第1章 第1話
文字数 775文字
「お疲れ様でした… 金光専務。しかし… あんな事になるなんて…」
弱冠38歳の鳥羽社長が途切れ途切れに呟いた後、深く溜め息をつく。九年ほど前に趣味が高じて起業したこの旅行代理店『鳥の羽』は彼の名前からとった(らしい)。
創業以来の最大のイベントであった、日本を代表する俳人であり美人天然タレントでもある間宮由子の句会は先週大盛況のうちに成功したのだが、由子は翌朝静岡県警に盗難の疑いで連行されてしまう。
俺の大学時代の親友であった青木刑事の尽力でその疑いは晴れ、釈放となり昨日東京に戻ってきたのだが…
「今週の今日までの予約件数は先週比でマイナス20%です。やはり事件の影響ですかね…」
企画部の若手社員がボソッと呟くように報告する。
「仕方ない。間宮先生のせいではないのだから…」
「風評被害、としか言いようがありませんね…」
「ネットではお祭り騒ぎなんですけど… 『ゆうこたん、神CO!』って…」
俺は首を傾げ、
「何、COって?」
「カミングアウト、ですかね…」
間宮由子の窃盗容疑は晴れたのだが、マスコミの前で彼女は過去をカミングアウトした〜 それは、中学時代、地元で有名な不良であり多くの事件を起こしていた事、恋多きバツ4で前夫から超高級マンションを得ていた事、等々。
「もうネット上では女神扱いで、悪意のある報道をしたTV局に抗議メールが殺到しているとか…」
「ハハハ… ハアーー」
「今週の売り上げ、どうなるんでしょうね… それに、今後も…」
そんな空気の中。営業部長の三ツ矢は俺を見下すような視線で一言、
「ま、営業部がもう少し関わっていたら、こんなザマにはさせませんでしたけどね」
と言ってからクックックと笑う。企画部長の迫田が物凄い目で三ツ矢を睨む。今回の企画から敢えて営業部を遠ざけていた意趣返しというやつだ。俺は反撃する元気もなく、ただ下を向く。
弱冠38歳の鳥羽社長が途切れ途切れに呟いた後、深く溜め息をつく。九年ほど前に趣味が高じて起業したこの旅行代理店『鳥の羽』は彼の名前からとった(らしい)。
創業以来の最大のイベントであった、日本を代表する俳人であり美人天然タレントでもある間宮由子の句会は先週大盛況のうちに成功したのだが、由子は翌朝静岡県警に盗難の疑いで連行されてしまう。
俺の大学時代の親友であった青木刑事の尽力でその疑いは晴れ、釈放となり昨日東京に戻ってきたのだが…
「今週の今日までの予約件数は先週比でマイナス20%です。やはり事件の影響ですかね…」
企画部の若手社員がボソッと呟くように報告する。
「仕方ない。間宮先生のせいではないのだから…」
「風評被害、としか言いようがありませんね…」
「ネットではお祭り騒ぎなんですけど… 『ゆうこたん、神CO!』って…」
俺は首を傾げ、
「何、COって?」
「カミングアウト、ですかね…」
間宮由子の窃盗容疑は晴れたのだが、マスコミの前で彼女は過去をカミングアウトした〜 それは、中学時代、地元で有名な不良であり多くの事件を起こしていた事、恋多きバツ4で前夫から超高級マンションを得ていた事、等々。
「もうネット上では女神扱いで、悪意のある報道をしたTV局に抗議メールが殺到しているとか…」
「ハハハ… ハアーー」
「今週の売り上げ、どうなるんでしょうね… それに、今後も…」
そんな空気の中。営業部長の三ツ矢は俺を見下すような視線で一言、
「ま、営業部がもう少し関わっていたら、こんなザマにはさせませんでしたけどね」
と言ってからクックックと笑う。企画部長の迫田が物凄い目で三ツ矢を睨む。今回の企画から敢えて営業部を遠ざけていた意趣返しというやつだ。俺は反撃する元気もなく、ただ下を向く。