第4章 第1話

文字数 555文字

「今日は実に残念だった。あと一歩のところで暗くなってしまった…」

 山本くんが悔しそうに吐き捨てる。

「あと一歩? 全然じゃん。何しに来たんだか。ホント見つかるのかねえ?」

 営業部の大崎がしらけ切った目で山本くんを眺める。

「明日には必ず見つかる、いや見つけるっ あの人達なら…」
「ただ遊びに来ただけなんじゃね〜 さーて、飯前に風呂入って来るかな。おい、行くぞっ」

 営業部の村松が気怠そうに立ち上がると慌てて佐藤と大崎がそれに続く。

 どうやら今日の探索では何も収穫はなかったようだ。社長、迫田部長、上村課長、庄司の四人は宿に戻らず山中でテントを張って翌朝から再活動する手筈だ。

 この前線基地の城島司令曰く
「あかん、あの人達。あんだけ準備してったのに登り始めたら登山口からまず一気に頂上行ってもうて。それ探索ちゃうやろって言うても『本能が頂上を求めていたのだ』って。アホちゃいますかあの人達…」

 その後山腹に戻り例の土砂崩れの跡をドローンを飛ばしながら慎重に分け入ったのだが、
「先ず部長が『俺にもやらせろ』って。そんで課長も『僕の方がセンスがある』とか言うて。最後は社長が『ちょっと僕にも』言うてプロポ弄ってたら… 有り得ます? 肝心のドローンが行方不明って…」

 城島は深く項垂れながら、静かにノートパソコンを畳んだ。
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