第7話 月光

文字数 372文字

男の子にピアノを弾いてもらいたくて、息子に習わせた。押し付けでしかなく、中学に入る前に辞めた……が、

高校の文化祭。釣り同好会の息子は軽音部に頼まれ演奏した。家で練習していた。月光。

母は楽しみにしていたのに、観に行ったらすでに終わっていた。

前のほうで見ててね。圭のためだけに歌うから。


軽音部の美登利の歌が始まった。ピアノを弾きながら美登利が歌う。圭だけのための『月光』

魅力的なハスキーボイス。男子の歓声と拍手。

そのあとは三沢英幸の演奏だ。美登利が戻り、圭の隣に座る。

今度は女子の歓声。

彼は予定していた曲とは違う曲を演奏した。私にもわかった。ベートーベンの『月光』
いやなやつ。

あんな嫌味なやつが親友だったの?

おまえも弾けるのか? この曲。
1楽章はね。3楽章は無理。
娘も3楽章の途中で辞めてしまった。弾き手のないピアノを弾く。孫が弾いてくれないかな?
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登場人物紹介

作者

英幸《えいこう》

亜紀 英幸の義母

英輔 英幸の父

美登利

瑤子 亜紀の従妹

幸子 英幸のママ 英輔の前妻

香《こう》

三島 英輔の会社の部下

圭 英幸の友人

葉月

夏生

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