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文字数 943文字

 リレイドからの連絡は、わたしの気持ちが揺らいでいる時に多かった。驚きと疑問を齎すことも若い頃と変わらなかった。

 昼をどうしようかと考えあぐねていたわたしにリレイドは、優しかった。先日の旅の礼から始まって、嵐の遭遇を我が身のように同情した。
 「ガインが迎えに行ったらしいね。彼奴は、昔から君のナイトだった。」
 「羨ましいの。」
 わたしは、少し揺さぶってみた。リレイドが、自嘲して見せた。
 「彼奴ほども正直に生きてこなかったからな。」
 「そうだったの。」
 わたしは、逡巡する男の嫉妬が疎ましかったが、気持ちが少しばかり楽になれた。
 「それで、レリアちゃんの誘いに乗っかったの。」
 「だから、揶揄うなよ‥‥。」
 リレイドは、顔を曇らせて否定した。わたしは、分かっていた。リレイドの愚直さと遥か昔の一途な恋の顛末も。辛い思い出を引き摺る男は、目の前に擦れ違う幸せを見ようとしないのだ。
 「それより、彼女のことだけど。未だここに滞在しているらしい。」
 レリアの素性を伝えた女に、わたしは唇を引き締めて警戒した。聞きたくない女の話だった。
 より話は、混迷を深めていた。冷静を装ったつもりだったが、返事の間合いがリレイドを困らせていた。わたしは、予想しながら尋ねた。
 「‥‥彼女の滞在先、知っているの。」
 「俺は、伝え聞いただけだから。ハルトなら知っていると思う。」
 昔からリレイドは、隠し事をしない男だった。
 『‥‥また、ハルトだ。』
 わたしは、叫びたい思いを堪えて確かめた。
 「貴男に伝えたその人は、ハルトから直に聞いたってことなのね。それって、誰なの。」
 わたしは、話の出どころに溜息をついた。
 「もぅ‥‥、堂々巡りじゃない。」
 わたしは、あの女を目の前に引き摺り出して罵倒してやりたい心境だった。
 「あの女。魔女か天使か、どっちだと思う。」
 「どっちでもないさ。どっちでもあるけど。」
 リレイドは、どこまでも冷静だった。今も昔も、わたしの感情を宥め諭してくれた。気持ちを落ち着かせて尋ねた。無理なのをしっていたが。
 「ハルトに連絡が取れるの。」
 「当たってみるよ。」
 リレイドの気持ちが嬉しかった。

 昼を充分に食べたい心境だった。
 「ご馳走してよ。素敵なランチの店を知っているでしょう。」
 
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