第19話 木枯らし 愛のあいさつ

文字数 588文字

娘が、ピアノ弾けるのよ、と男友達に自慢したら

『木枯らしのエチュード弾ける?』

と聞かれたそうだ。

弾けるわけないだろうが……

音楽室の中で誰かが弾いていた。『木枯し』か? 

弾いていたのは夏生だった。美登利がそばで聴いていた。

楽譜をめくってやるとあいつは驚いたようだが集中力は途切れなかった。長い指が奏でた。

PTNA2014コンペ全国決勝G級 銅賞 素晴らしい、とのコメントがすごい数です。

おまえと連弾する。おまえはメキメキうまくなる。練習熱心だ。ヘッドホンをし、オレをそっちのけで弾いている。オレはピアノに嫉妬し邪魔をする。

まだ、言わないが、オレは貯金を始めたんだ。おまえと結婚するために。いつかおまえの喜ぶ顔が見たい……そして結婚式にふたりで弾こう。エルガーの『愛の挨拶』

 

……満ち足りた時間。続くと思っていた。ずっと続くと思っていた。

おまえが離れていくなんて想像もしなかった……ああ、未練がましいな……


『愛のあいさつ』は堂本光一、中谷美紀のドラマ『ハルモニア この愛の涯て』で知りました。パガニーニの『カプリース 24』も。

再放送はしないし、DVDも出ていない。

天才であり異端児と呼ばれた伝説のヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニの生き様を描いたストーリー。

『愛と狂気のヴァイオリニスト』より

25年くらい前、来日したデイヴィド・ギャレットと握手したのでした。もう41歳だそう……
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登場人物紹介

作者

英幸《えいこう》

亜紀 英幸の義母

英輔 英幸の父

美登利

瑤子 亜紀の従妹

幸子 英幸のママ 英輔の前妻

香《こう》

三島 英輔の会社の部下

圭 英幸の友人

葉月

夏生

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