第2章 第10話
文字数 1,464文字
大通りの脇に光子はハザードを出して車を停める。
「アンタの元嫁… 里子さん。若くて… 清楚だったし… な」
リビングに飾ってある写真は結婚当時の20代。そりゃ若いって…
「ゆーこも若く見えるし、清楚系だし…」
「関係ねーって!」
思わず大声をあげてしまう。確かに由子は若く見えるし口を開かねば清楚系でハイソ系の美魔女であるが。
俺の顔をじっと見つめながら、大粒の涙をポロポロ流しながら、光子は訴えるように言う
「この半年… わたし幸せだったよ…」
光子の口調が激変するのは、決まって元彼の話をする時。何故、今…
「貴方みたいなエリートに相応しくない、自分でもわかってる。大学出た由子の方が貴方に合っている、それもわかっているの」
コイツ… まだそんな事を考えていたのか…
「私の今までの彼は奥さんがいて、家庭があって… だから諦められた…」
「お、おう… でも俺は独身だからなっ 俺はこれからオマエと…」
「でも貴方は… 貴方の心の中の里子さんには私、絶対敵わない… だって死んじゃっているんだもの」
そんな事考えていたのか… 思わず絶句してしまう。
「だから… 貴方は私を抱かない。違う?」
全然違うから。俺はゆっくり深呼吸をする。ちゃんと言おう。説明しよう。
「あのな。病院のPTの橋上先生、退院の時、何て言ってた?」
「えー、暴飲暴食、激しい運動… あっ…」
涙でグチャグチャの顔が瞬時に赤くなる。言ってる俺も耳まで赤くなる。
「そう。ところでお前、今までの経験回数は?」
「えっと、3回…」
「足を骨折していて身動き取れないマグロ状態の男とセックスするにはどうすればいいかお前が知ってたら俺は今松葉杖ついていたかな?」
「ちょ… バカ野郎! 何言ってー」
突如、元の光子に戻ってくる。一体どちらの光子が本性なのだろうか…
「だから。橋上先生の許可が出たら、お前を抱こうと思っていたんだ。わかるか?」
光子は顔を紅潮させ頷く。
「あと。実は、俺、怖かった」
「は? 何が?」
「お前に拒まれるのが…」
「な、なに言って…」
暫しの沈黙。ずっと黙っておこうと思っていたが、この機会に言ってしまおう。
「あと。今までの彼に… 俺、嫉妬してた」
「え…」
「お前を抱いた、3人の男に… 嫉妬してたんだ、胸が苦しくなるほど…」
「…」
俺は拳を握りしめ、声を絞り出す。
「だから。先週、お前と結ばれそうになった時、嬉しくて… 苦しかった…」
最早涙も止まり、むしろ呆れ顔で光子は俺を見つめる。
「だから。全然違うから。前妻だの由子ちゃんだの、一切関係ないし、お前と釣り合ってないとか、全く意味不明」
「何だか… 今まで悩んでたの、損したわ…」
顔に笑顔が戻る。やや見下した表情で、
「てか。アタシ、3回だから。しかも最後にしてから、30年以上経ってっから。アンタ、ホントちっちぇ〜男だなー」
「う、うるせー」
「アンタなんてヤリまくりのヤリチン野郎だろーが。で、どーだったよ、ゆーこは?」
あの夜の快楽が蘇り、急激に勃起したのを悟られまいと、
「ば、バカっ 何言ってんだっ」
それすらも見透かされたようで。そんな俺を鼻で笑いながら、
「アイツはもう二度とアンタとはしない。アタシにちゃんと渡してくれた」
額からの汗が止まらない。脇も汗でびしょ濡れだ…
「もう。誰にもアンタを、渡さない」
凄まじい目力。愛の告白と愛の脅迫、紙一重だ。
「俺も、お前を絶対離さない」
朝から激しくも蕩けるような口付けを交わしていると、車の外で薄緑の服を着た二人組の初老の男性達があっけにとられて俺たちを覗き込んでいる。
「アンタの元嫁… 里子さん。若くて… 清楚だったし… な」
リビングに飾ってある写真は結婚当時の20代。そりゃ若いって…
「ゆーこも若く見えるし、清楚系だし…」
「関係ねーって!」
思わず大声をあげてしまう。確かに由子は若く見えるし口を開かねば清楚系でハイソ系の美魔女であるが。
俺の顔をじっと見つめながら、大粒の涙をポロポロ流しながら、光子は訴えるように言う
「この半年… わたし幸せだったよ…」
光子の口調が激変するのは、決まって元彼の話をする時。何故、今…
「貴方みたいなエリートに相応しくない、自分でもわかってる。大学出た由子の方が貴方に合っている、それもわかっているの」
コイツ… まだそんな事を考えていたのか…
「私の今までの彼は奥さんがいて、家庭があって… だから諦められた…」
「お、おう… でも俺は独身だからなっ 俺はこれからオマエと…」
「でも貴方は… 貴方の心の中の里子さんには私、絶対敵わない… だって死んじゃっているんだもの」
そんな事考えていたのか… 思わず絶句してしまう。
「だから… 貴方は私を抱かない。違う?」
全然違うから。俺はゆっくり深呼吸をする。ちゃんと言おう。説明しよう。
「あのな。病院のPTの橋上先生、退院の時、何て言ってた?」
「えー、暴飲暴食、激しい運動… あっ…」
涙でグチャグチャの顔が瞬時に赤くなる。言ってる俺も耳まで赤くなる。
「そう。ところでお前、今までの経験回数は?」
「えっと、3回…」
「足を骨折していて身動き取れないマグロ状態の男とセックスするにはどうすればいいかお前が知ってたら俺は今松葉杖ついていたかな?」
「ちょ… バカ野郎! 何言ってー」
突如、元の光子に戻ってくる。一体どちらの光子が本性なのだろうか…
「だから。橋上先生の許可が出たら、お前を抱こうと思っていたんだ。わかるか?」
光子は顔を紅潮させ頷く。
「あと。実は、俺、怖かった」
「は? 何が?」
「お前に拒まれるのが…」
「な、なに言って…」
暫しの沈黙。ずっと黙っておこうと思っていたが、この機会に言ってしまおう。
「あと。今までの彼に… 俺、嫉妬してた」
「え…」
「お前を抱いた、3人の男に… 嫉妬してたんだ、胸が苦しくなるほど…」
「…」
俺は拳を握りしめ、声を絞り出す。
「だから。先週、お前と結ばれそうになった時、嬉しくて… 苦しかった…」
最早涙も止まり、むしろ呆れ顔で光子は俺を見つめる。
「だから。全然違うから。前妻だの由子ちゃんだの、一切関係ないし、お前と釣り合ってないとか、全く意味不明」
「何だか… 今まで悩んでたの、損したわ…」
顔に笑顔が戻る。やや見下した表情で、
「てか。アタシ、3回だから。しかも最後にしてから、30年以上経ってっから。アンタ、ホントちっちぇ〜男だなー」
「う、うるせー」
「アンタなんてヤリまくりのヤリチン野郎だろーが。で、どーだったよ、ゆーこは?」
あの夜の快楽が蘇り、急激に勃起したのを悟られまいと、
「ば、バカっ 何言ってんだっ」
それすらも見透かされたようで。そんな俺を鼻で笑いながら、
「アイツはもう二度とアンタとはしない。アタシにちゃんと渡してくれた」
額からの汗が止まらない。脇も汗でびしょ濡れだ…
「もう。誰にもアンタを、渡さない」
凄まじい目力。愛の告白と愛の脅迫、紙一重だ。
「俺も、お前を絶対離さない」
朝から激しくも蕩けるような口付けを交わしていると、車の外で薄緑の服を着た二人組の初老の男性達があっけにとられて俺たちを覗き込んでいる。