第6話 第4章
文字数 890文字
その年の九月。
河奈カントリーのコンペに僕と妻は参加していた。参加者は河奈の会員とその招待の友人知人であって、僕らはメンバーの知り合いとして参加していた。
僕と妻は別々の組になり、ラウンドを終えるとスコアを確認しあった。
「…俺くん。腕、完治してから、全然だね…」
僕のスコアは102。ゴルフを始めて初ラウンドが96、ベストスコアは83だったのに。
妻の足を手術してくれたスーパードクターを紹介してもらい、高校時代の古傷を再手術してもらった。リハビリを終えるとほぼ高校時代と変わらぬ左腕に戻っていた。
寮から湯河原に遊びに来た塁とキャッチボールしても全く痛まず、
「父さん… キャッチング、うま」
目を丸くしているのをドヤ顔でいなしたものだった。
のだが。
変に左腕に力が漲るようになったからだろう、ドライバーショットが途轍もない曲がり方をし始めてからおかしくなった。三番ウッドもロングアイアンも、まるで甲子園優勝投手の変化球の様に曲がる曲がる… 気がつくと100を切れない日々となっている…
「で? まきちゃんは… グロスで77。相変わらず凄いな…」
「まーね。ベスグロは厳しそうだけどねー」
表彰式の後のパーティーで。妻は男性陣に取り囲まれ女王然としているのをニヤニヤ眺めていると、
「青木先生、ひょっとして河高(河奈高校)で野球のコーチの?」
禿頭の小太りの男性が近寄ってくる。誰かに似ている、最近知り合った誰かに…
「いやあ、ウチのバカ息子が本当にお世話になっとります!」
「こんな有名人に野球教わって。ウチのガキも幸せですよ、先生。」
「最近ウチのガキ、変わったんですよ! 髪も黒くなったし、言葉遣いも。これも先生の指導の賜物ですっ」
アイツらの父親はこの町の名士だった。漁協長、名旅館、名料理店の子供だったのか… その父親達は口々に最近の息子の言動の変化に感謝を述べてくれるのだが、その殆どは妻の威力であることは伏せておく。
「先生、言うこと聞かなかったら、遠慮なくぶっ飛ばしてやってください!」
「ウチのも。どうぞ本気でボコボコにしちゃってください。根性叩き直してやってください!」
河奈カントリーのコンペに僕と妻は参加していた。参加者は河奈の会員とその招待の友人知人であって、僕らはメンバーの知り合いとして参加していた。
僕と妻は別々の組になり、ラウンドを終えるとスコアを確認しあった。
「…俺くん。腕、完治してから、全然だね…」
僕のスコアは102。ゴルフを始めて初ラウンドが96、ベストスコアは83だったのに。
妻の足を手術してくれたスーパードクターを紹介してもらい、高校時代の古傷を再手術してもらった。リハビリを終えるとほぼ高校時代と変わらぬ左腕に戻っていた。
寮から湯河原に遊びに来た塁とキャッチボールしても全く痛まず、
「父さん… キャッチング、うま」
目を丸くしているのをドヤ顔でいなしたものだった。
のだが。
変に左腕に力が漲るようになったからだろう、ドライバーショットが途轍もない曲がり方をし始めてからおかしくなった。三番ウッドもロングアイアンも、まるで甲子園優勝投手の変化球の様に曲がる曲がる… 気がつくと100を切れない日々となっている…
「で? まきちゃんは… グロスで77。相変わらず凄いな…」
「まーね。ベスグロは厳しそうだけどねー」
表彰式の後のパーティーで。妻は男性陣に取り囲まれ女王然としているのをニヤニヤ眺めていると、
「青木先生、ひょっとして河高(河奈高校)で野球のコーチの?」
禿頭の小太りの男性が近寄ってくる。誰かに似ている、最近知り合った誰かに…
「いやあ、ウチのバカ息子が本当にお世話になっとります!」
「こんな有名人に野球教わって。ウチのガキも幸せですよ、先生。」
「最近ウチのガキ、変わったんですよ! 髪も黒くなったし、言葉遣いも。これも先生の指導の賜物ですっ」
アイツらの父親はこの町の名士だった。漁協長、名旅館、名料理店の子供だったのか… その父親達は口々に最近の息子の言動の変化に感謝を述べてくれるのだが、その殆どは妻の威力であることは伏せておく。
「先生、言うこと聞かなかったら、遠慮なくぶっ飛ばしてやってください!」
「ウチのも。どうぞ本気でボコボコにしちゃってください。根性叩き直してやってください!」