第23話

文字数 635文字

 限界点を突破した恐怖からくる焦りと仲間の危機が引き金となった私は、必死に倉庫の金属製の棒を引っ掴み。
「オラー!」
 掛け声とともに、作業場に肩肘を付いて起き上がろうとしているテレビ頭に金属製の棒を突き刺した。32インチのテレビがヒビが入ったかと思うと同時に、火花と血飛沫を上げながら一部が壊れた。
「きゃあ!」
 安浦がまた悲鳴を出した。
 私はもう一度、大量に出血をしているテレビに棒を刺した。一際、出血する。
「やったのか。俺」
 私は相手の状態を確認して、肩を上下させながらテレビ頭の巨体を覗き込んだ。
 テレビ頭はテレビから大量の血を流している。
「すごいな……」
 左足を抑えながら、はずむ息をしている角田は、私の名前を言おうとした処で、テレビ頭のテレビの火花で口を噤んだ。渡部と安浦は、あまりにもショッキングな出来事に茫然としていた。
「赤羽くん。君って奴は……」
「どう? 凄いでしょ」
 角田と呉林の安心の声を聞いた。私は呆然と立っていたが、どっと気が抜けたようで……気を失った。
 気を失う寸前、私の耳には大音量の物音が連続していた。恐らく、必死にみんなが元の世界へ戻ろうとしてくれていたのだろう。

 小鳥の囀りと暖かい光で意識が浮上してくる。それと同時に左肩に鈍い痛みを覚える。
「ぐ……」
 私は痛みで顔をしかめながら起き上った。まっすぐにユニットバスの鏡に上着を脱いで左肩を映した。何ともなっていない。鈍い痛みだけが鮮明に脳に響く。



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