第4話 第4章
文字数 839文字
「父さん… どうしたの、ちょっとスピード出過ぎじゃね?」
「うるさいっ」
「は? 何、何だよ。警察につかま…」
「うるさいなっ 黙れよ!」
汗でハンドルが滑りそうになる。直子があの封筒を覗いたら一巻の終わりだ。僕の裏切りを直子は決して許さないだろう。多分直子が出て行くか僕を追い出すかのどちらかになるであろう。
因みに今のマンションは直子の両親が与えてくれたものなので、まず間違いなく僕が追い出されることになるであろう。
それより何より。彼女に途轍もない迷惑をかけてしまう。田中家はパニックに陥り、二度と彼女と会う事はなくなるであろう。そして間違いなく直子は彼女に慰謝料を請求するであろう。すると恐らく、相手のご主人も僕に対し慰謝料を求めてくるに違いない。
どれだけ養育費を払わされるのか… やっと築き上げた安定したこの生活が…
生温いこの生活が…
彼女との、生ぬるい関係が…
靴を脱ぎ散らかしながらリビングに駆け込むと、テーブルの上に貴和子の会社の封筒が置いてあり、
「この写真…」
椅子に座った直子が僕を見上げる。目を細め眉を吊り上げ、どんな嘘も見逃さない、許さないという意思がありありと見える…
「本当に、」
ゴクリと唾を飲み込む。テーブルに手をつく。頭をテーブルすれすれまで下げる
「すまん! 許してくれ! 頼む!」
喉から出た声は自分のものとは思えぬほど震えている。
「やっぱり… 信じらんない…」
僕を鋭い目で睨みながら、直子は冷たく言い放つ。
「綺麗すぎるんだよ…」
汗がテーブルにポタポタ落ちる。
「マサくんが撮ったにしては…」
「…え?」
「この写真。マサくん自分で撮ったって言ったけど、ホントはカメラマンさんが撮ったんだよねー?」
直子がテーブルにそっと置いた写真は、先月僕が撮った河津桜の並木道だった…
「あー、私も行きたかったなー。ねえ、来年は絶対連れて行ってよ!」
僕はテーブルの横に崩れ落ちながら、
「も、勿論!」
と大声で叫んでいた。それを直子が大笑いで見下ろしている。
「うるさいっ」
「は? 何、何だよ。警察につかま…」
「うるさいなっ 黙れよ!」
汗でハンドルが滑りそうになる。直子があの封筒を覗いたら一巻の終わりだ。僕の裏切りを直子は決して許さないだろう。多分直子が出て行くか僕を追い出すかのどちらかになるであろう。
因みに今のマンションは直子の両親が与えてくれたものなので、まず間違いなく僕が追い出されることになるであろう。
それより何より。彼女に途轍もない迷惑をかけてしまう。田中家はパニックに陥り、二度と彼女と会う事はなくなるであろう。そして間違いなく直子は彼女に慰謝料を請求するであろう。すると恐らく、相手のご主人も僕に対し慰謝料を求めてくるに違いない。
どれだけ養育費を払わされるのか… やっと築き上げた安定したこの生活が…
生温いこの生活が…
彼女との、生ぬるい関係が…
靴を脱ぎ散らかしながらリビングに駆け込むと、テーブルの上に貴和子の会社の封筒が置いてあり、
「この写真…」
椅子に座った直子が僕を見上げる。目を細め眉を吊り上げ、どんな嘘も見逃さない、許さないという意思がありありと見える…
「本当に、」
ゴクリと唾を飲み込む。テーブルに手をつく。頭をテーブルすれすれまで下げる
「すまん! 許してくれ! 頼む!」
喉から出た声は自分のものとは思えぬほど震えている。
「やっぱり… 信じらんない…」
僕を鋭い目で睨みながら、直子は冷たく言い放つ。
「綺麗すぎるんだよ…」
汗がテーブルにポタポタ落ちる。
「マサくんが撮ったにしては…」
「…え?」
「この写真。マサくん自分で撮ったって言ったけど、ホントはカメラマンさんが撮ったんだよねー?」
直子がテーブルにそっと置いた写真は、先月僕が撮った河津桜の並木道だった…
「あー、私も行きたかったなー。ねえ、来年は絶対連れて行ってよ!」
僕はテーブルの横に崩れ落ちながら、
「も、勿論!」
と大声で叫んでいた。それを直子が大笑いで見下ろしている。