第2章 第6話

文字数 790文字

 大声を上げていた!

 いや、俺だって世界最高峰の登山がどれほど困難か大体理解出来る。日本人でエベレスト登山の成功者は必ずマスコミに出る事も… この社長、一体何者なのだ…

 慌ててスマホでググってみる。

『鳥羽伊知郎』

 ああああ…

『日本を代表するアルピニスト、世界七大陸の最高峰を全て踏破、エベレスト最年少登頂の日本人記録保持者、マッキンレー山最短登頂記録保持者、現在東京で旅行代理店を経営、著書多数…』

 おいーー 知らなさ過ぎにも程があるぞ、俺…

 山の世界的スペシャリストの下で仕事していたとは… それも冴えない中小企業の若社長、なんて侮っていて…

 土下座では足りない気がする。俺は今まで何と彼を軽く扱ってきて……
「信じらんない… 鳥羽っち知らないでこの会社居るなんて、流石キンちゃんウケる〜」
 俺は直立不動からの四十五度腰折りで頭を下げる。

「社長、大変失礼しました、私は今まで…」
「流石元支店長〜 腰が低い〜 ウケる〜」
「黙れ。って言うか、お前ら何で教えてくれなかったんだよー」

 鳥羽は何故かニコニコしながら、
「まあまあ、いいじゃないですか。ああ、それより、嬉しいな、山に戻れる。しかも仕事で。コレが僕の夢だったんですよっ 金光さんありがとうございます、本当に」
「うわ… 鳥羽っち腰低〜 ハア〜」
「よぉし。では『幻の湯』探索隊、隊長は鳥羽っち! パンパカパーン」

 田所がエア(たすき)を鳥羽社長にかけてやると、
「ハイっ 謹んでお受けいたします!」
 盛大な拍手。ここまでくると、会社というより大学のサークルだ。でも、以前ほど嫌悪感がない。寧ろ、良い。

「副隊長は俺、迫田が引き受ける」
 何故かブーイング。しかもかなり本気な… おい、お前ら部長だぞ、彼。
「あとは。上村、装備その他、準備頼むぞ!」
「了解です。ックー。萌える〜」

 何故…? 何に?

「あとは… おう、庄司。ハイテク担当で。頼むぞ」
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