第12話 モーツァルト ピアノソナタ第9番 映画『4分間のピアニスト』
文字数 535文字
三沢家の古いグランドピアノで最初に弾いたのは……
ゆっくりで、別の曲かと思った。今まで僕はなにを弾いていたのだろう? この曲を速く弾いていた。モーツァルトのよさはわからなかった。簡単でつまらない……桂の9番は違った。僕は初めてモーツァルトに泣いた。恥ずかしいが、とめどもなく涙が出てきた。
父がハンカチを頬に押し当てた。父が帰ってきたのにも気づかなかった。恥ずかしがることはない。感動したのだ。崇高な音楽に感動した……
おまえのとは大違いだ……そう思っただろう。
聴いてくれ!
君が好きだと言ったモーツァルトの9番。涙が出る。明るくて、悲しくて……モーツァルトは好きじゃないのに。
類まれな才能を持ち、幼い頃から数々の国際コンテストに出場して「神童」の名をほしいままにしてきた主人公ジェニーが、 殺人犯として刑務所の中に入っているところからスタートする。
(地味だけれど、隠れた名作の多いドイツ映画より)
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