親、マジウケるー」

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