4月1日 蔡英文総統の訪米と中国の反発
文字数 2,452文字
台湾の蔡英文総統は今、外遊中です。
表向きはグアテマラ共和国など、台湾と正式な国交のある中央アメリカ諸国を歴訪することになっていますが、本当の目的はアメリカとの「非官方(非公式)外交」にあります。
今回の蔡英文総統の外遊は全行程10日に渡るのですが、その中でアメリカの二都市――ニューヨークとロサンゼルスに滞在します。
台湾の総統がこのような形でアメリカに滞在するのは初めてのことで、台米外交史上、画期的な外遊になると言われています。
台湾政府は今回の蔡総統の外遊を、「民主夥伴 共榮之旅(民主的仲間、共栄の旅)」と呼んでいますが、このネーミングからも、民主国家として中国との差別化をはかろうとする台湾政府のねらいが感じられます。
これに対し、当然ながら中国は大反発。
その反発の具体的な表れが、ニューヨークでの団体抗議活動と、台湾海峡における軍事的威嚇です。
中国の軍事的威嚇に関して、台湾の国防部(国務省)は本日(1日)、3月31日午前6時から4月1日午前6時までの24時間に、中国の戦闘機延べ18機と艦船延べ4隻が台湾海峡周辺で挑発的軍事行動をおこなった、と発表しました。
また、蔡総統が宿泊したニューヨークのホテルの前では、蔡総統を歓迎する在米台湾人と、抗議活動をする在米中国人が対峙する形となり、現場は一時、かなりの緊張状態に陥 ったようです。
その中で、蔡総統訪米に抗議する中国人が掲げた、あるプラカードが話題になりました。そのプラカードの写真が、これです。
(「Newtalk新聞」【3月30日付】より)
「支持中國統一,堅決反對台獨(中国統一支持、台湾独立絶対反対)」の右にある、「忘典數祖」という文字に注目して下さい。
実はこれ、本当は「數典忘祖」(「自らのルーツや本来の姿を忘れる」という意味)と書かなければいけないのです。
「數典忘祖」は子供でも知っているレベルの成語なので、大方 の失笑を買いました。
アメリカに長くいるうちに、こんな簡単な中国語の成語もわからなくなるなんて、「自らのルーツを忘れている」のはお前の方だろ!
というわけですね。
しかも、台湾国安局の蔡明彥局長が30日に発表した談話によれば、このニューヨークの抗議団体には、一人につき「一日200ドル」の報酬が中国当局より支払われていた、とのことでした。
更に蔡明彥局長によれば、なんと「200ドル」以外に、「宿泊費、交通費」が別途支給だったとか(調査細かい!)。※
なんだそりゃ!
と思わず叫びたくなってしまいますが、〝困ったちゃん〟はこうした人々ばかりではありません。むしろやっかいなのは、「台湾の中国人」と呼ばれる、
例えば、馬英九元台湾総統です。
こうした中国に媚びを売る人たちを揶揄 する言葉に、「舔共」(中国共産党におべっかを使う)というのがあるのですが、さしずめ馬英九はその筆頭であり、「台湾社会分断」の元凶の一人であるとも言えます。
馬英九は今回、わざと蔡英文総統訪米とタイミングを合わせて訪中しているのです。しかも、リップサービスのつもりか、中国のコロナ対策はすばらしかった(??)と誉め讃え、
ついには――
「中国のコロナ対策は全人類に多大なる貢献をした!」
とまで放言したのです。
これに対し、陳時中の後を継いだ、台湾「中央流行疫情指揮中心」の王必勝指揮官は、
「(馬英九が言った)『人類に対する貢献』という言葉が、いったい何に対する、どんな貢献なのか私は知らない。ただ、コロナ禍は中国の武漢から始まり、世界中に蔓延し、七億人近い人々が感染し、七百万人が死亡した。しかも三年半という長きに渡って継続し、全世界の健康、経済、文化に大きな衝撃を与えた。私にわかっているのは、これが『人類の大災難』だったということだ」
と述べました。
まさに正論! ですよね。
いくら中国に気に入られたいからって、馬英九のあまりに非常識且つ卑屈な、このトンデモ発言には、さすがの台湾国民党内部からも、「いくらなんでも、それは言いすぎ」と鼻白む声が上がっているとか……。
しかも、馬英九はスピーチの中で、自分が「中華民国(台湾の正式名称)総統を務めた」という意味のことを語る部分があったそうなのですが、中国人を前にして、「総統」の2文字を使う勇気がなく(中国は台湾を「国家」として認めていないため、「総統」は存在しないという理屈になる)、「這個(それ)」という言葉で代用しました。
このチキンぶりが多くの台湾人を怒らせる……というより呆れさせました。
馬英九の「這個」発言が報道されてから、台湾国内では「馬元総統」ではなく、「馬這個(馬それ)」というあだ名が付けられる始末(すごい皮肉!)。
一方の蔡総統はニューヨーク滞在中、アメリカシンクタンクの「ハドソン研究所(Hudson Institute)」で、「グローバルリーダーシップ賞(Global Leadership Award)」を受賞。更に記念講演を行うなど、非公式とは言え着実に、現台湾総統としての歴史的外交実績をあげています。
現在は中央アメリカの友好国を歴訪中の蔡総統ですが、4月5日に再びアメリカに入国し、ロサンゼルスに滞在する予定になっています。
実はロサンゼルスにおいて、蔡総統と現アメリカ政府の大物との会談が実現する可能性があるらしい、との報道があるのですが、詳細は今のところ不明です。
とにかく、今回の蔡総統の訪米が、今後の台米関係、米中関係に影響を与えるのは間違いないでしょう。
――となれば、日本とも無関係ではないですよね。
蔡総統の「民主夥伴 共榮之旅(民主的仲間、共栄の旅)」から、目が離せません。
※ 「蔡英文過境美國 蔡明彥曝中國動員走路工鬧場『一天200美金』」『三立新聞網』URL:https://www.setn.com/News.aspx?NewsID=1273477。
表向きはグアテマラ共和国など、台湾と正式な国交のある中央アメリカ諸国を歴訪することになっていますが、本当の目的はアメリカとの「非官方(非公式)外交」にあります。
今回の蔡英文総統の外遊は全行程10日に渡るのですが、その中でアメリカの二都市――ニューヨークとロサンゼルスに滞在します。
台湾の総統がこのような形でアメリカに滞在するのは初めてのことで、台米外交史上、画期的な外遊になると言われています。
台湾政府は今回の蔡総統の外遊を、「民主夥伴 共榮之旅(民主的仲間、共栄の旅)」と呼んでいますが、このネーミングからも、民主国家として中国との差別化をはかろうとする台湾政府のねらいが感じられます。
これに対し、当然ながら中国は大反発。
その反発の具体的な表れが、ニューヨークでの団体抗議活動と、台湾海峡における軍事的威嚇です。
中国の軍事的威嚇に関して、台湾の国防部(国務省)は本日(1日)、3月31日午前6時から4月1日午前6時までの24時間に、中国の戦闘機延べ18機と艦船延べ4隻が台湾海峡周辺で挑発的軍事行動をおこなった、と発表しました。
また、蔡総統が宿泊したニューヨークのホテルの前では、蔡総統を歓迎する在米台湾人と、抗議活動をする在米中国人が対峙する形となり、現場は一時、かなりの緊張状態に
その中で、蔡総統訪米に抗議する中国人が掲げた、あるプラカードが話題になりました。そのプラカードの写真が、これです。
(「Newtalk新聞」【3月30日付】より)
「支持中國統一,堅決反對台獨(中国統一支持、台湾独立絶対反対)」の右にある、「忘典數祖」という文字に注目して下さい。
実はこれ、本当は「數典忘祖」(「自らのルーツや本来の姿を忘れる」という意味)と書かなければいけないのです。
「數典忘祖」は子供でも知っているレベルの成語なので、
アメリカに長くいるうちに、こんな簡単な中国語の成語もわからなくなるなんて、「自らのルーツを忘れている」のはお前の方だろ!
というわけですね。
しかも、台湾国安局の蔡明彥局長が30日に発表した談話によれば、このニューヨークの抗議団体には、一人につき「一日200ドル」の報酬が中国当局より支払われていた、とのことでした。
更に蔡明彥局長によれば、なんと「200ドル」以外に、「宿泊費、交通費」が別途支給だったとか(調査細かい!)。※
なんだそりゃ!
と思わず叫びたくなってしまいますが、〝困ったちゃん〟はこうした人々ばかりではありません。むしろやっかいなのは、「台湾の中国人」と呼ばれる、
台湾人でありながら、中国との統一を願っている
一群の人たちです。例えば、馬英九元台湾総統です。
こうした中国に媚びを売る人たちを
馬英九は今回、わざと蔡英文総統訪米とタイミングを合わせて訪中しているのです。しかも、リップサービスのつもりか、中国のコロナ対策はすばらしかった(??)と誉め讃え、
ついには――
「中国のコロナ対策は全人類に多大なる貢献をした!」
とまで放言したのです。
これに対し、陳時中の後を継いだ、台湾「中央流行疫情指揮中心」の王必勝指揮官は、
「(馬英九が言った)『人類に対する貢献』という言葉が、いったい何に対する、どんな貢献なのか私は知らない。ただ、コロナ禍は中国の武漢から始まり、世界中に蔓延し、七億人近い人々が感染し、七百万人が死亡した。しかも三年半という長きに渡って継続し、全世界の健康、経済、文化に大きな衝撃を与えた。私にわかっているのは、これが『人類の大災難』だったということだ」
と述べました。
まさに正論! ですよね。
いくら中国に気に入られたいからって、馬英九のあまりに非常識且つ卑屈な、このトンデモ発言には、さすがの台湾国民党内部からも、「いくらなんでも、それは言いすぎ」と鼻白む声が上がっているとか……。
しかも、馬英九はスピーチの中で、自分が「中華民国(台湾の正式名称)総統を務めた」という意味のことを語る部分があったそうなのですが、中国人を前にして、「総統」の2文字を使う勇気がなく(中国は台湾を「国家」として認めていないため、「総統」は存在しないという理屈になる)、「這個(それ)」という言葉で代用しました。
このチキンぶりが多くの台湾人を怒らせる……というより呆れさせました。
馬英九の「這個」発言が報道されてから、台湾国内では「馬元総統」ではなく、「馬這個(馬それ)」というあだ名が付けられる始末(すごい皮肉!)。
一方の蔡総統はニューヨーク滞在中、アメリカシンクタンクの「ハドソン研究所(Hudson Institute)」で、「グローバルリーダーシップ賞(Global Leadership Award)」を受賞。更に記念講演を行うなど、非公式とは言え着実に、現台湾総統としての歴史的外交実績をあげています。
現在は中央アメリカの友好国を歴訪中の蔡総統ですが、4月5日に再びアメリカに入国し、ロサンゼルスに滞在する予定になっています。
実はロサンゼルスにおいて、蔡総統と現アメリカ政府の大物との会談が実現する可能性があるらしい、との報道があるのですが、詳細は今のところ不明です。
とにかく、今回の蔡総統の訪米が、今後の台米関係、米中関係に影響を与えるのは間違いないでしょう。
――となれば、日本とも無関係ではないですよね。
蔡総統の「民主夥伴 共榮之旅(民主的仲間、共栄の旅)」から、目が離せません。
※ 「蔡英文過境美國 蔡明彥曝中國動員走路工鬧場『一天200美金』」『三立新聞網』URL:https://www.setn.com/News.aspx?NewsID=1273477。