1月13日 台湾マンガと台湾史
文字数 2,048文字
今回は、台湾のマンガについて少し紹介してみたいと思います。
先ず一作目は、わたしが台湾マンガの面白さに目覚めるきっかけになったAKRUさんの『北城百畫帖』全二巻です。
時と舞台は日本植民地時代――1935年(日本の年号で言えば昭和十年)、台北城(現在の「台北市」の旧称)にある「百畫堂」という咖啡館(カフェー)。
このお店、一階と二階は文士や画家などが集まる雰囲気のいい咖啡館なのですが、三階には、一般のお客さんは足を踏み入れることのできない店主の書斎があります。その店主の秘密とは……。
美形で神秘的な店主(表紙参照)、カフェーの女給 である明湖 、店主が飼っている烏の伊安 ――など、魅力的な登場人物(&動物)と、日本植民地時代の台湾の風俗(特に和服にエプロンという明湖ちゃんの女給姿がたまらなくキュート!)、更にあやかしや霊といったファンタジー要素も加わり、この時代の台湾ならではの事件とその解決が短篇連作の形で描かれていきます。あやかしや霊と言ってもホラー色はほとんどなく、ジェントル・ゴースト・ストーリー的な味わいです。第1話から第4話まではwebでも公開されています。※1
二作目は、張季雅さんの『異人茶跡』。
時は十九世紀半ば。清国の大きな港には多くの英国の帆船が停泊していました。そこで荷積みされる主要な輸出品は、「お茶」でした。
ただ、こうした船が台湾に寄港することはありませんでした。今でこそ台湾の烏龍茶 は世界的に有名ですが、当時の台湾ではお茶の栽培など無理だとみなされており、国際茶葉市場からは完全に無視された存在だったのです。
そんな台湾にふらりとやってきた蘇格蘭 人・陶德(Johon Dodd)。後に「台湾茶の父」と呼ばれることになるこの男が、台湾の地に烏龍茶の大きな可能性を見出します。
彼とタッグを組むのが、廈門 から新しいビジネスチャンスを求めて台湾へやってきた買辦 ※2李春生 。冷静沈着な李春生と、一見無軌道だが、旺盛な冒険心と好奇心、独特な発想と実行力を兼ね備えた陶德。
「台湾の烏龍茶だって?」と鼻で笑う洋行 ※3、福州など中国の主要な茶の産地の手ごわいライバルたち。銃弾こそ飛ばないものの、それは紛れもなく「茶の戦 」。壮大なスケールで描かれる大作です! 紙の本は現在第4巻まで出ているのですが、最新第5部のweb連載が、去年の12月からフェイスブックにてスタートしました。
なぜフェイスブックなのかというのは、この後ご説明します。
ちなみに『異人茶跡』は、第15回日本国際漫画賞で、見事入賞を果たしています。
AKRUさんも、張季雅さんも台湾を代表する女性マンガ家です。
また上記二作は台湾の歴史・文化をテーマにしていますが、それは元々この作品が『Creative Comic Collection(略称CCC)創作集』という雑誌に掲載された作品であることと関係があります。
CCCというのは、「行政院國家科學委員會數位典藏」という台湾政府機関のデジタル資料を基にした、「數位學習國家型科技計畫」という厳めしい名称の国家プロジェクトの一環として設立されました。ざっくり言うと、デジタル化された台湾の歴史資料を題材にして、マンガ作品を創作しようというプロジェクトだったのです。
ただ、残念ながら紙媒体としてのCCC創作集は、2020年の6月で廃刊になってしまいました。現在は公式フェイスブックがあります。※4
しかも、元々政府機関が出資していたからなのか、例えば『異人茶跡』は、なんと公式フェイスブックで全話無料公開されています!※5
紙の雑誌としての「CCC創作集」はなくなってしまったのですが、CCC創作集編集部が企画・編集をした漫画単行本が去年2月に出版されています。
それが今回皆さんにご紹介する三作目、台湾の推理作家薛西斯原作、鸚鵡州作画の『不可知論偵探』です。
帯の惹句 で、およその作品内容は見当がつくのではないでしょうか。
台湾マンガ初の道士探偵!
推理サスペンス × 除魔霊異 × 民俗文化
「プロの道士でありながら呪符が書けず、死後の世界は見えるが神を信じない」、「ふだんはスマホゲームに熱中し、電子ペットを愛でる男」海鱗子 が、道教的知識と能力を駆使して難事件を解決するというストーリーで、面白かったです!
マンガ作品を通して台湾の歴史や文化、宗教などが理解できるこれらの作品、日本語版が出たらいいな、と思います。
※1 「北城百畫帖」URL:https://www.creative-comic.tw/book/165/content
※2 外国との交易の際の仲介人。
※3 貿易会社、あるいは商社。
※4 CCC公式フェイスブック URL:https://www.facebook.com/CreativeComicCollection
※5 「異人茶跡」URL:https://www.creative-comic.tw/book/161/content
先ず一作目は、わたしが台湾マンガの面白さに目覚めるきっかけになったAKRUさんの『北城百畫帖』全二巻です。
時と舞台は日本植民地時代――1935年(日本の年号で言えば昭和十年)、台北城(現在の「台北市」の旧称)にある「百畫堂」という咖啡館(カフェー)。
このお店、一階と二階は文士や画家などが集まる雰囲気のいい咖啡館なのですが、三階には、一般のお客さんは足を踏み入れることのできない店主の書斎があります。その店主の秘密とは……。
美形で神秘的な店主(表紙参照)、カフェーの
二作目は、張季雅さんの『異人茶跡』。
時は十九世紀半ば。清国の大きな港には多くの英国の帆船が停泊していました。そこで荷積みされる主要な輸出品は、「お茶」でした。
ただ、こうした船が台湾に寄港することはありませんでした。今でこそ台湾の
そんな台湾にふらりとやってきた
彼とタッグを組むのが、
「台湾の烏龍茶だって?」と鼻で笑う
なぜフェイスブックなのかというのは、この後ご説明します。
ちなみに『異人茶跡』は、第15回日本国際漫画賞で、見事入賞を果たしています。
AKRUさんも、張季雅さんも台湾を代表する女性マンガ家です。
また上記二作は台湾の歴史・文化をテーマにしていますが、それは元々この作品が『Creative Comic Collection(略称CCC)創作集』という雑誌に掲載された作品であることと関係があります。
CCCというのは、「行政院國家科學委員會數位典藏」という台湾政府機関のデジタル資料を基にした、「數位學習國家型科技計畫」という厳めしい名称の国家プロジェクトの一環として設立されました。ざっくり言うと、デジタル化された台湾の歴史資料を題材にして、マンガ作品を創作しようというプロジェクトだったのです。
ただ、残念ながら紙媒体としてのCCC創作集は、2020年の6月で廃刊になってしまいました。現在は公式フェイスブックがあります。※4
しかも、元々政府機関が出資していたからなのか、例えば『異人茶跡』は、なんと公式フェイスブックで全話無料公開されています!※5
紙の雑誌としての「CCC創作集」はなくなってしまったのですが、CCC創作集編集部が企画・編集をした漫画単行本が去年2月に出版されています。
それが今回皆さんにご紹介する三作目、台湾の推理作家薛西斯原作、鸚鵡州作画の『不可知論偵探』です。
帯の
台湾マンガ初の道士探偵!
推理サスペンス × 除魔霊異 × 民俗文化
「プロの道士でありながら呪符が書けず、死後の世界は見えるが神を信じない」、「ふだんはスマホゲームに熱中し、電子ペットを愛でる男」
マンガ作品を通して台湾の歴史や文化、宗教などが理解できるこれらの作品、日本語版が出たらいいな、と思います。
※1 「北城百畫帖」URL:https://www.creative-comic.tw/book/165/content
※2 外国との交易の際の仲介人。
※3 貿易会社、あるいは商社。
※4 CCC公式フェイスブック URL:https://www.facebook.com/CreativeComicCollection
※5 「異人茶跡」URL:https://www.creative-comic.tw/book/161/content