4月29日 茄子と西瓜甘いか?

文字数 1,344文字

 雨、のち曇り。

「はい、バター!」
 言わずと知れた故渥美清演じる車寅次郎の名台詞。
 写真を撮る時、「はい、チーズ」の代わりに寅さんが「バター!」と言ってマドンナ役の女性を笑わせる。『男はつらいよ』お馴染みのシーンのひとつでした。

 この「はい、チーズ」にあたる中国語は何だろうというのが、今回のテーマです。
 私が以前大学で中国語を学んでいた時、教科書に「茄子(チィエ・ズ)」と言う単語が出てきました。そう、ナスです。「チーズ」が「バター」になる寅さんが中国語を話したとしたら、「茄子」の代わりに「小黃瓜(シィアオ・ホゥアン・グゥア)」(キュウリ)とか言いそう……。

 ただ、わたしが大学時代に教わっていたのは、台湾人ではなく中国人の先生で、教科書も中国のものでした。だから、台湾に来た時、台湾でも写真を撮る前に同じく「茄子」と言うのかどうか興味があったんです。

 結論を言うと、台湾でも「茄子」は使われています。でも、「茄子」より頻繁に聞く、もうひとつ別の言い方があるのです。それは――

西瓜甜不甜(シィー・グウア・ティエン・プ・ティエン)?」

 つまり、「西瓜、甘いか?」
 中国語の「(ティエン)」(甘い)は――これは「茄子」も同じなのですが、発音する時に口を横に開き、口角を上げます。だから、自然に笑顔になるのですが、更に言えば、「甜」も「茄」も「二聲」に分類されるイントネーションの語で、尻上がりに発音します。

「はい、チーズ」
 この台詞は写真の撮影者が言うわけで、「西瓜、甘いか?」についても同じことが言えます。そして、言われた方(つまり撮影される方)はふつう、「(ティエン)」(甘い)と答えるのですが、ふざけて「不甜(プ・ティエン)」(甘くない)と答えることもあります。
 中国語は日本語と異なり、否定語が動詞や形容詞の前にきます。だから「甘い」でも「甘くない」でも語尾の部分は同じ、要はどちらで答えても同じ表情になっているから問題ないのです。

 台湾の観光地などで子供たちが、引率の先生に「西瓜、甘いか?」と訊かれ、「甘いー!」とか「甘くなーい!」とか、尻上がりのイントネーションで叫んで記念撮影をしている様子はなんとも可愛いらしいです。

 ……と、なんでこの話をしたかと言うと、実は今日、初物の西瓜を食べたんです。最近の台湾は記録的な降雨量の少なさで、台北はまだしも、中部・南部は深刻な水不足で困っているのですが、雨が少ない年は西瓜が甘くなるのだそうで、今日食べた西瓜も確かに甘くておいしかったです。

 西瓜甘いか?
 甘かったー!

 というわけで、そろそろ今日のBGMの時間です。本日ご紹介するのは胡夏の「那些年」(あの頃)。URL:https://youtu.be/KqjgLbKZ1h0
 この曲は、1990年代の台湾の高校生を描いたノスタルジックな青春映画「那些年,我們一起追的女孩」の主題歌です。

 台湾の人気作家九把刀(チィウ・バァ・タオ)が原作・監督・脚本を担当したこの映画は、2011年に上映されるや記録的大ヒットとなり、日本でも「あの頃、君を追いかけた」の邦題で上映されただけでなく、2018年には山田裕貴主演でリメイク版まで作られましたよね。
 オリジナル版で主役を演じた柯震東と陳妍希の二人はこの映画によって一気にスターダムを駆け上りました。この映画は紛れもなく台湾映画なのですが、主題歌を歌った胡夏だけは中国の歌手です。
 



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