第4話 Wuthering Heights(嵐が丘)
文字数 1,248文字
『嵐が丘』を検索していたらケイト・ブッシュのワザリングハイツの動画にいきつき魅了された。高音の歌声、パントマイム、踊り。
娘たちに聞かせたら笑う。出だしで笑う。さんまさんのオープニングの曲だそうで。さんまもケイトが好きなのね。
圭は合宿でダンスをやるからと、個人レッスンをしにきた。
庭で圭は振り付けを教えた。夏生は英語の歌を歌いながらすぐ覚えた。彩も速い。クルクル回る。
踊ってみれば面白かった。皆で歌いながらパントマイム。何度か側転を入れる。夏生は得意だ。華麗に回る。僕と圭は息が乱れる。演劇部から借りてきたドレスとカツラ。その姿で乱れずに側転できるまで……歌が耳から離れない。
ケイト・ブッシュは、子供の頃にテレビ・シリーズで見た「嵐が丘」からインスパイアされてこの歌を作ったという。窓の外から「中に入れて」と乞うキャシーの亡霊の姿が、強烈な印象を彼女の頭の中に残したのだそうだ。デビュー・アルバム『天使と小悪魔』に収録されている「嵐が丘」で、ケイトは鮮烈なデビューを飾り、1978年にはイギリス国内のチャートで1位を記録した。
キャンプファイヤーを囲んでクラスごとの出し物。D組男子はダンスだった。皆は白いTシャツに白いパンツ。彼はいない。
簡単なセットの棺桶の蓋が開く。風が吹いた。雰囲気は最高だ。悲鳴があがる。指が見え、髪の長い白いドレスの女性が棺桶から出てきた。観客は息を呑んだ。すごい存在感。誰?
亡霊が踊る。聞いたことのある歌だ。女の亡霊が踊る。まさか、三沢 英幸? 髪に花の飾り。耳にイヤリング、爪も塗ってる。
聞き取れたのはヒースクリフとキャシー。何度も繰り返す。窓を開けて、とパントマイム。彼はキャシーの亡霊!
皆、亡霊に釘づけになった。圭と同時に側転。彼はドレスで側転。何度も。何度も。少しも乱れない。最後は棺桶の中に戻っていった。
皆、呆気にとられていた。そのあとの拍手はすごかった。圭が彼の腕をつかみお辞儀をした。彼はカツラを取り圭の頭に被せすぐに逃げた。拍手と大爆笑……
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