第4話
文字数 1,210文字
私は高校を卒業してから、面接を片っ端しに受けてはなにも音沙汰ない日が続いていた。それから、退社や解雇を繰り返し、人生に張り合いもなくなり。毎日働くことが嫌になった。
しばらくは困り顔の両親のいる実家で、ごろごろしたりしながら、週に2日か3日、単発のバイトをしていた。
引越しから接客に倉庫内作業など多種多様なバイトをして、それから同じ日雇いだった中村・上村に出会いエコールを紹介され、二年前に今の1LDKに住むようになった。
私の住むひたち野うしくにある1LDKから、ひたち野うしく駅まで徒歩で30分。駅からエコールまでは電車で三駅と藤代駅からエコールまでは、路線バスで40分。こんな生活を私は飽きずに毎日続けていた。休日は祝祭日と土日で、プライベートは部屋の片隅でテレビを観ているだけ。
その日は、傘を忘れていた。
電車の中で車窓越しに外を見ていると、雨がぽつぽつと降ってきた。車窓に緩い水滴が所々広がる。7月の下旬だが空は、周囲の空間に黒煙が充満したかのように暗かった。
そういえば少し前、中村が、
「傘を持ってくと雨は降らなくて、傘を持ってないと降るんだよな。俺の経験上の教訓さ」
と言っていっていたのを何気なしに覚えていた。
私は忙しない雑踏の駅から改札口へと出た。毎日の自宅までの距離を歩いている時に、それまでの小降りから大降りとなりだした。
駅のロータリーは通行人が多く、傘を持っていない人も疎らにいたが、駅から離れるにつれ傘を持つ人が目立ってきたようだ。
いつも通りに幾つものコンビニの前を通り抜け、大きな公園の真ん中を足早に通り抜け
る。それから、延々と林の小道を歩かなければならない。その先には住宅街があり、そ
こに私のボロアパートがある。
雨がこれ以上ないほど強くなり風もでてきた、汗を吸った洋服がべったりと体につく。
「今日はツイてない」
私はボヤいた。ボサボサの頭は雨で頭皮にくっ付きだし、いつもの服装である黒のジーンズと灰色のTシャツは素肌に張り付いていた。
林の小道に着くと強風で前が見えない、コンビニも何もなく、私の住むアパートまで走らなければならない、雨宿り出来る所はまったく無い。私はそれでも、林から痛そうな枝や葉っぱが強風で飛んでくるのを我慢出来ずに、どこかに雨宿りできる場所を探した。
まるで、嵐のような風と雨の中に、小さいが頑丈そうな赤い煉瓦の喫茶店が目に入った。
それは、真っ暗な林の中にポツンとあった。5年もこの道を毎日のように往復しているのに、缶コーヒーをいつも買うので今までまったく気にも留めなかったようだ。それは全体的に古い趣で、石造りのお城のような。いかにも頑固そうな老人が営んでいる。といった感じの頑丈な喫茶店だった。この嵐の日の雨宿りには、まさにうってつけの所である。仄かな明かりの喫茶店へと、家まではまだだいぶ遠いので、ずぶ濡れの服のまま私は迷うことなく入ることにした。
しばらくは困り顔の両親のいる実家で、ごろごろしたりしながら、週に2日か3日、単発のバイトをしていた。
引越しから接客に倉庫内作業など多種多様なバイトをして、それから同じ日雇いだった中村・上村に出会いエコールを紹介され、二年前に今の1LDKに住むようになった。
私の住むひたち野うしくにある1LDKから、ひたち野うしく駅まで徒歩で30分。駅からエコールまでは電車で三駅と藤代駅からエコールまでは、路線バスで40分。こんな生活を私は飽きずに毎日続けていた。休日は祝祭日と土日で、プライベートは部屋の片隅でテレビを観ているだけ。
その日は、傘を忘れていた。
電車の中で車窓越しに外を見ていると、雨がぽつぽつと降ってきた。車窓に緩い水滴が所々広がる。7月の下旬だが空は、周囲の空間に黒煙が充満したかのように暗かった。
そういえば少し前、中村が、
「傘を持ってくと雨は降らなくて、傘を持ってないと降るんだよな。俺の経験上の教訓さ」
と言っていっていたのを何気なしに覚えていた。
私は忙しない雑踏の駅から改札口へと出た。毎日の自宅までの距離を歩いている時に、それまでの小降りから大降りとなりだした。
駅のロータリーは通行人が多く、傘を持っていない人も疎らにいたが、駅から離れるにつれ傘を持つ人が目立ってきたようだ。
いつも通りに幾つものコンビニの前を通り抜け、大きな公園の真ん中を足早に通り抜け
る。それから、延々と林の小道を歩かなければならない。その先には住宅街があり、そ
こに私のボロアパートがある。
雨がこれ以上ないほど強くなり風もでてきた、汗を吸った洋服がべったりと体につく。
「今日はツイてない」
私はボヤいた。ボサボサの頭は雨で頭皮にくっ付きだし、いつもの服装である黒のジーンズと灰色のTシャツは素肌に張り付いていた。
林の小道に着くと強風で前が見えない、コンビニも何もなく、私の住むアパートまで走らなければならない、雨宿り出来る所はまったく無い。私はそれでも、林から痛そうな枝や葉っぱが強風で飛んでくるのを我慢出来ずに、どこかに雨宿りできる場所を探した。
まるで、嵐のような風と雨の中に、小さいが頑丈そうな赤い煉瓦の喫茶店が目に入った。
それは、真っ暗な林の中にポツンとあった。5年もこの道を毎日のように往復しているのに、缶コーヒーをいつも買うので今までまったく気にも留めなかったようだ。それは全体的に古い趣で、石造りのお城のような。いかにも頑固そうな老人が営んでいる。といった感じの頑丈な喫茶店だった。この嵐の日の雨宿りには、まさにうってつけの所である。仄かな明かりの喫茶店へと、家まではまだだいぶ遠いので、ずぶ濡れの服のまま私は迷うことなく入ることにした。