第5話 ショパン ピアノソナタ第2番(葬送行進曲)
文字数 766文字
1度だけ彼は弱みを見せた。昼休み、予鈴が鳴っても彼は気づかず弾いていた。彼は思いきり鍵盤を叩きつけた。
立ち上がるとフラッとし私は支えた。
大きな邸の坊ちゃんは窓から圭を見ていた。目が合った。
女かと思った。この美少年がピアノの奏者?
音楽の授業、ピアノ曲の鑑賞のあと圭が三沢英幸を見て言った。
皆の視線が集中する。無視すると圭が皆を扇動する。弾けよ、みさわ、み、さ、わ……
彼は小さく舌打ちし、ため息をつき時計を見た。まだ時間はたっぷり残っていた。
そして弾き始めた。ショパンの葬送行進曲。皮肉な男。『こんなような曲』が葬送行進曲?
しかし彼はピアノの前では猫背ではなかった。大勢の前で上がりもしない。
きれいな曲なんだ……有名な部分しか知らなかった。素敵だ。ピアノを弾いている彼は素敵だった。皆滅多に聴けない生の演奏に魅了されていた。CDの鑑賞のときには寝ていた生徒が姿勢を正して聴き入っている。
弾き終わると圭も拍手していた。
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