第4話 Wuthering Heights(嵐が丘)

文字数 1,248文字

今回はケイト・ブッシュのWuthering Heights(嵐が丘)を3パターンです。

『嵐が丘』を検索していたらケイト・ブッシュのワザリングハイツの動画にいきつき魅了された。高音の歌声、パントマイム、踊り。

娘たちに聞かせたら笑う。出だしで笑う。さんまさんのオープニングの曲だそうで。さんまもケイトが好きなのね。

初めて聴いたときは鳥肌が立った。
ぜんぜん聞き取れない。
幸子は訳す。楽しんでいるやつにはかなわない。

 ヒースクリフ、

 私よ、キャシーよ。

 戻ってきたわ。

 寒いわ!

 窓から中に入れてよ。

窓を開けて、とパントマイムをすると幸子は声を出して笑い真似た。発音を教えふたりで歌う。思いきり笑った。十代の娘は笑い転げた。

圭は合宿でダンスをやるからと、個人レッスンをしにきた。

夏生(なつお)もやってきて、彩と亜紀と5人でダンスの動画をみた。

これを男子が踊るの?  

女装すれば? 失言。

いやだよ。絶対にいやだ。

亡霊なんてパパが喜ぶわ。

庭で圭は振り付けを教えた。夏生は英語の歌を歌いながらすぐ覚えた。彩も速い。クルクル回る。

『嵐が丘』嫌だというのに踊らされた。白いドレスにカツラを被り、側転した。ドレスのまま。

踊ってみれば面白かった。皆で歌いながらパントマイム。何度か側転を入れる。夏生は得意だ。華麗に回る。僕と圭は息が乱れる。演劇部から借りてきたドレスとカツラ。その姿で乱れずに側転できるまで……歌が耳から離れない。

ケイト・ブッシュは、子供の頃にテレビ・シリーズで見た「嵐が丘」からインスパイアされてこの歌を作ったという。窓の外から「中に入れて」と乞うキャシーの亡霊の姿が、強烈な印象を彼女の頭の中に残したのだそうだ。デビュー・アルバム『天使と小悪魔』に収録されている「嵐が丘」で、ケイトは鮮烈なデビューを飾り、1978年にはイギリス国内のチャートで1位を記録した。

ダンス指導の動画がありました。

キャンプファイヤーを囲んでクラスごとの出し物。D組男子はダンスだった。皆は白いTシャツに白いパンツ。彼はいない。

簡単なセットの棺桶の蓋が開く。風が吹いた。雰囲気は最高だ。悲鳴があがる。指が見え、髪の長い白いドレスの女性が棺桶から出てきた。観客は息を呑んだ。すごい存在感。誰? 

亡霊が踊る。聞いたことのある歌だ。女の亡霊が踊る。まさか、三沢 英幸? 髪に花の飾り。耳にイヤリング、爪も塗ってる。

聞き取れたのはヒースクリフとキャシー。何度も繰り返す。窓を開けて、とパントマイム。彼はキャシーの亡霊!

皆、亡霊に釘づけになった。圭と同時に側転。彼はドレスで側転。何度も。何度も。少しも乱れない。最後は棺桶の中に戻っていった。

皆、呆気にとられていた。そのあとの拍手はすごかった。圭が彼の腕をつかみお辞儀をした。彼はカツラを取り圭の頭に被せすぐに逃げた。拍手と大爆笑……

今ではこのダンスは各地で催されているらしい。赤いドレスを着た老若男女が、ケイトになりきって踊る。

私も歌をかけ、合わせて歌いながら踊った。鏡を見ながら。

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登場人物紹介

作者

英幸《えいこう》

亜紀 英幸の義母

英輔 英幸の父

美登利

瑤子 亜紀の従妹

幸子 英幸のママ 英輔の前妻

香《こう》

三島 英輔の会社の部下

圭 英幸の友人

葉月

夏生

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