第49話

文字数 1,024文字

 夜のドライブ。静寂の道路を車は走る。行き交う人々は無表情で微動だにせず、また無言である。全員、目の辺りが暗くなっていた。
 私はキラーって? 
「霧画さん」
 私が言おうとしたら、
「そうよ。キラーも夢の世界のものよ。キラーは異界のもので殺し屋でもあるの」
 まるで、いや、確かに心を読んでいるのでは?
「夢の世界と現実?」
「そう。もう現実が大部分夢の世界に沈没しているの」
「……俺のことを七番目の者っていいますが、一体? 七番目って」
「簡単に言うと、七番目の者は、狂気と神秘の狭間。でね、古代の宗教ではしばしば太陽化される頂点で、狂気すれすれの危機的な体験でもあるの」
「え?? は??」
「赤羽さん。残念だけど、あなたはとても危険な体験をしている」
「……気分はとてもすっきりしているんだ……幸運なのかな? 目が覚めた感じだ……頭では理解出来ないが」
 運転席で霧画はふーっと、細い息を吐いてから、
「昨日、調べた夢の世界に関する古い文献の話なのだけど。また、ウロボロスの話ね。太古の大勢のシャーマンは強すぎる夢の力を抑えるために、ウロボロスの背に大樹を植えたの。大樹は世界の中心とされ、それに登ることによって、神々の世界へ儀礼的に上昇をすることが出来るの。その儀礼的上昇の力で、夢の力を抑えるようよ。そうね、蛇と木は不思議と親近性がとてもあるの」
「はあ。儀礼的って何ですか?」
 蛇と木に親近感?
「簡単にいうと、儀礼的とは形式的のこと。つまり、神々の元で形だけの力を得るの。その力と、そしてウロボロスを眠らすことで夢の世界を抑えるわけ。それと、古代からの絵には、蛇の上に木が生えているものがあるのよ。私の読んだ本にもあるわ。大樹が世界の中心にあるのは、この世界が始った時、ウロボロスを封印するのにもっとも適していたからなの。つまり、その頃は南米が世界の中心だったの」
 呉林が私の頭を助けてくれる。
「そして、ウロボロスをそのまま眠らせたのよ。でも、その蛇には意志があって、それで、今は悪いシャーマンがその意志を利用して(起こして)世界を滅ぼそうとしている。と、考えられるわ」
 霧画は右折するために話を一旦止めて、
「ウロボロスの大樹は今でも南米にあるんですか?」
 私は確認をしようとした。
「そうだと思うわ。ウロボロスの大樹は古い文献で、今でも南米にあるって示唆されているの。悪いシャーマンはウロボロスの大樹に何かしたのじゃないかしら。それと、南米のコーヒー豆もあるわ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み