4月5日 痛ましい太魯閣號脱線事故と商人の思う壺のわたし

文字数 1,214文字

 晴れ。
 ニュースを見たくない。
太魯閣(タロコ)號」の脱線事故が痛ましすぎて、ニュースを見るだけでも辛いからだ。

 日本でも報道されたようだが、4月2日金曜日、台鐵(台灣鐵路)の「太魯閣號」列車が花蓮縣の清水隧道(トンネル)の手前で脱線事故を起こした。崖の上に止めてあった工事用車が坂道を滑り落ちて線路の上に落下、そこに太魯閣號が突っ込む形になったのだと言う。

 亡くなった方が50人、重軽傷者が200人以上という台鐵70年の歴史の中で最大の惨事となってしまった。
 実は台湾は、先週の金曜日から今日まで「清明節(チン・ミン・チエ)」の連休だったのだ。ちなみに今年は4月4日が清明節で、「兒童節(アル・トン・チエ)」(子供の日)と重なっている。

 清明節とは先祖を祭る日で、多くの人が故郷に帰って墓参りをする。そういう方が太魯閣號にも多く乗っていたらしい。孝心のある人が先祖や両親の墓参りのためにわざわざ出かけていって事故に巻き込まれるなんて、まったくやり切れない。この世は不条理なことに()()ちていると思う。

 連休最後の一日である今日は、好天気に恵まれた。
 いくらわたしが部屋に籠もっているのが好きでも、この天気はさすがにもったいない気がして、例によってちょっと長い散歩に出る。皆同じことを考えているらしく、街路をそぞろ歩いている人が多かった。

 つい手搖飲料(ショウ・ヤオ・イン・リィアオ)(飲む前に振るので、この言い方がある。詳しくは『台灣懶惰日記~旧正月前後篇~』を参照)を買ってしまう。今日はMRTの駅の壁に大きな広告が出ていた「康清龍(カン・チン・ロン)」という店の、「烟粉紅心芭樂梅(イェン・フェン・ホン・シン・バー・ラー・メイ)」を飲んでみた。舌を噛みそうなネーミングである。

 わたしという人間は、こういう新商品とか当店のお薦めとか、季節限定みたいな惹句(じゃっく)に弱いのだ。商人(シャン・レン)の思う壺である。
 でも、「紅心芭樂」(身の赤いグアバ)と、日本の梅酒の中の梅そっくりな味の梅(但しアルコールは入っていない)と茶凍(チャア・トン)(お茶のゼリー)の組み合わせが、さっぱりした甘みでおいしかった。だから、まあ別に商人の思う壺でもいいじゃないと思う。
 ただ、わたしがせっかくの散歩で費やしたカロリーは、この一杯で帳消しどころか、優に超過してしまっている。よって、散歩によるダイエット効果はゼロどころかマイナス!

 わざわざお墓参りのために故郷へ帰ろうとして命を落とす人もあれば、わたしみたいにだらだらと生き永らえている者もいる。両者の違いは、ただほんの少しの偶然にしかすぎないのだ。きっと。

 この列車事故の後、台湾でこんな言葉が流行っている。

「意外」跟「明天」,不知道誰先到來。

 日本語訳は、こんな感じ。

 思いがけない出来事と明日は、どっちが先にやってくるかわからない。

 わたしたちは、正にそんな日々を生きている。

 今日のBGMは、五月天の「我不願讓妳一個人」(君を一人にさせたくない)です。URL:https://youtu.be/38lcQsEMGrk

 なんとなく今日の気分に合っている曲のような気がしました。

 

 

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