第10話 ベートーベン ピアノソナタ1番
文字数 424文字
美登利は弾いた。楽譜を開きベートーベンの1番、1楽章。
楽譜をめくってやる。久々に弾くのか? ぎこちない。
4楽章。美登利に代わり弾く。よく弾いた曲だ。悲しみと怒りを叩きつけた。美登利がページをめくる……
夏生は和樹と喋っていた。いちゃついていた。ムカつく男だ。
聴けよ。演奏を。腕が鈍ったか?
美登利は魅了されたようだ。
情景が蘇る。第4楽章。弾いていたのはあの男だった。そばに美登利が。和樹の横には夏生がいた。
弾きなよ。和樹も。
冗談言うなよ。弾けるわけないだろ……弾けるわけないだろ、あの男のあとに、なんて……
あれから練習していたんだ。あのスピードは出せないが……
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