第1章 第10話
文字数 1,421文字
頭にはてなマークが点滅してしまう。
あの泉さんがわざわざ組織の内規を破ってまでこの会社を訪れた理由はなんなのだろう。取り敢えず泉さんには社長室に入ってもらう。
俺は企画部へ行き、山本くんを手招きする。
「今、社長室に入っていった人、あれがー」
「ああ。泉さんって言ってましたっけ。専務を訪ねてきた人ですよー それが何か?」
ただの初老のおっさんとしか認識していない彼は、さっきまでの俺と同じ頭にはてなマークを浮かべて俺をポカンと眺めていやがる。
「あの人が、あのISSAの、泉シニアインスペクターだ」
人間が本当に驚くと声を出さずに顎がアホみたいに下がり、本物の間抜け面となる。
「あの、あの、あれ、あの人が、あの、泉の、Issaシニアインスペキュラー、なのですか?」
人間が本当に驚くと主語が倒置し語彙が大いに乱れることを知る。
「落ち着け山本。深呼吸だ、5回、さあ」
「スー ハー スー ハー スー ハー スー ハー それで、あの人が!」
俺は吹き出すのを堪えつつ、心を鬼にしながら、
「まだ4回だ! やり直し、さあ」
何とか正確に5回深呼吸を終えた山本くんが、
「ダメですよぉ、特定の会社に来てはダメなんですよぉ」
「お前はISSAの回し者か。多分、今回はISSA絡みの仕事ではないと思うぞ」
山本くんは何とか落ち着きを取り戻し。
「では一体?」
「まあ、個人的な何かなんだろうな、おっと社長が呼んでいる」
社長室から鳥羽がおいでおいでをしているので、顔を出すと、
「専務、これからちょっと会議をしたいのですが」
「はあ。分かりました。おい山本、会議室空いてたっけ?」
この会社のフロアに会議室は無い。従って重要な会議を開く際には8階にあるレンタル会議室を通常借りるのだ。
彼は即座にスマホで調べ、
「空いてます。すぐに抑えます、2時からで良いですね?」
「それでいい。後、庄司にお茶とお茶請けを用意させろ」
「分かりました、出席者は?」
「企画部全員だ」
「それは… 皆年末年始の企画で忙しいかと…」
俺は彼を手招きし。
「ISSAの泉さんが、わざわざ訪ねて来られたんだぞ。それ以上に重要な仕事ってあるや否や?」
山本くんはハッとし、
「否!」
「よし。ではすぐに手配を」
「承知しましたっ」
と言うと早速駆け出していく。
再び社長室に入ると、泉さんは鳥羽と談笑している。その姿はまるで父と息子の様であり、ちょっと吹いてしまう。
「いやー、僕がISSAに入ったきっかけはですねえ… ああ、金光さん、いらっしゃった」
「お待たせして申し訳ありません」
鳥羽が頭を掻きながら、
「何せ、こんな小さい会社でして… 大きな会議室一つありませんものですから…」
「いやー、普段使わない会議室なんかレンタルで十分。コスト管理の行き届いた良い会社じゃありませんか」
「まだまだです。金光専務のお力をお借りして、なんとか頑張っていきたいのですが…」
泉さんはニヤリと笑いながら、
「大きな会議室十時個より、金光さんお一人の方がどれほど価値があるか。はっはっは」
耳まで赤くなってしまう頃にようやく山本くんが、
「お、お、お待たしぇいたしました、会議室が整いましたので、どうぞこちらいへ」
とド緊張しながら入ってくる。
さーてさてさて。泉さんは一体全体、どんな爆弾… もとい、どんな儲け話を持ってきてくれたのだろうか。少しの不安と大いなる興味を胸に秘め、俺たちはエレベーターで8階に上がって行ったのだった。
あの泉さんがわざわざ組織の内規を破ってまでこの会社を訪れた理由はなんなのだろう。取り敢えず泉さんには社長室に入ってもらう。
俺は企画部へ行き、山本くんを手招きする。
「今、社長室に入っていった人、あれがー」
「ああ。泉さんって言ってましたっけ。専務を訪ねてきた人ですよー それが何か?」
ただの初老のおっさんとしか認識していない彼は、さっきまでの俺と同じ頭にはてなマークを浮かべて俺をポカンと眺めていやがる。
「あの人が、あのISSAの、泉シニアインスペクターだ」
人間が本当に驚くと声を出さずに顎がアホみたいに下がり、本物の間抜け面となる。
「あの、あの、あれ、あの人が、あの、泉の、Issaシニアインスペキュラー、なのですか?」
人間が本当に驚くと主語が倒置し語彙が大いに乱れることを知る。
「落ち着け山本。深呼吸だ、5回、さあ」
「スー ハー スー ハー スー ハー スー ハー それで、あの人が!」
俺は吹き出すのを堪えつつ、心を鬼にしながら、
「まだ4回だ! やり直し、さあ」
何とか正確に5回深呼吸を終えた山本くんが、
「ダメですよぉ、特定の会社に来てはダメなんですよぉ」
「お前はISSAの回し者か。多分、今回はISSA絡みの仕事ではないと思うぞ」
山本くんは何とか落ち着きを取り戻し。
「では一体?」
「まあ、個人的な何かなんだろうな、おっと社長が呼んでいる」
社長室から鳥羽がおいでおいでをしているので、顔を出すと、
「専務、これからちょっと会議をしたいのですが」
「はあ。分かりました。おい山本、会議室空いてたっけ?」
この会社のフロアに会議室は無い。従って重要な会議を開く際には8階にあるレンタル会議室を通常借りるのだ。
彼は即座にスマホで調べ、
「空いてます。すぐに抑えます、2時からで良いですね?」
「それでいい。後、庄司にお茶とお茶請けを用意させろ」
「分かりました、出席者は?」
「企画部全員だ」
「それは… 皆年末年始の企画で忙しいかと…」
俺は彼を手招きし。
「ISSAの泉さんが、わざわざ訪ねて来られたんだぞ。それ以上に重要な仕事ってあるや否や?」
山本くんはハッとし、
「否!」
「よし。ではすぐに手配を」
「承知しましたっ」
と言うと早速駆け出していく。
再び社長室に入ると、泉さんは鳥羽と談笑している。その姿はまるで父と息子の様であり、ちょっと吹いてしまう。
「いやー、僕がISSAに入ったきっかけはですねえ… ああ、金光さん、いらっしゃった」
「お待たせして申し訳ありません」
鳥羽が頭を掻きながら、
「何せ、こんな小さい会社でして… 大きな会議室一つありませんものですから…」
「いやー、普段使わない会議室なんかレンタルで十分。コスト管理の行き届いた良い会社じゃありませんか」
「まだまだです。金光専務のお力をお借りして、なんとか頑張っていきたいのですが…」
泉さんはニヤリと笑いながら、
「大きな会議室十時個より、金光さんお一人の方がどれほど価値があるか。はっはっは」
耳まで赤くなってしまう頃にようやく山本くんが、
「お、お、お待たしぇいたしました、会議室が整いましたので、どうぞこちらいへ」
とド緊張しながら入ってくる。
さーてさてさて。泉さんは一体全体、どんな爆弾… もとい、どんな儲け話を持ってきてくれたのだろうか。少しの不安と大いなる興味を胸に秘め、俺たちはエレベーターで8階に上がって行ったのだった。