第2章 第7話
文字数 1,280文字
おい。
無理だろ。何言ってんだこいつ。こんな若い女子に冬山登山なんて。もしこの子が趣味で山登りが好きであっても、冬山登山なんかさせて遭難でもされたら来年俺の秘書が……
「勿論です。GPSその他、最新の装備はお任せください」
おい。
何言ってんだ庄司。最年少だし女子だぞ。いくら上司の命令だからってそんな危ない事をさせる訳にはゆかぬ。高尾山や秩父のハイキングじゃないのだぞ。お前では到底―
「金光専務。私去年、劔登りましたが何か?」
……
俺は余りのショックで呼吸を忘れてしまう。数秒後何とか思い出し、
「嘘… だろ… 俺だって知ってるぞ… 映画で観たぞ、明治時代まで人跡未踏だったんだぞ… あり得ない!」
「えーーーっと。ハイ、これ」
庄司が自分のスマホを俺に向ける。『劒岳 標高2999m』の看板を手に祠の前でメット姿でサムアップ姿がすごく似合っている庄司の写真だ…
この子までこんな… 全身に鳥肌が立つ感覚に襲われるー
「コイツは鳥羽っちの大学の後輩なんですよ。鳥羽っちが直々にリクルートしたんですよね?」
庄司は違う違うと手を振りながら、
「いえいえ、私から是非に、と。鳥羽せんぱ… 社長は我が登山部のレジェンドですから」
俺はカクカクと首を振りながら、
「そうか… そう… だった… のか、庄司。よろ、しく… 頼む…」
すっかりメンタルが崩壊した俺は庄司に頭を下げるのだった。
「りょ」
片目を瞑って返事をくれる。コレが新人の専務取締役に対する態度。今や悪くない。寧ろ嬉しく思い始めている。俺もようやく、このサークル…、いや、この会社の一員になれた… のだろうか。
「では。ハイテク担当から一つ提案があるのですが」
「庄司、言ってみろ」
「ハイ部長。登山道が無い想定でのこのミッションに、ドローンは必須かと思われます」
あちらこちらでドローン、ドローンと声が沸き起こる。泉さんを見るとポカンとしている。
「事前に一度、景徳山の中腹地点まで行き、そこからドローンで崩壊した登山道をなぞってみるのです。そうすれば必要な装備も確定できます。上手くいけば…」
「ゴクリ。何だ…」
「それで幻の湯の存在も秒で確定できるかと」
一同が騒然となる。それではロマンが無いと言うもの。機材に費用がかかるのではという声。誰が操縦できるのかとの心配。
「我々の部では既に新ルートの発見に活用していましたが何か? 部から機材は借りてこられますが、折角なので社で最新の機材を購入しては? 操縦は私ができますが何か?」
庄司。この会社には勿体なさ過ぎる。尊敬する先輩を追ってこの会社に入ったと言うが、もっと君の能力を発揮できる場所は多くあると思うぞ…
頭にハテナマークが揺れている泉さんに概要を説明すると深く感じ入っている。時代は驚く程進んでいる、ちょっとでも立ち止まってしまうと見る事の出来るものまで見られなくなってしまう。まあ、お互いそこそこに新しいものを受け入れていきましょう、と言うと、
「いやー。おっしゃる通りですな。やはり貴方、そして、この会社にお願いしてよかった」
と深くお辞儀をされてしまう。
無理だろ。何言ってんだこいつ。こんな若い女子に冬山登山なんて。もしこの子が趣味で山登りが好きであっても、冬山登山なんかさせて遭難でもされたら来年俺の秘書が……
「勿論です。GPSその他、最新の装備はお任せください」
おい。
何言ってんだ庄司。最年少だし女子だぞ。いくら上司の命令だからってそんな危ない事をさせる訳にはゆかぬ。高尾山や秩父のハイキングじゃないのだぞ。お前では到底―
「金光専務。私去年、劔登りましたが何か?」
……
俺は余りのショックで呼吸を忘れてしまう。数秒後何とか思い出し、
「嘘… だろ… 俺だって知ってるぞ… 映画で観たぞ、明治時代まで人跡未踏だったんだぞ… あり得ない!」
「えーーーっと。ハイ、これ」
庄司が自分のスマホを俺に向ける。『劒岳 標高2999m』の看板を手に祠の前でメット姿でサムアップ姿がすごく似合っている庄司の写真だ…
この子までこんな… 全身に鳥肌が立つ感覚に襲われるー
「コイツは鳥羽っちの大学の後輩なんですよ。鳥羽っちが直々にリクルートしたんですよね?」
庄司は違う違うと手を振りながら、
「いえいえ、私から是非に、と。鳥羽せんぱ… 社長は我が登山部のレジェンドですから」
俺はカクカクと首を振りながら、
「そうか… そう… だった… のか、庄司。よろ、しく… 頼む…」
すっかりメンタルが崩壊した俺は庄司に頭を下げるのだった。
「りょ」
片目を瞑って返事をくれる。コレが新人の専務取締役に対する態度。今や悪くない。寧ろ嬉しく思い始めている。俺もようやく、このサークル…、いや、この会社の一員になれた… のだろうか。
「では。ハイテク担当から一つ提案があるのですが」
「庄司、言ってみろ」
「ハイ部長。登山道が無い想定でのこのミッションに、ドローンは必須かと思われます」
あちらこちらでドローン、ドローンと声が沸き起こる。泉さんを見るとポカンとしている。
「事前に一度、景徳山の中腹地点まで行き、そこからドローンで崩壊した登山道をなぞってみるのです。そうすれば必要な装備も確定できます。上手くいけば…」
「ゴクリ。何だ…」
「それで幻の湯の存在も秒で確定できるかと」
一同が騒然となる。それではロマンが無いと言うもの。機材に費用がかかるのではという声。誰が操縦できるのかとの心配。
「我々の部では既に新ルートの発見に活用していましたが何か? 部から機材は借りてこられますが、折角なので社で最新の機材を購入しては? 操縦は私ができますが何か?」
庄司。この会社には勿体なさ過ぎる。尊敬する先輩を追ってこの会社に入ったと言うが、もっと君の能力を発揮できる場所は多くあると思うぞ…
頭にハテナマークが揺れている泉さんに概要を説明すると深く感じ入っている。時代は驚く程進んでいる、ちょっとでも立ち止まってしまうと見る事の出来るものまで見られなくなってしまう。まあ、お互いそこそこに新しいものを受け入れていきましょう、と言うと、
「いやー。おっしゃる通りですな。やはり貴方、そして、この会社にお願いしてよかった」
と深くお辞儀をされてしまう。