第17話
文字数 1,376文字
「俺はフリーターだ! 強い意志なんて元々持ってないし! 人生の目標なんてあったもんじゃない! 楽な仕事しかしないし! けれど、年金暮らしまで頑張って仕事をするんだ! そんな人生を享受したい人間なんだよ! もう怖いし疲れたし! ここから出たいだけなんだ!」
そう言うと、私は一瞬涙ぐんだ。でも、もうどうでもよかったのだ。自分さえ助かれば、彼らを見捨てても。こんな世界で一時間もいるのは本当に恐ろしい。
感情を爆発させると、こんな異常なところでも頭がキリリと絞られた。
頭がすっきりとすると、言いようのない恐怖が私を襲いだし、本気で彼らを見捨ててもいいと思えてきた。だが、私の中で何か熱い魂が動いた。
と、その時、背後ですさまじい音が鳴り響いた。
「ガアーン! ガァーン!」
と、重い金属で立て続けに鉄格子を殴る破壊的な音だ。
「囚人房の方よ!」
「ひっ!」
呉林は悲鳴を上げた私に強い瞳を向ける。呉林は私の手を握ると、それと同時に元来た道を駆けだした。私は、何度も呉林の握っている手を振りほどこうかと考えていた。
幾つもの囚人房を通り過ぎ、さすがに息切れをする。運動不足の体で呉林とともに思いきり走った。来たときの半分の時間で囚人房に辿り着いたが、私は額の汗を拭おうして手が止まった。
ここに来る時、閉めたはずの頑丈な扉が開け放たれている。
「ガァーン! ガァーン!」
更に激しく金属で鉄格子を殴る音にくわえ、
「なんだこいつはー!」
中年男性の叫び声が響いた。
中に入ろうとすると、テレビの砂嵐の音が聞こえた。鉄格子を殴る破壊的な音はぱったりと消えている。
囚人房の中には、ハンマーを持った青い上下の作業服の大男がいた。頭には何故かテレビを被っている。こちらを向いているテレビは砂嵐が映っていた。
「気を付けて下さい! そいつはハンマーを持っているし、可笑しいんです!」
ハンマーで殴られて、ぐちゃぐちゃになった扉から、青年は青ざめている顔をして、牢
の中から大男を指差した。
「こいつは人を殺すぞ!」
中年男性が叫ぶ。
呉林はかなり驚いた顔をして、
「異界のもの……」
そう呟いた。
私は緊張したが、現実的に大男に話しかける。
「あの、どうしたんですか?」
すると、大男はハンマーを振り上げた。
それは私の左肩を殴り、骨の折れる音が私の耳に入る。左の手がぶらりとして、鈍い音と同時に鈍い痛みが走った。
私は何が起きたのかさっぱり解らなかった。激痛に顔を歪めていると、呉林は私の右手を掴むと走り出した。
「大丈夫! 逃げるわよ!」
掴まれた呉林の手は汗ばんでいた。
左手がぶらりとしている。呉林は、今度は処刑場の方へと私を連れて全速力で走りだした。
「大丈夫! 肩!」
走りながら私に必死な目を向けていた。
「ああ、なんとかね……。痛みが酷いよ……」
私は青い顔で力なく微笑んだ。全速力なので、次第に私も呉林もさっきよりも息切れしてきた。運動不足の私は、激痛に耐えながら荒い呼吸をし、ヘロヘロな脚を鞭打つ。少し遠くで、大男が追ってきているのか、テレビの砂嵐の音が聞こえる。
「あのテレビ頭は何なんだ。 異界のものって……?」
私は苦しい呼吸と左肩から滲み出る赤い色を極力気にしないようにして、呉林に首を向けた。
そう言うと、私は一瞬涙ぐんだ。でも、もうどうでもよかったのだ。自分さえ助かれば、彼らを見捨てても。こんな世界で一時間もいるのは本当に恐ろしい。
感情を爆発させると、こんな異常なところでも頭がキリリと絞られた。
頭がすっきりとすると、言いようのない恐怖が私を襲いだし、本気で彼らを見捨ててもいいと思えてきた。だが、私の中で何か熱い魂が動いた。
と、その時、背後ですさまじい音が鳴り響いた。
「ガアーン! ガァーン!」
と、重い金属で立て続けに鉄格子を殴る破壊的な音だ。
「囚人房の方よ!」
「ひっ!」
呉林は悲鳴を上げた私に強い瞳を向ける。呉林は私の手を握ると、それと同時に元来た道を駆けだした。私は、何度も呉林の握っている手を振りほどこうかと考えていた。
幾つもの囚人房を通り過ぎ、さすがに息切れをする。運動不足の体で呉林とともに思いきり走った。来たときの半分の時間で囚人房に辿り着いたが、私は額の汗を拭おうして手が止まった。
ここに来る時、閉めたはずの頑丈な扉が開け放たれている。
「ガァーン! ガァーン!」
更に激しく金属で鉄格子を殴る音にくわえ、
「なんだこいつはー!」
中年男性の叫び声が響いた。
中に入ろうとすると、テレビの砂嵐の音が聞こえた。鉄格子を殴る破壊的な音はぱったりと消えている。
囚人房の中には、ハンマーを持った青い上下の作業服の大男がいた。頭には何故かテレビを被っている。こちらを向いているテレビは砂嵐が映っていた。
「気を付けて下さい! そいつはハンマーを持っているし、可笑しいんです!」
ハンマーで殴られて、ぐちゃぐちゃになった扉から、青年は青ざめている顔をして、牢
の中から大男を指差した。
「こいつは人を殺すぞ!」
中年男性が叫ぶ。
呉林はかなり驚いた顔をして、
「異界のもの……」
そう呟いた。
私は緊張したが、現実的に大男に話しかける。
「あの、どうしたんですか?」
すると、大男はハンマーを振り上げた。
それは私の左肩を殴り、骨の折れる音が私の耳に入る。左の手がぶらりとして、鈍い音と同時に鈍い痛みが走った。
私は何が起きたのかさっぱり解らなかった。激痛に顔を歪めていると、呉林は私の右手を掴むと走り出した。
「大丈夫! 逃げるわよ!」
掴まれた呉林の手は汗ばんでいた。
左手がぶらりとしている。呉林は、今度は処刑場の方へと私を連れて全速力で走りだした。
「大丈夫! 肩!」
走りながら私に必死な目を向けていた。
「ああ、なんとかね……。痛みが酷いよ……」
私は青い顔で力なく微笑んだ。全速力なので、次第に私も呉林もさっきよりも息切れしてきた。運動不足の私は、激痛に耐えながら荒い呼吸をし、ヘロヘロな脚を鞭打つ。少し遠くで、大男が追ってきているのか、テレビの砂嵐の音が聞こえる。
「あのテレビ頭は何なんだ。 異界のものって……?」
私は苦しい呼吸と左肩から滲み出る赤い色を極力気にしないようにして、呉林に首を向けた。