第68話
文字数 1,744文字
デュオはテントに私たちと雪崩れ込むと叫んだ。私は手近かの木の棒を渡して、地面に書いてくれと言った。
デュオに大声で呼ばれた長老とバリエも走って来る。
「ここが、わしらのいるところじゃ!」
地面に木の棒で丸を書く。
「そして、ここがやつらのいる所じゃ!」
丸の離れた先に丸を書いた。
「この森のわしらとやつらの正面には、何があるのじゃ。川か谷か……!」
「とても大きな広場が有ります」
バリエが口を開く。
「それじゃ。その広場には丘はあるか」
「はい。この森を少し抜けると、幾つかの起伏があります」
「起伏と広場か……。やはり、正面きっての戦いしかないか」
デュオは考え込んだ。
「穴掘りが得意な者はおるかな」
「はい。何十人かいます」
デュオとバリエの会話の中、私は兵力が足りるのか足りないのか解らなかった。向こうは村は大きいが、黒い霧を何千体もだせるのなら村の大きさは関係ないはず。逆に、黒い霧が数百体しかだせないのなら……。それと、そこの村の人たちは戦いに参加するのだろうか。
「勿論しないと思うわ」
呉林が私に話しかけた。
「え?」
「要するに、黒い霧だけの数を知りたいのでしょう? カルダの村の人は参加しないわ」
デュオもこちらに顔を向ける。
「えーと。8千体もいるわ……」
「違うわ。約9千体よ」
青い顔の呉林の言葉を霧画が訂正する。
「9千体……。こちらはどう見積もっても……約百人」
デュオは唸る。
「あ。そうじゃ、この村だけじゃない。他の村も協力するとして。して、何人じゃ?」
長老は静かに言う。
「大きい西の村と斜めの東の村、北の谷の村ならば、協力するじゃろう。全部で5千人くらいにはなるじゃろう」
「こちらのだいたい二倍か。それと赤羽くん。さっきの力はかなり遠くても出来るのかな」
「ええと。恐らく」
私が自信が無いように言うと、呉林姉妹が当然、可能だと太鼓判を押した。
「何とかなるか」
デュオはニンマリした。
それから、デュオは西の村と東の村、北の村へと使者を送り、説得と協力を要請をした。それと、穴掘りが得意な者を4十名余り、そして何をするのか解らい者を数名連れ、森の広場を目指す。
穴掘りの作業は一夜漬けとなり、私には、
「赤羽くんは戦いで眠らされると困るから、しっかり寝ていてくれ」
と言いった。
私は長老のテントで休ませてもらった。カルダは襲ってこないだろうと頭では安心しているが、心は最大限の緊張はしている。
「これが本当の最後の戦いね」
呉林は長老のテントの中でそう言った。私たちは周囲のテントと長老のテントを借りて、その中で眠ることになった。
長老のテントにいる私の隣には呉林と霧画が横になっている。何かカルダの魔術的なことが起きた際に、シグナルを発してくれるだろう事である。
安浦は食糧がたくさんあるテントを独り占めして眠り、村のテントの消火作業や救出作業を終えた渡部と角田は周囲のテントで自由に寝たいと言った。周囲のテントは焼け落ちたところが多いが、無傷のところも幾つかあった。村の住民も死者がでることはなく、怪我人くらいでいくらか落ち着いていた。
「ああ、俺がしっかりしていれば……何とか勝てるさ」
私は恐怖よりも強い怒りによって、自分の力に始めて自信を持った。この平和な日本で、生れて初めて戦をしなければならない自分の人生に、今の私は打ち勝つ程の力と能力がある。もう悪夢は終わりだ。
その力は、今までの過酷な体験でのぎりぎりの、生きるための努力によるもの。そのお陰で私は、きっと明日も明後日も生きていけるのだ。それと……呉林のため……。
そして……今頃、中村・上村は何をしているのだろう?
「赤羽さん。怖い?私は怖いわ。戦なんて今の平和な日本でした人なんていないはず。今までは不思議な感じる力やみんなのお陰で、怖さがあまり無かったけれど……」
動物の匂いがする毛皮の継ぎ接ぎの毛布に包まった。横になっている呉林はこちらに弱い口調で話した。枕はない。
横になっている私と霧画は少し考えるが、
「大丈夫さ。ただ単の夢のことさ。きっと、いや……必ず何とかなるさ」
私はカルダへの怒りで、平静に言ってのける。
私はこのリアル過ぎる恐ろしい夢の世界でも、やはり夢は夢と考えられるところがあると思う。
デュオに大声で呼ばれた長老とバリエも走って来る。
「ここが、わしらのいるところじゃ!」
地面に木の棒で丸を書く。
「そして、ここがやつらのいる所じゃ!」
丸の離れた先に丸を書いた。
「この森のわしらとやつらの正面には、何があるのじゃ。川か谷か……!」
「とても大きな広場が有ります」
バリエが口を開く。
「それじゃ。その広場には丘はあるか」
「はい。この森を少し抜けると、幾つかの起伏があります」
「起伏と広場か……。やはり、正面きっての戦いしかないか」
デュオは考え込んだ。
「穴掘りが得意な者はおるかな」
「はい。何十人かいます」
デュオとバリエの会話の中、私は兵力が足りるのか足りないのか解らなかった。向こうは村は大きいが、黒い霧を何千体もだせるのなら村の大きさは関係ないはず。逆に、黒い霧が数百体しかだせないのなら……。それと、そこの村の人たちは戦いに参加するのだろうか。
「勿論しないと思うわ」
呉林が私に話しかけた。
「え?」
「要するに、黒い霧だけの数を知りたいのでしょう? カルダの村の人は参加しないわ」
デュオもこちらに顔を向ける。
「えーと。8千体もいるわ……」
「違うわ。約9千体よ」
青い顔の呉林の言葉を霧画が訂正する。
「9千体……。こちらはどう見積もっても……約百人」
デュオは唸る。
「あ。そうじゃ、この村だけじゃない。他の村も協力するとして。して、何人じゃ?」
長老は静かに言う。
「大きい西の村と斜めの東の村、北の谷の村ならば、協力するじゃろう。全部で5千人くらいにはなるじゃろう」
「こちらのだいたい二倍か。それと赤羽くん。さっきの力はかなり遠くても出来るのかな」
「ええと。恐らく」
私が自信が無いように言うと、呉林姉妹が当然、可能だと太鼓判を押した。
「何とかなるか」
デュオはニンマリした。
それから、デュオは西の村と東の村、北の村へと使者を送り、説得と協力を要請をした。それと、穴掘りが得意な者を4十名余り、そして何をするのか解らい者を数名連れ、森の広場を目指す。
穴掘りの作業は一夜漬けとなり、私には、
「赤羽くんは戦いで眠らされると困るから、しっかり寝ていてくれ」
と言いった。
私は長老のテントで休ませてもらった。カルダは襲ってこないだろうと頭では安心しているが、心は最大限の緊張はしている。
「これが本当の最後の戦いね」
呉林は長老のテントの中でそう言った。私たちは周囲のテントと長老のテントを借りて、その中で眠ることになった。
長老のテントにいる私の隣には呉林と霧画が横になっている。何かカルダの魔術的なことが起きた際に、シグナルを発してくれるだろう事である。
安浦は食糧がたくさんあるテントを独り占めして眠り、村のテントの消火作業や救出作業を終えた渡部と角田は周囲のテントで自由に寝たいと言った。周囲のテントは焼け落ちたところが多いが、無傷のところも幾つかあった。村の住民も死者がでることはなく、怪我人くらいでいくらか落ち着いていた。
「ああ、俺がしっかりしていれば……何とか勝てるさ」
私は恐怖よりも強い怒りによって、自分の力に始めて自信を持った。この平和な日本で、生れて初めて戦をしなければならない自分の人生に、今の私は打ち勝つ程の力と能力がある。もう悪夢は終わりだ。
その力は、今までの過酷な体験でのぎりぎりの、生きるための努力によるもの。そのお陰で私は、きっと明日も明後日も生きていけるのだ。それと……呉林のため……。
そして……今頃、中村・上村は何をしているのだろう?
「赤羽さん。怖い?私は怖いわ。戦なんて今の平和な日本でした人なんていないはず。今までは不思議な感じる力やみんなのお陰で、怖さがあまり無かったけれど……」
動物の匂いがする毛皮の継ぎ接ぎの毛布に包まった。横になっている呉林はこちらに弱い口調で話した。枕はない。
横になっている私と霧画は少し考えるが、
「大丈夫さ。ただ単の夢のことさ。きっと、いや……必ず何とかなるさ」
私はカルダへの怒りで、平静に言ってのける。
私はこのリアル過ぎる恐ろしい夢の世界でも、やはり夢は夢と考えられるところがあると思う。