第44話 『名探偵モンク』から『羊たちの沈黙』
文字数 2,208文字
一介のベーシック・ケーブル局(基本料金だけで見られるチャンネル)に過ぎなかったUSAが生み出した同作は、妻の殺害事件をきっかけに強度の強迫観念にとらわれてしまった元刑事の変わり種探偵モンクが、38個の恐怖症・神経症と悪戦苦闘しながら、天才的な頭脳で次々と難事件を解決していく本格謎解きミステリー。舞台でキャリアを磨いた実力派、トニー・シャルーブの軽妙でコミカルなキャラクター作りと相まって、放送直後から絶賛を浴び、早くも2カ月後にはABCが逆に再放送権を買い取って、全米ネットワークで 放送してしまうという快挙を成し遂げたのである。
全米を席巻するや、早くもシーズン2の製作決定、米ピープル誌で「セクシー男性」に選出されたモンクは、1年も経たない間にゴールデングローブ賞で主演男優賞を受賞するという栄誉に輝く。そして、09年12月の放送終了まで、8シーズンに渡って愛され続けることになる(日本でも、04年3月から10年7月までNHK-BSにて放送)。
(映画comより)
最終回で嘆く。
手洗いに人生の何分の1(定かではない)をかけた。なにをやっていたのだろう……と。
周りの仲間がモンクのことをわかっていてくれて、いい人たちで、何度でも観たくなる。
【シーズン6 11話 迷える子羊】
モンクが殺人事件の捜査のためにカルト教団の施設に潜入。大方の予想通り、人心操作のプロである教祖にアッという間に洗脳されてしまう。教祖の言葉で除菌ティッシュまで手放せたモンクは信者として生きることに無上の喜びを覚える。ナタリーや警部らの心配通りにすっかり教祖に心酔してしまうモンク。銀行に全財産を下ろしに行ったところで警部らが拉致。モンクはクローガー先生の元で洗脳を解くことに。果たしてモンクは自分を取り戻すことができるのか?
クローガー先生は教祖の悪事を暴露するが効果はない。しかし、亡くなった愛する妻、トゥルーディーの写真を見て、モンクは正気に戻る。
腰痛を悪化させていたリーランド警部は、玄関のドアにあったお告げにより近くの修道院で病を治すと評判の噴水の“聖なる水”を飲んで奇跡を体験し、修道士となるべく警察を辞めてしまう。
『ゴルトベルク変奏曲』を効果的に使った映画が、1991年公開のサイコスリラー『羊たちの沈黙』(ジョナサン・デミ監督)です。連続猟奇殺人事件を追う女性FBI訓練生、ジョデイ・フォスター演ずるクラリスと、監禁中の凶悪犯で元精神科医のハンニバル・レクターとの奇妙な交流を映画は描いています。『羊たちの沈黙』は91年のアカデミー賞主要5部門を独占しましたが、レクター博士を怪演しているのはアンソニー・ホプキンスです。トマス・ハリスの原作では、ゴルトベルク変奏曲がお気に入りのレクター博士が収容された監獄で、グールドの55年盤のテープの差し入れを要求しています。
天才的な洞察力を持つレクター博士は人肉嗜好の殺人鬼ですが、博士が人をあやめる方法は完璧で美しく、ひとつの哲学と言っても過言ではありません。一方、天才肌の奇人で孤高のグールドがピアノの前に座り、二本の長い手指を鍵盤に載せて紡ぎ出す音楽は、世界の終わりにただひとつ遺された楽園のように美しく、すべてが完璧で研ぎ済まされ、一片の曇りもありません。ハンニバル・レクターという強烈なキャラクターを象徴する音楽として、グールドの『ゴルトベルク変奏曲』以上に相応しい音楽は考えられませんね。『羊たちの沈黙』でゴルトベルクを演奏しているのはグールドではありませんでしたが、美しい音色の『ゴルトベルク変奏曲』がゆったりと流れる監獄内で、レクター博士は平然と看守を殺害して奇想天外な方法で脱獄します。比類ない最上の音楽と冷酷な殺人が平行して進行するシーンは永遠に忘れられないものとなりました。(新潟市医師会報より)
81年のほうがいい。
55年はみずみずしい演奏。81年版は……死を予感していた?
天才のことは天才にしかわからない。
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