第4章 最終話

文字数 738文字

 その夜。
 山本本館はお祭り騒ぎだ。栄光の帰還者達は真っ黒に日焼けし、全く疲れを見せずに元気だ。山本くんと庄司が抱き合って喜んでいる姿に皆から冷やかしのエールが掛かる。村松の発案で地元山梨のローカルTV局と新聞社に連絡をするとあっという間に彼らは駆けつけ、臨時の記者会見が開かれる。

 前線基地だった大広間を慌てて片付けし、五名ほど集まってくれた各マスコミに対し村松らが用意した本企画の資料、現場の写真、動画などを開示し会見は恙無く進行していく。

 俺と泉さんはそれを最後方から眺めながら感激に浸る。

「金光さん。いやーーー、何とお礼を言ったら良いか…」
「まさか、こんなに上手くいくとは。流石、超一流クライマー達です」
「社内でも色々あったとか。それでもこの結果。流石、金光さんです。改めて尊敬しますよ」
「ハハハ、そんな。そうだ、泉さんのもっと大きな夢、台湾の幻の湯。僕にも手伝わせてくださいね!」

 泉さんは俺の手を握り、そして僅かに瞳に涙を溜め、
「いやーー。いやーーー。何て心強い! 長生きはするものですな。貴方も健康には注意するんですよ、女王様と一緒に!」
「はい。そうします」

 光子が俺と泉さんに割って入ってくる。
「ああん? 女王様と何だって?」
「いやーー。貴女は幸運の女神だ、と話してたところです」

 満面の笑みで、
「んーーー、それ言うならよ、じーさんは私とコイツの幸運のジジイ、ってか!」
「これはこれは、幸運のジジイ、頂きました」

 光子が俺と泉さんに肩組みをする。おいジジイ、光子の胸元チラ見すんなって…
「これからもよ、もっともっと面白い事しよーぜ。みんなで、な!」

 如何にも一流クライマーらしい精悍な顔つきでインタビューに答える鳥羽社長を見ながら、俺は光子の問いに深く頷いた。
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