11月27日 台湾統一地方選挙翌日レポート
文字数 2,729文字
いやあ、昨日の台湾統一地方選挙の結果は、かなりショックなものでした。
民進党支持派の友人たちも、「いったい何が起こってるの?」と茫然自失。
わたしも昨日は選挙特番などは見る気にならず、最近お気に入りのマンガ『雨と君と』を読んで、心を癒してもらっていました(笑)
で、今日はサッカーで、スカッとさせてもらえるかと思ったら……コスタリカー! がーっ‼
まあ、いいです。また『雨と君と』を読んで……と、いやいや! そうそうモフモフ頼りばかりもダメでしょう!
というわけで、今回の統一地方選挙の分析を少し読んでみました。
今回は台北市長を始め、市長選・知事選で民進党は惨敗と報道されています。
その責任を取る形で、蔡英文総統が、民進党の党主席を辞任しました。
今回の選挙の特色の一つとして先ず挙げられるのは、投票率の低さです。
中央選挙委員会の発表によると、「直轄市長選舉(市長選挙)」の投票率が59.86%、「縣(市)長選舉(知事選挙)」の投票率が64.20%で、台湾の選挙としては非常に低い投票率でした。
市長選挙の中で最も注目されたのが、台北市長選だったわけですが、民進党の敗北の理由として挙げられるのは、候補者の擁立が非常に遅かったという点です。
実は民進党の中で、早々に台北市長選に名乗りを上げていたのは、民進党の大物政治家の一人である林佳龍でした。
ただ、蔡英文総統は陳時中の知名度とコロナ対応の功績を買い、台北市長候補として擁立することを決め、林佳龍の方は、台北に隣接する新北市の市長候補としました。
林佳龍は最終的に党の決定に従うことになりましたが、この段階で民進党内部に少し不協和音が生じたことは否めません。
もう一つの問題は、陳時中が衛生福利部(日本の厚生労働省に当たる)の現職の部長(大臣)であったことです。
陳時中は「コロナ禍が落ち着くまでは、途中で衛生福利部の部長職を擲 つことはできない」と言って、なかなか市長選出馬を表明しませんでした。
ぶら下がり記者会見で、記者に「このままでは立候補期間に間に合いませんよ!」と言われるほど、陳時中は本当にぎりぎりで出馬を表明しました。
つまり、陳時中陣営は、選挙準備期間が明らかに不足していました。「仕事中毒」の代名詞にもなっている陳時中の仕事熱心ぶりは筋金入りで、たとえ蔡総統に推薦されても、簡単に衛生福利部の部長職を離れることはできなかったのです。
これはいかにも陳時中らしい態度で、わたしなどは陳時中のこういうところがすばらしいと思うのですが、選挙戦という角度から見た場合、陳時中の責任感の強さが、今回はややマイナスに働いてしまった感は否めない、という見方があります。
また、陳時中は基本的に「君子」タイプの人であり、対立候補の蔣萬安のなりふりかまわぬ誹謗中傷攻撃に対して、あまりに紳士的に対応しすぎたのではないか、という説もあります。
冷静に人格や功績で見れば、蔣萬安が陳時中に叶うはずのないのは明らかなので、蔣萬安は専ら人格攻撃、誹謗中傷、フェイクニュース垂れ流し戦術に出ました。
それらはいずれも底の浅く、エビデンスのないものばかりで、今は全て否定されているのですが、そういう刺激的な言説が、ネットニュースのタイトルしか見ない層に一定の影響を与えてしまったのは事実のようです。
ただ、それにしても、勝つには勝ちましたが、この蔣萬安、非常に問題がある人物だというのは、今度の選挙活動を通じて、すっかり明らかになってしまいました。
選挙期間中の蔣萬安の発言の中に「バスの席を予約制にする」というのがありました。
「朝のラッシュにバスの席に座れなくて困ることがありますよね? そこでバスの席を予約制にするのはどうでしょう? これで問題解決ですよね?」
というんです。
は?????
――電車のグリーン席じゃあるまいし、そんなことできるわけないだろ!
っていうか……
――お前、バス乗ったことないだろ‼
と非難と失笑の渦となり、慌てて引っ込めたのですが、性懲りもなく――
「台北市民の健康を促進するために、バス停でスクワットを二十回やったらバス代をただにします!」
――お前はお笑い芸人か!
――お前がひとりでスクワット二百回くらいやってろ!
と、これまた非難と失笑の嵐。
蔣萬安って、実は「草包 」じゃん!
というのが知れ渡ってしまいました。
「草包」というのは、「草が詰まった袋 = 無能の人」という意味で、かなりバカにした響きを持つ言葉です。
結局、蔣萬安の「価値」というのは、「蔣」という姓だけなんですね。
NHKでは、蔣萬安が「蔣介石のひ孫」(「蔣經國の孫」)だと既成事実のように報道していましたが、昨日わたしがご紹介した通り、台湾ではこの血統問題はグレーゾーン扱いされており、注意が必要だと思われます。
まあ、国民党が台北市長選を制したとは言っても、現市長の柯文哲がいろいろやらかしているので、その尻ぬぐいが楽でないことは誰の目にも明らかなのですが、そんな次期台北市長として、蔣萬安はあまりに役不足、能力不足なのではないか、と早くも囁かれているようです。
国民党も、あまり勝利の美酒に酔ってはいられないようですね……。
また、民進党惨敗と言われながらも、希望を感じるニュースもありました。
確かに市長選・知事選では、民進党は惨敗と言っていい結果になってしまったのですが、台北市議員をはじめ、地方議員選挙に関しては、実は民進党は議席数を伸ばしているんです。
また、民進党ではありませんが、わたしの推しの苗博雅さんが安定の得票率で、台北市議員の二期目の当選が決まりました。
最後にこの人の紹介をしたいと思います。
写真でわかる通り、まだ若い女性です。親しみを込めて「阿苗 」(苗ちゃん)と呼ばれています。
この苗博雅さんは、台湾大学の法学部を卒業したエリートで、とにかくめちゃくちゃ頭が切れます。その論理的で明快な弁舌には思わず聞き惚れてしまうほどです。
第一期目の新人議員でありながら、現台北市長柯文哲を舌鋒 鋭く追及し、一躍脚光を浴びました。
わたしは苗博雅さんのおかげで、柯文哲の問題点がよくわかりました。
市長が「草包」昼ドラ男に変わっても、こういう人が議会にいれば安心かな、と思います。
余談ですが、苗博雅さんは同性愛者であることを公表しています。
オードリー・タン氏といい、この苗博雅さんといい、LGBTQに対する取り組みが進んでいる台湾らしい政治家と言えるかもしれません。
あ、それと、冒頭で触れた『雨と君と』の書影も載せておきます。癒されたい気分の時、このマンガは効果抜群です!
民進党支持派の友人たちも、「いったい何が起こってるの?」と茫然自失。
わたしも昨日は選挙特番などは見る気にならず、最近お気に入りのマンガ『雨と君と』を読んで、心を癒してもらっていました(笑)
で、今日はサッカーで、スカッとさせてもらえるかと思ったら……コスタリカー! がーっ‼
まあ、いいです。また『雨と君と』を読んで……と、いやいや! そうそうモフモフ頼りばかりもダメでしょう!
というわけで、今回の統一地方選挙の分析を少し読んでみました。
今回は台北市長を始め、市長選・知事選で民進党は惨敗と報道されています。
その責任を取る形で、蔡英文総統が、民進党の党主席を辞任しました。
今回の選挙の特色の一つとして先ず挙げられるのは、投票率の低さです。
中央選挙委員会の発表によると、「直轄市長選舉(市長選挙)」の投票率が59.86%、「縣(市)長選舉(知事選挙)」の投票率が64.20%で、台湾の選挙としては非常に低い投票率でした。
市長選挙の中で最も注目されたのが、台北市長選だったわけですが、民進党の敗北の理由として挙げられるのは、候補者の擁立が非常に遅かったという点です。
実は民進党の中で、早々に台北市長選に名乗りを上げていたのは、民進党の大物政治家の一人である林佳龍でした。
ただ、蔡英文総統は陳時中の知名度とコロナ対応の功績を買い、台北市長候補として擁立することを決め、林佳龍の方は、台北に隣接する新北市の市長候補としました。
林佳龍は最終的に党の決定に従うことになりましたが、この段階で民進党内部に少し不協和音が生じたことは否めません。
もう一つの問題は、陳時中が衛生福利部(日本の厚生労働省に当たる)の現職の部長(大臣)であったことです。
陳時中は「コロナ禍が落ち着くまでは、途中で衛生福利部の部長職を
ぶら下がり記者会見で、記者に「このままでは立候補期間に間に合いませんよ!」と言われるほど、陳時中は本当にぎりぎりで出馬を表明しました。
つまり、陳時中陣営は、選挙準備期間が明らかに不足していました。「仕事中毒」の代名詞にもなっている陳時中の仕事熱心ぶりは筋金入りで、たとえ蔡総統に推薦されても、簡単に衛生福利部の部長職を離れることはできなかったのです。
これはいかにも陳時中らしい態度で、わたしなどは陳時中のこういうところがすばらしいと思うのですが、選挙戦という角度から見た場合、陳時中の責任感の強さが、今回はややマイナスに働いてしまった感は否めない、という見方があります。
また、陳時中は基本的に「君子」タイプの人であり、対立候補の蔣萬安のなりふりかまわぬ誹謗中傷攻撃に対して、あまりに紳士的に対応しすぎたのではないか、という説もあります。
冷静に人格や功績で見れば、蔣萬安が陳時中に叶うはずのないのは明らかなので、蔣萬安は専ら人格攻撃、誹謗中傷、フェイクニュース垂れ流し戦術に出ました。
それらはいずれも底の浅く、エビデンスのないものばかりで、今は全て否定されているのですが、そういう刺激的な言説が、ネットニュースのタイトルしか見ない層に一定の影響を与えてしまったのは事実のようです。
ただ、それにしても、勝つには勝ちましたが、この蔣萬安、非常に問題がある人物だというのは、今度の選挙活動を通じて、すっかり明らかになってしまいました。
選挙期間中の蔣萬安の発言の中に「バスの席を予約制にする」というのがありました。
「朝のラッシュにバスの席に座れなくて困ることがありますよね? そこでバスの席を予約制にするのはどうでしょう? これで問題解決ですよね?」
というんです。
は?????
――電車のグリーン席じゃあるまいし、そんなことできるわけないだろ!
っていうか……
――お前、バス乗ったことないだろ‼
と非難と失笑の渦となり、慌てて引っ込めたのですが、性懲りもなく――
「台北市民の健康を促進するために、バス停でスクワットを二十回やったらバス代をただにします!」
――お前はお笑い芸人か!
――お前がひとりでスクワット二百回くらいやってろ!
と、これまた非難と失笑の嵐。
蔣萬安って、実は「
というのが知れ渡ってしまいました。
「草包」というのは、「草が詰まった袋 = 無能の人」という意味で、かなりバカにした響きを持つ言葉です。
結局、蔣萬安の「価値」というのは、「蔣」という姓だけなんですね。
NHKでは、蔣萬安が「蔣介石のひ孫」(「蔣經國の孫」)だと既成事実のように報道していましたが、昨日わたしがご紹介した通り、台湾ではこの血統問題はグレーゾーン扱いされており、注意が必要だと思われます。
まあ、国民党が台北市長選を制したとは言っても、現市長の柯文哲がいろいろやらかしているので、その尻ぬぐいが楽でないことは誰の目にも明らかなのですが、そんな次期台北市長として、蔣萬安はあまりに役不足、能力不足なのではないか、と早くも囁かれているようです。
国民党も、あまり勝利の美酒に酔ってはいられないようですね……。
また、民進党惨敗と言われながらも、希望を感じるニュースもありました。
確かに市長選・知事選では、民進党は惨敗と言っていい結果になってしまったのですが、台北市議員をはじめ、地方議員選挙に関しては、実は民進党は議席数を伸ばしているんです。
また、民進党ではありませんが、わたしの推しの苗博雅さんが安定の得票率で、台北市議員の二期目の当選が決まりました。
最後にこの人の紹介をしたいと思います。
写真でわかる通り、まだ若い女性です。親しみを込めて「
この苗博雅さんは、台湾大学の法学部を卒業したエリートで、とにかくめちゃくちゃ頭が切れます。その論理的で明快な弁舌には思わず聞き惚れてしまうほどです。
第一期目の新人議員でありながら、現台北市長柯文哲を
わたしは苗博雅さんのおかげで、柯文哲の問題点がよくわかりました。
市長が「草包」昼ドラ男に変わっても、こういう人が議会にいれば安心かな、と思います。
余談ですが、苗博雅さんは同性愛者であることを公表しています。
オードリー・タン氏といい、この苗博雅さんといい、LGBTQに対する取り組みが進んでいる台湾らしい政治家と言えるかもしれません。
あ、それと、冒頭で触れた『雨と君と』の書影も載せておきます。癒されたい気分の時、このマンガは効果抜群です!